脳ドックとは、主にMRIやMR血管撮影(MRA)による画像診断と脳機能に関連する検査を行い、脳の健康状態を評価する検査です。脳の動脈硬化、無症状の脳梗塞(のうこうそく)、脳出血や脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)脳腫瘍(のうしゅよう)などを早期に発見し、将来の脳卒中や認知症の予防を目指します。

症状はなくとも脳の健康状態が気になる40歳代以上の人、親戚で脳卒中になった人がいる人、頭痛や手足のしびれ、顔の麻痺などの気になる症状がある人、高血圧や糖尿病といった持病がある人などが対象となります。

脳ドックでは、検査前説明や問診、血圧測定、血液検査(採血)、心電図検査などを行った後、以下のような脳の検査を実施します。

所要時間は2~3時間程度、費用は自由診療で3万~5万円ほどですが、健康保険組合や市町村から補助金が出る場合があります。検査内容や結果説明は受診機関ごとに異なります。

頭部MRI

MRIは、長いトンネル状の台に仰向けに寝た状態で行われます。

強い磁力と電磁波によって体の断面を撮影することで状態を確認する検査です。頭部のMRI検査によって脳の断面を画像化し、脳梗塞、脳出血や脳腫瘍などの病気がないか調べます。

頭部MRA

MRIが脳全体を検査するのに対し、MRAは脳の血管を調べるためのものです。脳の血管だけを立体的に画像化して、血管の動脈硬化や狭窄(きょうさく)(狭い部分)・閉塞(へいそく)未破裂脳動脈瘤(みはれつのうどうみゃくりゅう)といった異常がないか確認します。

頚動脈MRA・頚動脈エコー(超音波)

頚動脈(けいどうみゃく)は、心臓、大動脈から首を通って脳に血液を送っている血管です。頚動脈の動脈硬化や狭窄といった異常は、将来の脳梗塞発症のリスクを高める恐れがあります。頚動脈MRAは、頭部MRAと同様に、血管を立体的に画像化して検査するものです。頭部MRI・MRAと頚動脈MRAを同時に撮影できる検査機器もあります。

頚動脈の状態をさらに詳しく調べるためには、頚動脈エコー(超音波)検査を行います。エコー検査は、ベッドに仰向けに寝た状態で、探触子と呼ばれるゼリーを塗った器具を首に当てて行います。

この検査ではMRAで確認できる血液が流れる箇所だけでなく、血管壁の厚さや状態が評価できるため、より動脈硬化のリスクを発見しやすくなります。

MRIは強い磁力を使用した検査のため、心臓ペースメーカーや人工内耳・中耳、脳脊椎刺激電極、体内埋め込み式のインシュリンポンプ、磁石式の人工肛門(じんこうこうもん)を装着されている人は検査ができません。入れ墨をしている人、妊娠中の人も基本的にMRIは避けます。

また、脳動脈クリップや人工関節、インプラント、義眼をつけている人も検査できないことがあります。磁気成分入りのアイライナーを使っている場合も注意が必要です。

MRI・MRA検査による痛みはありません。閉所恐怖症がある方は動悸、気分不良などの症状が出ることがあるため、あらかじめ申告しましょう。

採血がある場合や、造影剤を使ったMRI検査をする場合など、検査内容によっては当日に食事制限の必要があります。

多くの検査では検査着に着替えます。またMRI検査を受けるときは、磁気のある小物やアクセサリー類を持ち込まないように注意しましょう。

なお、アイシャドウやマスカラ、縁取りや濃い着色のあるコンタクトレンズにも金属成分が含まれる場合があるため、当日は濃いメイクやカラーコンタクトの使用は控えましょう。

脳ドックの主となるMRI検査では、水分や古い脳梗塞が黒、通常の脳が灰色に映し出される“T1強調画像”、これを白黒逆転させた“T2強調画像”、動脈硬化が生じている脳の深部を白く映し出す“フレア画像”、脳の微小な出血が小さな黒い点として映る“T2*(スター)画像“などの撮影方法があります。

脳ドックの場合、これらの撮像方法を組み合わせ、MRIでは無症状の脳梗塞や脳出血、大脳白質病変などを、MRAでは脳動脈瘤や脳の血管の狭窄の有無を診断します。

一般的な脳ドック施設では画像検査の実施のみでなく、医師が対面で適切な説明指導を行います。検査で異常が見つかったら、後日専門外来を受診しましょう。

脳ドックでは症状はなくても受診者に無症状の脳梗塞が偶然発見されることもあります。早期に発見できれば、脳梗塞が広がらないように生活習慣を是正し、高血圧や糖尿病など脳卒中のリスクとなる病気を積極的に治療することができます。

無症状の脳梗塞は、高齢者ではそれなりの頻度で見つかるといわれています。また、高血圧、糖尿病といった持病のある方は脳梗塞になる確率が高いとされていますので、不安がある場合は定期的に脳ドックを受けましょう。

本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。