インタビュー

未破裂脳動脈瘤の症例パターン

未破裂脳動脈瘤の症例パターン
森田 明夫 先生

東京労災病院 院長

森田 明夫 先生

この記事の最終更新は2016年02月17日です。

動脈瘤は、6つの条件に加え患者さん個々の特性も考慮する必要があります。そのため、一概に分類することはできませんが、日本医科大学脳神経外科、大学院教授 森田明夫先生にいくつかの症例を想定していただきました。

<症例1> 50歳男性  4㎜の中大脳動脈瘤  2点/グレードⅠ

発見の経緯

会社の脳ドックで未破裂動脈瘤と診断されました。頭痛めまいのない無症候でした。

考えられるリスク

喫煙とお酒を飲む習慣があるため、今後の破裂リスクをできるだけ高めないように、酒量を減らし、喫煙も避けることにしました。3年間の破裂率リスクは0.6パーセントです。

治療の選択

経過観察になりました。こまめに経過を見たほうがよいため、少なくとも1回目の検査は半年後、2回目の検査は1年後、3回目以降の検査は1年ごとに切り替えるという診断になりました。しかし、2年後の検査で6㎜に拡大した場合は治療を考えたほうがよいでしょう。

<症例2> 60歳女性   7㎜の前交通動脈瘤   7点/グレードⅢ

発見の経緯

軽度の頭痛があり受診したところ動脈瘤が見つかりました。

考えられるリスク

お酒も飲まず、喫煙の習慣もありません。高血圧もありませんが、形が不整形でした。3年間の破裂率は5.7パーセントです。

治療の選択

3年間の破裂リスクを換算した場合、1年以内に破裂するリスクも1.9パーセントになるため、治療をしたほうがいいという診断になりました。治療のリスクは、外科手術でも血管内治療でもほぼ同じという診断だったため、医師と治療方針を検討することになりました。

<症例3> 45歳女性 5㎜の内頚動脈瘤 1点/グレードⅠ

発見の経緯

健康診断で未破裂動脈瘤が見つかりました。

考えられるリスク

破裂率はとても低いという診断です。しかし、もし治療をする場合、外科手術ならば頭蓋底の骨を削る必要があり、血管内治療ならばステントを利用する必要があるなど、特殊な技術を必要とする場所のため治療するリスクは非常に高いという診断でした。

治療の選択

破裂する可能性よりも治療をするリスクのほうがはるかに大きかったため、経過観察になりました。

<症例4> 75歳男性 4㎜の脳底動脈瘤 3点/グレードⅠ

発見の経緯

たまたま別の疾患で受診した際に動脈瘤が見つかりました。認知症などもなく健康です。

考えられるリスク

破裂率は低く、治療の難しい動脈瘤です。

治療の選択

破裂率よりも治療のリスクが高いため経過観察のほうがよいでしょう。

しかし、もしこの男性が60歳で大きさが7㎜だった場合、動脈瘤の形状などを勘案し血管内治療か開頭手術をすすめるでしょう(動脈瘤を治療しないリスクのほうが高く、脳底動脈瘤の場合は血管内治療が選択されることが多いが、形状によっては開頭手術のほうがよい場合もある)。

また、もしも認知症の症状があった場合には、御家族とも相談して治療を検討すべきでしょう。重度の認知症や健康状態の悪い患者さんへの治療は、症例毎の判断が必要となります。

繰り返しになりますが、動脈瘤は、大きさ、場所、形、年齢、性別、高血圧の有無、の6つの条件に加え、患者さんそれぞれの条件も考慮する必要があります。まったく同じ条件であるからといって、同じ診断や治療が行われる、ということではありませんので、動脈瘤の知識を得るための参考としてご覧ください。

欧米では、脳動脈瘤を持っている方は持っていない方に比べ、高血圧、喫煙する、運動しないという3条件が揃っているというデータがあります。つまり、脳動脈瘤を持っている方は、脳動脈瘤以外の病気も優位に発症するリスクがあると考えられているのです。日本ではまだはっきりした研究結果はありませんが、以上を考慮すると、もし脳動脈瘤が見つかった場合は、動脈硬化に関わるような別の因子や心臓の病気などもチェックする必要があるでしょう。

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