くも膜下出血とは、脳の血管にできた瘤が破裂して起こる病気です。くも膜下出血を発症すると、そのうち3分の1が命にかかわるといわれています。しかし、治療によってその転帰は大きく変わる可能性があります。本記事では、くも膜下出血の原因について解説します。
くも膜下出血とは、脳表面の動脈から出血し、くも膜下腔に血液が流れ込むことで起こる病気で、脳卒中のひとつです。脳は外側から、硬膜、くも膜、軟膜という何層かの膜で覆われており、くも膜と軟膜の間は「くも膜下腔」と呼ばれます。くも膜下出血は、脳表面の動脈から出血し、くも膜下腔に血液が流れ込んだ状態を指します。
くも膜下出血の多くは、脳動脈瘤(脳の血管にできたこぶ)が破裂することで発症します。(原因については後述します。)
くも膜下出血は突然に起こります。くも膜下出血の患者さんのうち、3分の1の症例が命にかかわり、3分の1に後遺症が残り、残りの3分の1が社会復帰できるといわれています。
くも膜下出血では、脳の表面に急激に血液が流れ込みます。このとき、出血が脳の内部に浸透するほど危険な状態に陥りやすいことが分かっています。このように、くも膜下出血は急激に発症するため治療が難しい病気とされていますが、治療によってその転帰(病気が経過してほかの状態になる)が大きく変わる可能性があります。
くも膜下出血を早期に発見し治療を行うためには、くも膜下出血についての正しい知識を持つことが重要です。
一般的に、日本におけるくも膜下出血の患者さんは男性:女性=1:2で、女性に多くみられることが分かっています。男性では50代がピークで、女性の場合は50〜70代に多く70代後半がピークです。治療法や薬、啓蒙活動の進歩によって、2000年以降のくも膜下出血の患者数は減少の傾向がみられます。
基本的に、若年性(50歳くらいまで)のくも膜下出血は少ないとされています。脳卒中全体でみると、50歳以下における発症は1割未満です。
くも膜下出血の多くは、脳動脈瘤の破裂を原因として起こります。
そのほかに脳動静脈奇形、脳動脈解離なども原因になります。また、まれではありますが脳腫瘍や血管の病気、外傷などを原因とするくも膜下出血もあります。
【くも膜下出血の原因】
脳動脈の一部が膨らんでできた瘤を「脳動脈瘤」と呼びます。お餅や風船が膨らむようなイメージで、脳動脈も膨らむと徐々に壁が薄くなっていきます。そして、何らかのきっかけで血圧が上昇したときに脳動脈の内圧が上がって壁が破れ、くも膜下出血を引き起こします。
脳動脈瘤は、動脈硬化や血管の先天性疾患(生まれつきの病気)などを原因として発生します。
脳動静脈奇形とは、脳の血管に生じる先天的な病気です。脳動静脈奇形では、毛細血管が適切につくられず、動脈と静脈が直接つながって異常な血管の塊(ナイダスといいます)を形成することがあります。
脳動脈解離とは、脳動脈の内弾性板、中膜、外膜という3つの層のうち、内弾性板が大きく断裂し、中膜に血液が侵入した状態を指します。脳動脈解離には瘤化するものがあり(解離性脳動脈瘤といいます)、この瘤が破裂すると、くも膜下出血を引き起こします。
転倒や殴打などの外傷によって脳の表面から出血し、くも膜下出血をきたすことがあり、これを「外傷性くも膜下出血」と呼びます。単純に外傷だけを原因とするくも膜下出血は、脳動脈瘤が破れやすい原因を有さないため、ほかと区別されます。
しかし、くも膜下出血の症状には意識障害があるため(詳しくは記事2『くも膜下出血の症状』をご覧ください)転倒などを引き起こすことがあり、くも膜下出血の原因は判別が難しいケースもあります。よって、詳しく検査を行うことが重要です。
先述の通り、くも膜下出血の多くは脳動脈瘤の破裂を原因として起こります。
脳動脈瘤の破裂を誘引するリスクファクターとして、以下が挙げられます。
これらリスクファクターのうち、高血圧と喫煙がもっとも大きく影響するといわれます。
現在、くも膜下出血の原因となる明確な責任遺伝子(ある病気の発症原因となる特定の変異遺伝子)は発見されていません(2024年5月現在)。
脳動脈瘤を合併しやすい遺伝性の病気は存在します。たとえば多発性嚢胞腎*のうち15%ほどは、くも膜下出血を合併するといわれています。
*多発性嚢胞腎:両側の腎臓に嚢胞(なかに液体を貯留した球状の袋)が無数に発生する、遺伝性の病気です。
健康診断などで多発性嚢胞腎が発見された場合には、脳動脈瘤の検査を行うことがあります。このように、脳動脈瘤を合併しやすい遺伝性の病気がみつかった場合、未然に脳動脈瘤を発見し治療するためにも、脳ドックなど頭部の検査を行うことを推奨します。
くも膜下出血を発症した患者さんのご家族は、通常に比べて数倍の頻度で未破裂脳動脈瘤を有することが知られています。そのため、くも膜下出血を発症した家族がいる場合には、MRIなどで精査することを推奨します。
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