この記事では、昭和大学脳神経外科学教授水谷徹先生に解離性脳動脈瘤の治療についてお話をうかがいます。
椎骨動脈は左右に2本存在していますが、これが1本に合流して脳底動脈になります。
解離性脳動脈瘤がもっとも多く発生する部位である椎骨動脈には、小脳に血液を送る後下小脳動脈という1本の比較的太い血管と延髄を栄養する非常に細い穿通枝が2~5本出ています。後下小脳動脈の血流が途絶えると小脳が脳梗塞になり、めまい、運動失調や脳腫脹を生じた場合には意識障害を起こす危険があります。
多くの場合、治療の工夫によって後下小脳動脈の血流を残すことが可能ですが、動脈瘤の中央付近からこの動脈が出ている場合は治療が難しくなり、頭蓋外の血管と後下小脳動脈を吻合するバイパス術(血流を通すために代わりの血管を確保すること)を必要とすることがあります。また、穿通枝が動脈瘤そのものから出ている場合、動脈瘤を閉塞すると血流低下をきたし延髄の外側部分が脳梗塞になります。この症状はワレンベルグ症候群といわれ、感覚障害、運動失調、嚥下障害などを起こすことがあります。
解離性脳動脈瘤の治療においても、最近は血管内手術を選択することが増えています。しかし、すべての脳外科施設に、血管内治療の専門医が常駐しているわけではありません。
解離性脳動脈瘤のくも膜下出血は再破裂率が高いため、より急性期の治療を必要とします。救急で搬送された施設で開頭手術か血管内手術のうち、より早く対応できる治療方法を選択すべきでしょう。
解離性動脈瘤を動脈ごと閉塞する方法は、近位部のみをクリップで閉塞する近位部クリップと近位部と遠位部の両端を閉塞するトラッピングがあります。トラッピングの方が破裂予防効果は確実ですが、近位部クリップで動脈瘤部分を盲端にすること(一方の端が閉じていること)でも充分な効果があります。
また、椎骨動脈解離性動脈瘤の場合、遠位端は嚥下の働きをする脳神経に近く術野が奥の見えにくいところになるため、無理に遠位端にクリップをかけることは、神経を痛める原因にもなり得策ではありません。両方の使い分けは、動脈瘤の解剖学的位置、形状、動脈瘤途中からの分岐血管の位置や状態で判断します。
足の付け根部分の大腿動脈からカテーテルを通し、血管の中から解離性脳動脈瘤の発生場所まですすみ、動脈瘤の中にコイルをつめて血流を遮断する方法です。
椎骨動脈の太さが同程度であれば、どちらか一方の血管によって脳底動脈から先への十分な血流が確保できます。そのため、このような治療は椎骨動脈にできた椎骨動脈解離性脳動脈瘤などの治療に用いられます。
昭和大学 医学部脳神経外科学講座 教授
水谷 徹 先生の所属医療機関
関連の医療相談が13件あります
未破壊脳動脈瘤の予防処置について
開頭クリッピング術とカテーテルによるコイル術の違いを教えてください
めまいで受診したところ脳動脈瘤が見つかり、経過観察と言われた
半年ぐらい前からめまいがひどく、横から殴られたようにぐらついたり、視界が揺れたりしていたため、 耳鼻咽喉科を受診したところ、異常なしと診断を受けたが、脳神経外科の受診を勧められた。 その後、脳神経外科を受診したところ、脳動脈瘤という診断を受けたが、めまいの直接的な原因ではないと言われた。 脳動脈瘤の方はまだ大きくはないので経過観察だが、若いので念のため半年おきにMRIを撮るという流れになった。 この場合、めまいに対しては何科を受診したらよいのか。 また、脳動脈瘤に関しては引き続き同じ脳神経外科でMRIを撮りに行った方が良いのか。それとも一度別の病院にかかった方が良いのか。
未破裂脳動脈瘤の治療に関して
10年ほど前に脳底動脈に脳動脈瘤を指摘され、高血圧、高脂血症の薬を内服中でございます。頸部の動脈狭窄もあるため、抗凝固剤も内服しております。 ここ数年で動脈瘤の大きさが2倍くらいになり、現在の大きさは5~6mmです。大きさはさほど問題は無いようなのですが、瘤の形が突き出ている角?のようなものが数カ所あり、それも大きくなっているとのことで、何らかの治療を勧められました。 しかし、動脈瘤の位置が開頭では確認しにくい位置にある為クリッピングは難しく、コイリングが最も良いだろうと言われました。コイリングに関しても、これ以上ネックが大きくなったら難しくなるとのことです。 一番問題なのが、ヨード過敏症があると言うことです。 40年以上前の腎結石の際の造影で、全身に湿疹が出来、ヨード過敏を指摘されました。そのため、どこの病院に行っても治療は出来ないと言われてしまいます。 何か良い方法はないものかと悩んでおります。 私の叔母が40歳代でくも膜下出血で、母が脳出血で亡くなっていること、高血圧の持病もあり、時々血圧が220以上まで跳ね上がる事もあるため、何とか治療できたらと願っております。 何か良い方法があればご教授頂きたく、ご相談させて頂きました。 よろしくお願いいたします。
クモ膜下出血はどのような人がなるのでしょうか?
先日、友人のお母さんがクモ膜下出血で亡くなったという話を聞きました。発見が遅く、発見されたときにはすでに亡くなっていたそうです。私には一人暮らしの母が地元にいるのですが、この話を聞いてから母が突然、倒れるのではないかと心配になることがあります。クモ膜下出血って、そもそもどのような人がなるのでしょうか?ならないように気を付けることができるのでしょうか?
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「脳動脈瘤」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。