脳動脈瘤とは、脳の血管の一部分が風船状に膨らんだ状態のことをいいます。脳動脈瘤が破裂すると、死亡率が高いとされているくも膜下出血を引き起こします。
この脳動脈瘤はなぜ発生するのでしょうか。また、脳動脈瘤を予防することはできるのでしょうか。本記事では、脳動脈瘤の原因、症状、予防方法について解説します。
脳動脈瘤とは、脳の動脈が風船状に膨らんだ部分のことをいいます。脳動脈瘤は血流に押されて動脈が膨らむことで形成されると考えられています。
脳動脈瘤の中には動脈に流れている血液が常に循環しているため、基本的に脳動脈瘤が自然にしぼんで治癒することはありません。
脳動脈瘤が破裂すると、脳を包んでいる“くも膜”という膜の内側に出血を起こし、死亡率が高いとされているくも膜下出血を発症します。しかし、脳動脈瘤は必ず破裂するわけではありません。
脳動脈瘤は太い脳動脈の枝分かれしている部分に発生することが多いです。特に発生することが多い部位は、前交通動脈、次に内頚動脈後交通動脈分岐部、そして中大脳動脈分岐部です。これらは脳の動脈の中では比較的太く、枝分かれしている動脈であるため、脳動脈瘤が発生しやすい部位と考えられています。また、血管の枝分かれしている部分とは関係ないところに脳動脈瘤が発生することもあります。
脳動脈瘤が発生していても、頭痛などの症状は基本的にありません。そのため、脳動脈瘤を保有していることが判明するのは、脳ドックの受診や、別の病気の検査をしたときに偶然見つかった、というケースが多いです。また、ご家族にくも膜下出血を発症された方がいらっしゃると、ご自身にも「脳動脈瘤があるのでは」と不安に思い、自ら検査を受けた結果、見つかる方もいらっしゃいます。
非常にまれなケースですが、脳動脈瘤が動眼神経の近くにあり、なおかつ脳動脈瘤が破裂する寸前に増大した場合、症状が現れることがあります。動眼神経が増大した脳動脈瘤に圧迫されると、眼球や上まぶたの運動を支配する動眼神経の機能が障害されます。すると、上まぶたがさがったり、片目が外側を向いて物が二重に見えたりといった症状が突然起きることがあります。この症状が現れたときには、脳動脈瘤が破裂する寸前と判断して、ただちにくも膜下出血に準じた治療が必要になります。
生まれつき脳の血管壁が弱いと、脳動脈瘤が発生しやすいとされています。そのため、脳動脈瘤が発生したことがある場合は、新たな脳動脈瘤が発生しやすく、また血縁者で脳動脈瘤が発生した方がいらっしゃる場合には、脳動脈瘤の保有率が高くなるといわれています。
ほかにも、子どもよりも成人のほうが脳動脈瘤の保有率が高いといわれていますが、子どものころに脳動脈瘤が発生している可能性も考えられるため、成人のほうが発生しやすいかどうかは不明です。
脳動脈瘤が破裂することで引き起こされるくも膜下出血は、脳卒中のカテゴリに分類されます。生活習慣病が原因となる脳出血や脳梗塞も脳卒中のひとつであるため、脳動脈瘤も生活習慣病によって発生するものとイメージされる方は多いですが、生活習慣病が原因となり脳動脈瘤が生じるという研究結果は出ていません。生活習慣病よりも生まれつき血管壁が弱いことが、脳動脈瘤の発生につながると考えられています。
年間平均で、1000人に9.5人の割合でくも膜下出血を発症したというデータがあります。このデータでは、2001年1月から2004年4月の期間中、脳動脈瘤を保有している成人5720人(6697つの動脈瘤)において、111人にくも膜下出血が発症し、全体での年間平均出血率は0.95%であったと報告されています。
また、脳動脈瘤はサイズが大きいほど破裂率が高くなることも分かっており、3~4mmの小さな脳動脈瘤であれば破裂率は0.36%、10~24mmであれば4.37%となっています。
中には、破裂せずに一生を過ごす方もいらっしゃいます。
先に解説したとおり、脳動脈瘤が生活習慣病に起因するかは判明しておらず、先天性な要因が強いと考えられているため、現時点で脳動脈瘤の発生を予防する方法はないといえます。
前項で解説したとおり脳動脈瘤の破裂率はわずかですが、脳動脈瘤の破裂によって引き起こされるくも膜下出血を予防する方法は、脳動脈瘤の治療を受けることです。具体的な治療法については、記事2『脳動脈瘤の治療はするべき?治療の判断基準、治療方法について』で解説します。
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