インタビュー

未破裂脳動脈瘤の治療

未破裂脳動脈瘤の治療
森田 明夫 先生

東京労災病院 院長

森田 明夫 先生

この記事の最終更新は2016年02月16日です。

小さな動脈瘤の破裂リスクは、私たちが考えるよりもずっと小さいことがわかりました。しかし、形や動脈瘤のできた場所によって、治療をしたほうがよいケースもあります。破裂のリスク、拡大のリスク、治療のリスクを知ったうえで、ドクターとどんなことを相談すればいいのか、日本医科大学脳神経外科 大学院教授 森田明夫先生にお話をうかがいます。

動脈瘤の治療をするかしないかは、7㎜というサイズを基準に考えます。通常、脳の血管は4㎜以下です。動脈瘤が7㎜以上ある場合、血管のおよそ2倍程度またはそれ以上の大きさがあるということになります。脳のどこの血管のサイズと比較しても、血管の2倍あるということは相当大きい動脈瘤だと考えたほうがよいでしょう。ですから、7㎜以上の動脈瘤については、健康な患者さんであれば、治療することを前提に考えていきます。

しかし、7㎜以下だったからといって治療が必要ないわけではありません。たとえば6㎜だった場合でも、ある一定の確率で拡大する可能性がありますから、7㎜以下でも治療したほうがよいケースもあります。また、3㎜~4㎜の小さい動脈瘤でも、破れやすい場所にできた場合は治療したほうがよいケースもあります。7㎜という「目安」はあるにしても、治療に踏み切るかどうかの診断は非常に難しく、注意が必要です。

ただし、7㎜以下の動脈瘤の破裂率はぐんと低くなりますから、その点を踏まえて主治医とよく相談し、慎重にお考えいただきたいです。

反対に、10㎜以上という明らかに7㎜を超える動脈瘤が見つかった場合でも、ただちに手術をすると判断できるわけではありません。動脈瘤が10㎜以上になると、治療の際にまわりの血管も巻き込んでしまうリスクも考慮する必要があります。手術などでほかの血管に脳梗塞を起こしやすくしてしまうケースもあり、合併症率が高くなってしまうのです。

大きな動脈瘤の場合、治療のリスクは高いのですが、破裂率ももちろん高いため、多くは治療が検討されます。ですから現在は、合併症を可能な限り減らせるように、手術中の異変をすぐに検知できるようモニタリングも発展していますし、血管内治療やその器具などもずいぶん発展しています。破裂リスクの高い大きな動脈瘤に対して安全に治療が行えるよう、治療リスクを減らすような治療法の研究が日々行われています。

もし脳動脈瘤が見つかった場合、選択肢は3つです。1つめの選択肢は慎重な経過観察、2つめの選択肢はクリッピング手術(開頭して行う外科手術)、3つめの選択肢は血管内治療(血管内にカテーテルを通して行う手術)です。欧米では、治療を行う場合は血管内治療のほうがはるかに治療成績がよいという評価がなされていますが、日本ではそれほど差はありません。ですから、「治療をする」と決まった場合、外科手術と血管内治療のどちらを選択するかは非常に難しい問題です。また、どちらの選択肢も選べる場合、医師はさらに難しい選択を迫られることになります。

治療の選択が難しい疾患について、治療選択の補助になるように、RCT(ランダム化比較試験)という研究手法があります。RCTとは、ある一定量の同じ症例を同じ条件で比較し、安全性や治療予後などを比較する研究です。しかし、未破裂動脈瘤においてはまだRCT研究の結果が存在しません。

ですから、できる限り早い段階でRCTが実施されることが望ましいのですが、日本の場合、外科手術、血管内治療とエキスパートが別々の施設で治療にあたっていることが多い傾向にあります。そのため、両方のデータを一ヶ所に集めて検証することが難しいという問題を抱えています。ですから今後は、大きい病院に限らず、地域の連携や病院間の協力などでデータ共有を果たし、「未破裂動脈瘤」のRCTを確立していくことが求められるかもしれません。

 

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