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未破裂脳動脈瘤に対する治療とは? 開頭クリッピング術による手術について解説

未破裂脳動脈瘤に対する治療とは? 開頭クリッピング術による手術について解説
井上 智弘 先生

NTT東日本関東病院 脳神経外科 部長/脳卒中センター長

井上 智弘 先生

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この記事の最終更新は2019年07月17日です。

未破裂脳動脈瘤(みはれつのうどうみゃくりゅう)とは、脳の動脈の一部が膨らんでできるコブである脳動脈瘤が破裂しないままでいる状態です。脳動脈瘤が破裂すると、「くも膜下出血」が起こり命に関わるような状態となるため、破裂する可能性がある脳動脈瘤を見極め、治療を行うことが大切です。

今回は、NTT東日本関東病院 脳神経外科 井上 智弘先生に未破裂脳動脈瘤に対する治療の選択肢と開頭クリッピング術の特徴についてお話しいただきました。

脳動脈瘤とは、脳の動脈の一部が膨らんでできるコブを指します。未破裂脳動脈瘤とは、この脳動脈瘤が破裂しないままでいる状態です。脳動脈瘤は、脳動脈の分かれ目に生じることが多いです。

全ての脳動脈瘤が破裂するわけではありませんが、脳動脈瘤が破裂すると、「くも膜下出血」が起こります。くも膜下出血が起こると命に関わるような状態となるため、破裂する可能性がある脳動脈瘤を見極め、治療によって破裂を防ぐことが重要です。

脳

脳動脈瘤の大きさや形から破裂の可能性を判断する

破裂する可能性があるか判断するひとつの目安は、脳動脈瘤の径が5ミリ以上かどうかです。

ただし、一概に5ミリ以上であれば破裂しやすいというわけではありません。たとえば、同じ5ミリであっても、太い血管に生じている場合と細い血管に生じている場合とでは異なり、血管径に対する動脈瘤の比率が大きい場合に破裂する可能性が高くなります。このため、同じ大きさであっても、細い血管に生じている動脈瘤のほうが破裂しやすいといえます。

また、大きさだけではなく、動脈瘤の形も破裂しやすいかどうかに影響します。たとえば、膨らみ方が一様ではなく、形がいびつな動脈瘤は破裂しやすいといわれています。

脳動脈瘤が生じる要因として、喫煙高血圧が挙げられます。これらは、動脈瘤の形成のみならず破裂につながる因子ともいわれているため、禁煙や血圧のコントロールによって破裂による重症化を防ぐことが大切です。

また、脳動脈瘤が生じやすい体質は遺伝すると考えられているため、家族内に脳動脈瘤を生じた方や、くも膜下出血を起こしたことがある方がいる場合には注意が必要です。

先述したように、未破裂脳動脈瘤は必ずしも破裂するわけではありません。しかし、破裂し、くも膜下出血が起こると命に関わるような状態になるため、破裂する可能性が高いものについては治療の必要があると考えられています。

一般的に、脳動脈瘤の径が5ミリ以上、70歳以下の場合に、治療の対象となります。ただし、これらはひとつの目安であり、実際には脳動脈瘤の形や生じた場所、患者さんの状態等を総合的に判断し、治療するかどうか判断されます。

未破裂脳動脈瘤の治療の選択肢には、主に開頭クリッピング術による手術と血管内治療があります。

開頭クリッピング術とは、開頭手術によって脳動脈瘤をつぶす方法です。手術では、周辺の神経や細い動脈を傷つけることがないよう顕微鏡を用いて視野を拡大し、動脈瘤の根元をクリップで挟んで止血し脳動脈瘤をつぶします。

開頭クリッピング術による手術は、根治性と安全性が高い点が大きなメリットです。クリッピング術による手術を受けた場合では、同じ場所に再発する可能性は非常に低いといわれています。また、開頭し直接見ながら手術を行うため、手術中に動脈瘤が破れてしまうなど予期せぬ事態が起こったときにも対応しやすいという特徴があります。

ただし、開頭手術が必要となるため、クリッピング術による手術を受ける場合には、手術日から10日〜2週間の入院が必要となります。

血管

血管内治療とは、血管内に挿入したカテーテルから脳動脈瘤の病巣部にコイルなど人工的な物質を詰めて固まらせ、脳動脈瘤の破裂を防ぐ治療法です。

血管内治療は、開頭の必要がなく、開頭クリッピング術と比べて入院期間が短い点がメリットでしょう。ただし、デメリットとして、脳動脈瘤が再発する可能性が開頭クリッピング術よりも高いといわれています。

血管2

当院の脳神経外科では、開頭クリッピング術を積極的に行っています。ここでは、当院で開頭クリッピング術による手術を受けるまでの流れについてご説明します。

当院の脳神経外科では、基本的に、クリッピング術による手術までに外来でほぼ全ての検査を終えていただきます。ただし、必要があれば、1泊2日の入院による検査を受けていただくこともあります。

必要な検査を終えたうえで、手術の前日に入院していただきます。

クリッピング術による手術後は、手術日から約2週間入院していただくようにしています。

回復までの期間には個人差がありますが、おおむね2週間程度でもとの生活に戻ることができるケースが多いです。長期的な脳動脈瘤の再発予防として禁煙高血圧に注意すること以外に、大きな制限はありません。

手術後の通院頻度や体の状態は?

術後の通院頻度は、1か月に1回程度からはじめ、状態をみて2か月に1回にするなど徐々に通院の間隔をあけていきます。最終的には1〜2年に1回程度MRIを受けていただき、経過を確認していきます。

術後の状態には個人差があります。お話ししたように手術の根治性は高いですが、体への負担はゼロではありません。特に障害が残らないとしても、体がだるい、傷が痛む、気分が優れないということもあるでしょう。

当院の脳神経外科は、手術の安全性と確実性を重視し、脳を傷つけることなく確実に病巣を処理できるよう、経験を積んだ術者が中心となり顕微鏡によって最大20倍の倍率まで病巣を拡大しながら手術を行っています。

このような精巧な操作を実現するため、当診療科では日頃から修練を積んでいます。たとえば、肉眼では確認できないほどの髪の毛よりも細い糸を用いて、顕微鏡下で縫ったり縛ったりという操作を自在に行うことができるよう訓練を行っています。

また、手術時には、脳の機能を監視する電気生理モニタリングや、脳神経など手術を行う部位の詳細を映し出すナビゲーションシステムなどを用いることで、安全性と確実性を高める工夫を行っています。

井上先生

40歳以上の方で、ご両親など家族内に脳動脈瘤がある方、くも膜下出血を起こしたことがある方がいらっしゃる場合には、一度頭部MRIを受けることをおすすめします。

近年、脳動脈瘤は、何らかの理由で頭部MRIを受けたときに偶然発見されることが多いといわれています。クリニックなどから当院に患者さんをご紹介いただく際にも、MRIによってほぼ診断がついた状態で受診されるケースが多いです。

お話ししたように、当院の脳神経外科では、安全性と確実性の高い手術を行うよう努めています。未破裂脳動脈瘤が見つかった方は、主治医の先生と相談のうえ、ぜひ当院にご相談いただきたいと思います。

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