インタビュー

脳動脈瘤の治療方法

脳動脈瘤の治療方法
森 健太郎 先生

総合東京病院 脳神経外科 脳卒中センター長

森 健太郎 先生

この記事の最終更新は2016年01月23日です。

人間ドックや医療機関の検査などで「動脈瘤がある」と言われ不安になられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。動脈瘤とは、動脈壁の弱くなっている部分に発生する「こぶ」のことをいい、脳・心臓・大動脈などの部位に発生します。今回取り上げるのは「脳動脈瘤」。これが破裂してしまうと「くも膜下出血」を引き起こします。一方破裂しない「未破裂脳動脈瘤」もあり、MRIなどの診断技術の進歩・普及に伴い、近年発見される方が増加しています。この「未破裂脳動脈瘤」を手術で治療するべきか、経過観察するべきか。総合東京病院 脳神経外科 脳卒中センター長の森 健太郎先生にお伺いしました。

そもそも「未破裂脳動脈瘤」には自覚症状がありません。ですから手術をしてもさらに自覚する症状として(実感できることとして)何かかがよくなるわけではありません。現状維持です。患者さんの中には「見つかってしまい困った」とおっしゃる方もいます。他の症状で診察を受けて偶然見つかる場合もあるのです。

私は「未破裂脳動脈瘤」があると指摘されても慌てることはないとお伝えしています。脳動脈瘤の中には、破裂しやすいもの・破裂しにくいものがあります。手術のリスク・効果・合併症そして破裂のリスクと比較して、治療するかどうか、またどのような治療を受けるかを、専門医の説明を参考にして、ご家族とじっくりと決めてください。

また「未破裂脳動脈瘤」が破裂して「くも膜下出血」にならないよう、予防のためにも高血圧の治療と禁煙、飲酒制限は行っていただいています。

治療法の選択肢には ①経過観察 ②開頭術(脳動脈瘤クリッピング術)③血管内手術(脳動脈瘤コイル塞栓術)の3つがあります。

動脈瘤の形態や大きさの変化を一定期間ごとに外来で診察します。

長い歴史がある治療法で、コイル塞栓術が発達した現在でも、最も確実な脳動脈瘤の出血予防方法です。全身麻酔で頭の骨を開けて脳動脈瘤の根元にクリップをかけ、脳動脈瘤への血流を遮断します。クリッピングをすることで動脈瘤は完全に閉塞され、基本的には半永久的に安心です。ただし脳を触るのでリスクがあります。傷の痛みもありますし、治療に要する入院期間も長くなります。

脳血管撮影装置の進歩に伴い、近年急速に発達してきた治療法です。大腿から挿入したカテーテルを脳動脈瘤内に誘導して、脳動脈瘤の内部にカテーテルからプラチナ製のコイルを送り込むことで、脳動脈瘤内の血流を遮断します。開頭しないので入院期間は短く、体への負担も小さくてすみますが、手術後は抗血栓剤の内服が必要になります。

治療のリスクは開頭手術と比較して低いとはいえず、長期の成績がわかっていないことも含め、出血予防効果は開頭クリッピングよりも低い状況です。また再発する可能性があるので検査を定期的に行い、経過を見る必要があります。

部位や形状によっては開頭手術より治療の安全性が落ちることもありますが、開頭手術では困難な場所の動脈瘤でも処置が可能な手術です。

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