みはれつのうどうみゃくりゅう

未破裂脳動脈瘤

最終更新日:
2024年08月09日
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2024/08/09
更新しました
2018/08/08
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概要

未破裂脳動脈瘤とは、脳の血管の一部が瘤状に膨らんだ状態で、破裂すなわち出血をきたしていないものを指します。無症状で経過し、脳ドックで指摘されることも多い病気です。未破裂脳動脈瘤は日本人の1~5%程度の方に見つかるもので、破裂せずにそのまま経過することもあります。一方で、未破裂脳動脈瘤が破裂すると“くも膜下出血”を引き起こします。くも膜下出血を発症すると命に関わることがあり、救命できたとしても麻痺や言語障害などの重篤な後遺症を残すことが多く、社会復帰に影響が出る可能性もあります。

そのため、破裂する可能性が高いか慎重な評価を行ったうえで、開頭手術や血管内治療によって脳動脈瘤の破裂を予防する治療を行うのか、治療をせずに経過観察を行っていくのか決定されます。

原因

脳動脈瘤ができる明確な発症メカニズムは解明されていない部分も多いのですが、高血圧症などの既往歴、喫煙や過度な飲酒などの生活習慣、遺伝的な要因が発症に関与していると考えられています。特に、脳動脈瘤は血管が分岐するところなど血管の壁が弱くなりやすい部分にできやすいとされています。また、未破裂脳動脈瘤は、日本人の1~5%程度にあるとされ、女性に多いことも特徴です。

症状

未破裂脳動脈瘤は多くの場合、無症状です。脳ドックなどで実施されたMRI検査で偶然に発見されることがほとんどです。一方で、脳動脈瘤の大きさや位置によっては神経を圧迫して、物が二重に見える、瞼が下がるといった神経症状を引き起こすことがあります。

また、未破裂脳動脈瘤は基本的には無症状ですが、破裂した場合はくも膜下出血という病気を引き起こします。くも膜下出血は、これまで経験したことがないような非常に強い頭痛、嘔吐などの症状が突然現れ、すぐさま意識障害をきたしてしまうこともあります。発症すると命に関わることがあり、救命できた場合でも重篤な後遺症を残すケースもあります。

なお、未破裂脳動脈瘤が破裂する割合は平均すると年間で約0.95%とされていますが、実際には動脈瘤の大きさや形によって発症するリスクが大きく異なります。

検査・診断

未破裂脳動脈瘤は、脳ドックやほかの目的での脳外科受診で行われたMRA検査で偶然発見されるケースが多くあります。状態に応じてさまざまな検査が行われますが主な検査は次のとおりです。

MRA検査

MR装置を用いて脳の断層写真を見るのがMRIですが、同じ装置で脳の血管のみを映し出す手法がMRAです。近年、磁場強度の強い装置の導入により、より高精度の画像が得られるようになりました。ただし、MRAは血液の流速から得られる信号で画像を作成するため、実際の形状とは異なる場合もあります。そのため、具体的な治療を検討する場合には造影剤を用いたより詳細な画像検査が必要になります。

造影3D-CTA

腕の静脈から造影剤を注射し、CTで撮影した画像を3次元処理する方法です。造影剤が血管内に入った状態を撮影するため、より実際の形状に近い画像が得られやすくなります。また、脳動脈瘤頭蓋骨(ずがいこつ)との位置関係などを評価するうえでも有用性の高い画像検査です。

脳血管造影検査

脚の付け根などの太い血管からカテーテル*を血管内に挿入して脳の血管まで至らせ、造影剤を注入して血管や脳動脈瘤の状態を詳しく調べる検査です。体に負担がかかる検査ですが、脳動脈瘤の状態を詳しく観察することができます。開頭手術を想定している場合、MRAと造影3D-CTAの2つの検査だけで済むことがほとんどです。一方で、血管内治療を想定している場合は、これらの検査に加えて脳血管造影検査も必要になります。

