インタビュー

脳動脈瘤クリッピング術とは

脳動脈瘤クリッピング術とは
水谷 徹 先生

昭和大学 医学部脳神経外科学講座 教授

水谷 徹 先生

この記事の最終更新は2016年08月13日です。

脳動脈瘤はバリエーションが多く患者さんそれぞれの自然歴を考慮して慎重に検討する必要があります。どんな脳動脈瘤の場合クリッピング術の適応になるのでしょうか。昭和大学脳神経外科学教授水谷徹先生にお話をうかがいます。

脳動脈瘤は、できやすい場所が決まっています。たとえば脳底動脈先端部の動脈瘤は頭の奥の深い所にでき、意識の中枢を栄養とする重要な穿通枝という非常に細い動脈が近くにあるので、手術のリスクも高い場所です。これに対して血管内治療は比較的安全である場合が多く、再発よりも「治療そのものが安全に行えるかどうか」を優先しなければならないため、血管内治療のほうが適している場合が多いといえます。一方、たとえば枝のように血管が出ている動脈瘤の場合、中にコイルを詰めてしまうと枝になった血管も閉塞してしまうことになるため、血管内治療は適しておらず、脳の表面に近い位置にできた動脈瘤、特に中大脳動脈瘤などの場合も開頭してクリッピング術をするほうが適しているといえます。

脳動脈瘤のできやすい場所(脳を下から見た図)
脳動脈瘤のできやすい場所(脳を下から見た図)

昭和大学病院脳神経外科の場合、治療の検討をする際には開頭手術の専門医と血管内治療の専門医が一緒にカンファレンスを行います。ひとつの脳動脈瘤に対してそれぞれの治療の専門医が平等に比較検討できることは、患者さんにとって非常に利点になると思います。ただし、どちらの治療においても起こりうる治療のリスクを正しく患者さんに伝えることは大前提です。もちろん、優先されるべきは患者さんの希望ですから、これらの医師の評価と患者さんの要望を合わせて慎重に治療方針を検討する必要があります。

手術は、開頭して脳動脈瘤をクリップする、つまり「挟む」のが具体的な方法です。基本的には、動脈瘤の根元「ネック」という部分を挟みます。ただし、動脈瘤のでき方によって、ただネックを挟んだだけでは血管も一緒に閉塞してしまうもの、1本だけでなくクリップを複数本使うものなどさまざまあるため、ひとつひとつの動脈瘤によって使用するクリップの選択や挟み方に技術と経験が必要です。また、動脈瘤を挟む際に周囲の細い血管を一緒に挟んでも脳梗塞を起こしてしまうので、「動脈瘤だけ」をうまくクリップしなければなりません。クリップは動脈瘤を挟んだまま永久的に脳内に残ります。運動をしていて外れてしまうようなこともありません。

使用するクリップはチタンでできており、長さ、圧、挟む部分が曲がったものなどさまざまあります。クリップの圧はおよそ130~140グラムです。脳動脈瘤は、形が複雑な場合や非常に大きい場合などありますので、ひとつの動脈瘤に対して複数のクリップをかけることもあります。ひとつの動脈瘤に対して2つ以上のクリップをかけることが多いため、動脈瘤に合わせて種類の違うクリップを組み合わせて使用します。

実際に使用するクリップ  一番小さいものでは5ミリ、長いものでは40 ミリまである
実際に使用するクリップ 
一番小さいものでは
5ミリ、長いものでは40 ミリまである

クリッピングの際に重要なことは、クリップ先端を確実に視認し、深く入れすぎないことです。深く入れすぎてしまうと、動脈の裏側にある穿通枝という重要な血管を巻き込んで一緒に閉塞することがあるからです。ですから、クリップを入れすぎないようにする目的で、ブレード部分に5ミリごとに色分けしたスケールをつけたクリップ「スケールクリップ」を開発しました。コントラストがあることによって、クリップをかけた時に先端がどのくらいまで入っているかわかるようになっています。

ブレード(実際に動脈瘤を挟む部分)5ミリごとにスケールのついた 水谷先生開発のスケールクリップ
ブレード(実際に動脈瘤を挟む部分)5ミリごとにスケールのついた
水谷先生開発のスケールクリップ

 

 

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