「脳動脈瘤の治療方法」では、脳動脈瘤の治療法全般についてご説明しました。治療のひとつである「開頭手術(脳動脈瘤クリッピング術)」の中に「鍵穴手術」という術法があります。そのエキスパートである、総合東京病院 脳神経外科 脳卒中センター長の森 健太郎先生に「鍵穴手術」が生まれた経緯についてお聞きしました。
開頭手術(脳動脈瘤クリッピング術)は血流遮断ができますが、頭蓋骨を直径8センチほど開頭するため、手術を怖がる方も少なくありません。
未破裂脳動脈瘤が発見されると、患者さんは破裂に対する恐怖だけでなく、治療自体、あるいは治療に伴うリスクに対して恐怖感を持ってしまいます。その結果うつ気分になられる方が多いです。特に 、患者さんの心理的負担が大きいということも開頭手術のデメリットのひとつです 。
1970年代以前の脳外科手術は肉眼で行われていました。頭を大きく開き表面の「術野」を広くし、そこから病巣がある脳の深部の狭い術野へ進んでいく「漏斗型」の手術法が行われていたのです。 70年代になってからは日本でも欧米でも顕微鏡手術が取り入れられはじめ、開頭の規模も小さく改善していきました。そして80年代には日本にCTが導入され、脳外科にも明るい時代がやってきたのです。
90年代には、ドイツのマインツ大学のAlex Perneczky教授が「Keyhole concept」を提唱しました。「Keyhole concept」とは「開頭部を実際の鍵穴の大きさにする」という意味ではなく、患者さんの開頭術自体による負担を可能な限り軽減することを目指した「頭蓋内深部病変に到達しうる最小限の開頭(実際には2~3cm)」のことをいいます。この鍵穴手術が実現したことの背景には、コンピュータ技術・顕微鏡・内視鏡技術の発展がありました。
そもそも日本では鍵穴手術が行われておらず、学会などで発表すると安全性の面から批判されることが多々ありました。絶対に失敗は許されませんので、とにかく1例1例細心の注意を払って手術し、術後の患者さんの経過を評価してきました。この結果好成績を残すことができ、学会・論文などで発表することでやっと認められるようになりました。
また通常の開頭手術において、広範囲にわたる側頭筋(頭の横の筋肉)の切除、過度な脳の露出が問題となっていました。一般的にクリッピング術は確実に出血を予防できる反面、コイル塞栓術に比べ周術期(術中・術後)における障害率は高く、入院期間も長いのです。ただし、治療の永続性が高いという長所がありました。
そこで私はクリッピング術の確実性や永続性を保ちつつ、体への影響を少なくする方法を探し求めた結果、鍵穴手術を行うことを思いついたのです。患者さんに「治りました」と、はっきりお伝えできる医療を提供していきたい気持ちは今も昔も変わりません。
他の手術との比較開頭手術・血管内手術と比べると以下のようなメリットが鍵穴手術にはあります。
開頭手術
血管内手術
鍵穴手術
侵襲性
高い
低い
低い
安全性
○
△
○
有効性
○
△
○
永続性
○
△
○
総合東京病院 脳神経外科 脳卒中センター長
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開頭クリッピング術とカテーテルによるコイル術の違いを教えてください
めまいで受診したところ脳動脈瘤が見つかり、経過観察と言われた
半年ぐらい前からめまいがひどく、横から殴られたようにぐらついたり、視界が揺れたりしていたため、 耳鼻咽喉科を受診したところ、異常なしと診断を受けたが、脳神経外科の受診を勧められた。 その後、脳神経外科を受診したところ、脳動脈瘤という診断を受けたが、めまいの直接的な原因ではないと言われた。 脳動脈瘤の方はまだ大きくはないので経過観察だが、若いので念のため半年おきにMRIを撮るという流れになった。 この場合、めまいに対しては何科を受診したらよいのか。 また、脳動脈瘤に関しては引き続き同じ脳神経外科でMRIを撮りに行った方が良いのか。それとも一度別の病院にかかった方が良いのか。
未破裂脳動脈瘤の治療に関して
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クモ膜下出血はどのような人がなるのでしょうか?
先日、友人のお母さんがクモ膜下出血で亡くなったという話を聞きました。発見が遅く、発見されたときにはすでに亡くなっていたそうです。私には一人暮らしの母が地元にいるのですが、この話を聞いてから母が突然、倒れるのではないかと心配になることがあります。クモ膜下出血って、そもそもどのような人がなるのでしょうか?ならないように気を付けることができるのでしょうか?
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