インタビュー

脳動脈瘤とくも膜下出血の関係

脳動脈瘤とくも膜下出血の関係
森田 明夫 先生

東京労災病院 院長

森田 明夫 先生

この記事の最終更新は2016年02月14日です。

動脈瘤が破裂するとくも膜下出血を引き起こします。くも膜下出血は、「動脈」にできた瘤が破裂し、くも膜下という出血をおさえるものがない場所に出血が広がることから、短時間に意識障害を引き起こす重大な病気です。動脈瘤とくも膜下出血の関係について日本医科大学脳神経外科、大学院教授 森田明夫先生にお話をうかがいます。

動脈瘤とは、脳内部の直径1~4㎜の中小動脈に発生する、瘤状あるいは紡錘状(両端がすぼまったつぼみのような形)の膨れたコブのことです。これは、脳の底部にある大きな血管の枝分かれした部分が、血流に押されることによって、膨らんで形成されます。また、枝分かれした部分とは関係がない部分にもできますが、たいてい脳の下の方、頭蓋底部にある血管のループに沿って発生します。この脳動脈瘤が破裂すると、脳を包んでいる「くも膜」という膜の内側に出血を起こしますが、これを「くも膜下出血」といいます。

脳動脈瘤ができやすい場所とくも膜(黄線)の位置

くも膜下出血の特徴は、2つあります。ひとつは、脳自体の中ではなく脳の表面に出血するためどんどん広がりやすく、非常に広範囲にわたって出血することです。もうひとつは、症状に左右差が生じないことです。脳自体の中に出血する脳内出血の場合は、出血した片方の脳の機能を損傷するため、片方の手足が動かないなど片側だけに麻痺が出ます。

くも膜下出血を発症すると、一番最初に現れる症状は頭痛です。脳の底面の硬膜には痛覚があるため、その領域に出血が起こると痛みが生じるのです。症状がひどくなると、動脈から脳表面に出続けた血液によって脳の頭蓋内圧(頭蓋骨の中の圧)が上がってしまいます。脳が圧迫されて血液がきちんと行き届かず脳が機能しなくなり、意識障害を起こします。

脳内出血の場合、原因が脳の深部を走っている細い動脈にできた小さなコブや破綻であるため、周囲に脳実質があり破裂しても出血は少量で留まることもあります。しかしくも膜下出血の場合、大きな動脈にできた瘤から出血点を抑えるところの無い場所に出血してしまうため、出血量も多く重症化しやすいのです。

世界的な統計でみた場合、日本における未破裂動脈瘤の発症頻度は欧米とほとんど変わりません。成人100人にほぼ3人に脳動脈瘤が発見されます。しかし、同じ年齢、同じ部位、同じ大きさの動脈瘤を比較した場合、日本人の方がくも膜下出血の発症率が3倍多いことがわかっています。欧米では大体10万人対年8人位くも膜下出血が発症するとされていますが、日本では年20〜30名の発症といわれています。つまり、日本人に発症した動脈瘤の方が欧米に比べて破裂するリスクが高いということです。しかし、その理由が遺伝によるものなのか生活習慣によるものなのかについては、現在研究中で明らかになっていません。

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