動脈瘤は、6つの条件に加え患者さん個々の特性も考慮する必要があります。そのため、一概に分類することはできませんが、日本医科大学脳神経外科、大学院教授 森田明夫先生にいくつかの症例を想定していただきました。
<症例1> 50歳男性 4㎜の中大脳動脈瘤 2点/グレードⅠ
発見の経緯
会社の脳ドックで未破裂動脈瘤と診断されました。頭痛やめまいのない無症候でした。
考えられるリスク
喫煙とお酒を飲む習慣があるため、今後の破裂リスクをできるだけ高めないように、酒量を減らし、喫煙も避けることにしました。3年間の破裂率リスクは0.6パーセントです。
治療の選択
経過観察になりました。こまめに経過を見たほうがよいため、少なくとも1回目の検査は半年後、2回目の検査は1年後、3回目以降の検査は1年ごとに切り替えるという診断になりました。しかし、2年後の検査で6㎜に拡大した場合は治療を考えたほうがよいでしょう。
<症例2> 60歳女性 7㎜の前交通動脈瘤 7点/グレードⅢ
発見の経緯
軽度の頭痛があり受診したところ動脈瘤が見つかりました。
考えられるリスク
お酒も飲まず、喫煙の習慣もありません。高血圧もありませんが、形が不整形でした。3年間の破裂率は5.7パーセントです。
治療の選択
3年間の破裂リスクを換算した場合、1年以内に破裂するリスクも1.9パーセントになるため、治療をしたほうがいいという診断になりました。治療のリスクは、外科手術でも血管内治療でもほぼ同じという診断だったため、医師と治療方針を検討することになりました。
<症例3> 45歳女性 5㎜の内頚動脈瘤 1点/グレードⅠ
発見の経緯
健康診断で未破裂動脈瘤が見つかりました。
考えられるリスク
破裂率はとても低いという診断です。しかし、もし治療をする場合、外科手術ならば頭蓋底の骨を削る必要があり、血管内治療ならばステントを利用する必要があるなど、特殊な技術を必要とする場所のため治療するリスクは非常に高いという診断でした。
治療の選択
破裂する可能性よりも治療をするリスクのほうがはるかに大きかったため、経過観察になりました。
<症例4> 75歳男性 4㎜の脳底動脈瘤 3点/グレードⅠ
発見の経緯
たまたま別の疾患で受診した際に動脈瘤が見つかりました。認知症などもなく健康です。
考えられるリスク
破裂率は低く、治療の難しい動脈瘤です。
治療の選択
破裂率よりも治療のリスクが高いため経過観察のほうがよいでしょう。
しかし、もしこの男性が60歳で大きさが7㎜だった場合、動脈瘤の形状などを勘案し血管内治療か開頭手術をすすめるでしょう(動脈瘤を治療しないリスクのほうが高く、脳底動脈瘤の場合は血管内治療が選択されることが多いが、形状によっては開頭手術のほうがよい場合もある)。
また、もしも認知症の症状があった場合には、御家族とも相談して治療を検討すべきでしょう。重度の認知症や健康状態の悪い患者さんへの治療は、症例毎の判断が必要となります。
繰り返しになりますが、動脈瘤は、大きさ、場所、形、年齢、性別、高血圧の有無、の6つの条件に加え、患者さんそれぞれの条件も考慮する必要があります。まったく同じ条件であるからといって、同じ診断や治療が行われる、ということではありませんので、動脈瘤の知識を得るための参考としてご覧ください。
欧米では、脳動脈瘤を持っている方は持っていない方に比べ、高血圧、喫煙する、運動しないという3条件が揃っているというデータがあります。つまり、脳動脈瘤を持っている方は、脳動脈瘤以外の病気も優位に発症するリスクがあると考えられているのです。日本ではまだはっきりした研究結果はありませんが、以上を考慮すると、もし脳動脈瘤が見つかった場合は、動脈硬化に関わるような別の因子や心臓の病気などもチェックする必要があるでしょう。
東京労災病院 院長
関連の医療相談が13件あります
未破壊脳動脈瘤の予防処置について
開頭クリッピング術とカテーテルによるコイル術の違いを教えてください
めまいで受診したところ脳動脈瘤が見つかり、経過観察と言われた
半年ぐらい前からめまいがひどく、横から殴られたようにぐらついたり、視界が揺れたりしていたため、 耳鼻咽喉科を受診したところ、異常なしと診断を受けたが、脳神経外科の受診を勧められた。 その後、脳神経外科を受診したところ、脳動脈瘤という診断を受けたが、めまいの直接的な原因ではないと言われた。 脳動脈瘤の方はまだ大きくはないので経過観察だが、若いので念のため半年おきにMRIを撮るという流れになった。 この場合、めまいに対しては何科を受診したらよいのか。 また、脳動脈瘤に関しては引き続き同じ脳神経外科でMRIを撮りに行った方が良いのか。それとも一度別の病院にかかった方が良いのか。
未破裂脳動脈瘤の治療に関して
10年ほど前に脳底動脈に脳動脈瘤を指摘され、高血圧、高脂血症の薬を内服中でございます。頸部の動脈狭窄もあるため、抗凝固剤も内服しております。 ここ数年で動脈瘤の大きさが2倍くらいになり、現在の大きさは5~6mmです。大きさはさほど問題は無いようなのですが、瘤の形が突き出ている角?のようなものが数カ所あり、それも大きくなっているとのことで、何らかの治療を勧められました。 しかし、動脈瘤の位置が開頭では確認しにくい位置にある為クリッピングは難しく、コイリングが最も良いだろうと言われました。コイリングに関しても、これ以上ネックが大きくなったら難しくなるとのことです。 一番問題なのが、ヨード過敏症があると言うことです。 40年以上前の腎結石の際の造影で、全身に湿疹が出来、ヨード過敏を指摘されました。そのため、どこの病院に行っても治療は出来ないと言われてしまいます。 何か良い方法はないものかと悩んでおります。 私の叔母が40歳代でくも膜下出血で、母が脳出血で亡くなっていること、高血圧の持病もあり、時々血圧が220以上まで跳ね上がる事もあるため、何とか治療できたらと願っております。 何か良い方法があればご教授頂きたく、ご相談させて頂きました。 よろしくお願いいたします。
クモ膜下出血はどのような人がなるのでしょうか?
先日、友人のお母さんがクモ膜下出血で亡くなったという話を聞きました。発見が遅く、発見されたときにはすでに亡くなっていたそうです。私には一人暮らしの母が地元にいるのですが、この話を聞いてから母が突然、倒れるのではないかと心配になることがあります。クモ膜下出血って、そもそもどのような人がなるのでしょうか?ならないように気を付けることができるのでしょうか?
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「脳動脈瘤」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。