近年、脳ドックなどで破裂していない動脈瘤が発見される機会が増加しています。動脈瘤の発見は、後遺症のリスクがある脳卒中を未然に防ぐことができる反面、患者さんが「破裂するのではないか」「治療はすべきか」という不安を抱えることになります。未破裂動脈瘤が見つかったら私たちはどうすればいいのでしょう。日本医科大学脳神経外科、大学院教授 森田明夫先生にお話をうかがいます。
未破裂動脈瘤とは、破れていない状態で見つかった動脈瘤のことを指します。未破裂動脈瘤は、年代によって発症率に差があります。未破裂動脈瘤が見つかる確率は、若年者から高齢者までのすべてを合わせて2~6パーセントといわれています。未破裂動脈瘤は、10代や20代で発症することはほとんどなく、もし発症した場合は、マルファン症候群や多発性嚢胞腎など、生まれつき動脈の壁が脆弱な遺伝性の別の病気や素因が疑われます。まれに、5歳程度の小児にも大きな動脈瘤が発症することがありますが、その場合にも、未破裂動脈瘤というよりは「非常に特殊な病態であり、早期に治療する必要のある病気」といえます。ですから、30〜40歳以降の方にドックなどで偶然見つかる動脈瘤を「未破裂動脈瘤」と定義しています。
未破裂動脈瘤は、その名のとおり未破裂で見つかるため、ほとんどは無症候、つまり症状がないのが特徴です。それでも、頭が痛い、頭がもやもやするなどの軽い症状がある方もいらっしゃいますが、「たまたま見つかってしまった」という方がほとんどです。
脳動脈瘤は、高齢になるにつれて発症する確率が上がっていきます。動脈瘤の発症の要因には先天的な素因と後天的な素因があります。
動脈瘤発症の先天的な素因としては、遺伝性の病気などでもともと動脈が弱いことが挙げられます。この場合、若い年齢の方でも動脈瘤が発症するリスクが高くなります。若い時に動脈瘤ができなくても、後天的な素因として、血管が慢性的に損傷される病態があります。たとえば、ずっと高血圧である方、動脈硬化を患っている方、喫煙による血管への刺激、身体のなかに歯周病などの慢性の炎症がある人などは、血管が損傷されやすくなります。
発症リスクが上がるのは、やはり高齢者です。現在の日本は高齢者の人口が多いため、それだけ動脈瘤を発症するリスクのある方も多いといえます。また、近年人間ドックを受ける機会も増えているため、今までには見つけられなかった小さな動脈瘤も見つかるようになりました。しかし、発症の頻度は以前から変わっていないため、単純に「動脈瘤を発症する方が増加した」とは言えず、「未破裂動脈瘤の患者さんが発見される機会が多くなった」というのが現状でしょう。
動脈瘤は、先天的要因と後天的要因が合わさって発症します。先天的な要素があるとはいえ、必ずしも動脈瘤を発症するとはいえません。親に脳動脈瘤ができたからといって、その子どもも絶対に脳動脈瘤ができるわけではないということです。
研究によると、むしろきょうだいのほうが遺伝要素は強いという結果が出ています。たとえば親子の場合、特に「お父さん」と「娘」と仮定して比較すると、生まれた時代、食べ物の好みなどはずいぶん違います。しかし、育つ環境が似ている、嗜好が似ている、類似した遺伝子を持つ(※)などの素因を持つきょうだいの場合、それよりも近い条件で身体が形成されます。ですから、親が脳動脈瘤を発症したかどうかよりも、きょうだいに発症するかどうかのほうが注目すべき要素だといえます。
※親子間よりもきょうだいのほうが同じ遺伝子が分配される。
東京労災病院 院長
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めまいで受診したところ脳動脈瘤が見つかり、経過観察と言われた
半年ぐらい前からめまいがひどく、横から殴られたようにぐらついたり、視界が揺れたりしていたため、 耳鼻咽喉科を受診したところ、異常なしと診断を受けたが、脳神経外科の受診を勧められた。 その後、脳神経外科を受診したところ、脳動脈瘤という診断を受けたが、めまいの直接的な原因ではないと言われた。 脳動脈瘤の方はまだ大きくはないので経過観察だが、若いので念のため半年おきにMRIを撮るという流れになった。 この場合、めまいに対しては何科を受診したらよいのか。 また、脳動脈瘤に関しては引き続き同じ脳神経外科でMRIを撮りに行った方が良いのか。それとも一度別の病院にかかった方が良いのか。
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