脳の血管に生じるコブ状のふくらみである脳動脈瘤は、破裂すると「くも膜下出血」を発症します。この脳動脈瘤が破裂していない状態で発見されたものを未破裂脳動脈瘤といいます。よって、未破裂脳動脈瘤自体は厳密には病気のタネといえます。くも膜下出血の発症予防には、脳動脈瘤の破裂を防ぐことが必要で、そのために生活習慣を改善したり治療したりすることが大切です。
本記事では未破裂脳動脈瘤が生じる原因や症状について解説します。
脳動脈瘤とは、脳の血管に生じるコブ状のふくらみを指します。未破裂脳動脈瘤とは、この脳動脈瘤が破裂していない状態で発見されたもので、それ自体は無症状のことが多く、脳ドックや何らかの検査で偶然発見されることが多くなってきました。
脳動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血を発症します。過去に経験したことがないような強烈な頭痛で発症し、重症の場合はそのまま亡くなってしまうケースもあります。くも膜下出血を発症した場合は緊急で再出血防止の手術が行われますが、治療後に意識障害、言語障害、半身麻痺などの後遺症が残ってしまうケースも少なくありません。
くも膜下出血の発症を避けるためには、治療や生活習慣の改善などによって脳動脈瘤の破裂を防ぐことが大切になるでしょう。
統計的に、脳動脈瘤は中高年の女性に多く生じることが分かっています。このほか、脳動脈瘤が生じる要因には、高血圧、喫煙や過度の飲酒があります。これらは脳動脈瘤の発生のみならず破裂にもつながる因子であるため、血圧の管理、禁煙・節酒などの生活管理が大切といえます。
また、くも膜下出血を発症した方の家族は通常の数倍の頻度で未破裂脳動脈瘤を有することが知られています。そのため、家族内にくも膜下出血を発症したことがある方や脳動脈瘤を指摘された方がいらっしゃる場合には、注意が必要です。なお、多発性嚢胞腎*など一部の遺伝性疾患のある患者さんは、脳動脈瘤を合併しやすいことが分かっています。
*多発性嚢胞腎:腎臓に嚢胞(水がたまった袋)ができることによって腎臓のはたらきが徐々に低下する病気
未破裂脳動脈瘤があっても、その多くは無症状です。ただし未破裂脳動脈瘤のなかには、脳神経に触れることで症状が現れるものがあります。代表的なものは内頚動脈-後交通動脈分岐部にできる動脈瘤で、動脈瘤が目を動かす神経である動眼神経に触れることで、まぶたが垂れる、物が二重に見えるなどの症状が現れることがあります。
これらの症状は、急に脳動脈瘤が大きくなって神経に触れてしまうことで現れます。つまり、脳動脈瘤の破裂が迫っている危険信号であるため、注意が必要です。
未破裂脳動脈瘤の早期発見のために、家族内にくも膜下出血を発症したことがある方、未破裂脳動脈瘤を指摘された方がいらっしゃる場合には、頭部MRI検査をおすすめします。また、高血圧と診断された方、喫煙や飲酒の習慣がある方も、検査を受けていただくことが早期発見につながるでしょう。
近年では、脳ドックの受診によって脳動脈瘤が発見される方も増えてきています。脳ドックとは、MRIやMRA(脳血管撮影)などの画像診断の結果をもとに、脳血管疾患や発症の因子を発見するために行う検査です。脳ドックによって未破裂脳動脈瘤が発見されれば、経過観察や治療によって破裂を防ぐことが可能になるケースもあります。
くも膜下出血は突然に強烈な頭痛で発症し、なかには意識を失うケースもあります。そのため、バスなどの自動車の運転を職業とされている方は特に、安全のために検査を受けていただくことをおすすめします。
脳動脈瘤を早期に発見し、くも膜下出血の発症を防いでいただきたいと思います。
通常、未破裂脳動脈瘤が自然に小さくなったり消えたりすることはないため、破裂を防ぐためには、生活習慣の改善や治療などを考える必要があります。また、治療法を選択する際には、治療に伴う危険性と、脳動脈瘤が将来的にどれくらい破裂する危険性があるかを考慮します。
一般的に脳動脈瘤のサイズが小さい(4ミリ以下)場合、破裂の危険性は低いといわれています。また脳動脈瘤が生じた部位によっても破裂の危険性は異なり、同じ大きさであっても前交通動脈や内頸動脈-後交通動脈分岐部と呼ばれる血管に生じた脳動脈瘤では、危険性が高いとされています。
脳動脈瘤が小さく、破裂の危険性が低いとされる部位の場合には、定期的な検査と生活習慣を整えることから始めてもらうケースが多いです。たとえば、半年ごとにMRI検査を行い、内服治療で血圧をコントロールして、禁酒・禁煙など生活習慣の改善を行っていただくことがあります。
一方、破裂する危険性が高いと判断した場合には、手術など積極的な治療を行うこともあります。
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