*カテーテル:血管に挿入する細い管状の医療器具のこと。診断や治療、薬剤投与などに幅広く使用される。

治療

未破裂脳動脈瘤は、破裂することでくも膜下出血をきたし、生命を脅かすことがあります。しかし、未破裂のまま経過し、そのまま重大な問題を引き起こさないこともあります。そのため、病気が指摘された際に積極的に脳動脈瘤の破裂を予防するための治療を行うか、治療をせずに経過をみていくか慎重に判断する必要があります。

具体的には、脳動脈瘤の大きさが5~7mm以上で、形がいびつで、脳動脈瘤自体に小さな瘤がある場合などに破裂するリスクが高くなります。また、喫煙や過度な飲酒などの生活習慣がある場合や、くも膜下出血を発症した家族がいる場合なども破裂するリスクが高まるとされています。そのため、各検査による脳動脈瘤の詳細な観察を行ったうえで、生活歴や家族歴などを総合的に加味して治療を行うかどうか決定されます。

未破裂脳動脈瘤の治療は、手術によって脳動脈瘤の根本を医療用のクリップという小さく細い留め具で挟み込む“開頭クリッピング手術”と、血管内にカテーテルを挿入して医療用のコイルを脳動脈瘤内に詰めて塞ぐ“血管内治療”の2つに大きく分けられます。いずれの治療方法にもメリット・デメリットが存在し、大きさや形状によって適した治療法が異なります。

開頭手術(開頭クリッピング術)

開頭クリッピング術は、全身麻酔下で行われる手術です。まず皮膚を切開し、頭蓋骨(ずがいこつ)の一部に窓を開けます。脳動脈瘤の根元を“クリップ”という小さく細い留め具で挟み込み、脳動脈瘤への血流を遮断します。クリップは主にチタン製で、人体に無害のものを使用し、永久的に頭の中に置いておきます。最後は頭蓋骨を元の位置に戻し、皮膚を縫合します。

現代の手術では、髪の毛をほとんど剃る必要がないため、退院時には外見上手術の跡はほとんど分からなくなります。動脈瘤の状況によっては、頭皮などほかの部位の血管を使用してバイパスをする手技を組み合わせることもあります。

開頭手術は、皮膚や頭蓋骨を切開する必要がありますが、手術した直後から効果が得られます。また、永続的な根治性が高いという利点があります。

血管内治療

血管内治療も通常は全身麻酔で行われます。多くの場合、鼠径部*の血管から細いカテーテルを脳動脈瘤まで通し、脳動脈瘤の内部にコイルを詰めることで、脳動脈瘤への血流を遮断します。そのほか、動脈瘤ができた血管部分にステントという網状の金網を留置し、コイルと組み合わせて行う治療もあります。動脈瘤の部位と大きさによっては、ステントだけで動脈瘤を消失させる特殊な方法もあります。血管内に人工物を留置するため、治療後の一定期間は抗血栓薬の服用が必要となります。

血管内治療の最大の利点は、頭蓋骨を開く必要がないため、身体的な負担が比較的少ないことです。しかし、脳動脈瘤の形状や、正常な分枝血管**との位置関係などによっては、この治療法が適さない場合もあります。

また、血管内治療では、脳動脈瘤への血流が完全に遮断できなかったり、再発したりすることがあるため、治療後も定期的な経過観察が必要となります。

経過観察

治療をしない場合でも、未破裂脳動脈瘤が発見された場合は破裂を予防するために高血圧症などの病気の治療を徹底し、喫煙や過度な飲酒といった乱れた生活習慣を改善していくことが大切です。

*鼠径部:脚の付け根の部分。
**分枝血管:血管の枝分かれ部位

予防

未破裂脳動脈瘤ははっきりした原因が分からずに発症するケースも多く、確立した予防法はないのが現状です。

しかし、脳動脈瘤高血圧症などの病気、喫煙や過度な飲酒などの乱れた生活習慣が発症の引き金となることが知られています。そのため、未破裂脳動脈瘤を予防するには、高血圧症などの生活習慣病を抑えるために食事、運動、睡眠などの生活習慣を整え、喫煙や飲酒に注意し、生活習慣病を発症した場合は適切な治療を行うことが大切です。

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