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インタビュー

解離性脳動脈瘤が見つかったら

解離性脳動脈瘤が見つかったら
水谷 徹 先生

昭和大学 医学部脳神経外科学講座 教授

水谷 徹 先生

動脈瘤が発見された場合、解離性動脈瘤の発生を示唆する頭痛や後頚部痛を契機に診断される場合と、特別な症状がなく偶然発見された場合がありますが、MRI画像などから解離性脳動脈瘤かどうかを慎重に正しく診断する必要があります。解離性脳動脈瘤の治療方針と治療について昭和大学医学部脳神経外科学講座教授の水谷徹先生にお話をうかがいます。

特に前者の頭痛を契機に診断された例は、発生から間もない状態であります。くも膜下出血を生じた例のほとんどに脳動脈解離の発生を示唆する先行性の項部、後頭部痛の訴えがあります。この事実は破裂するまでの間は動脈瘤が形成され未破裂状態にあったことを意味します。

また、病理所見からは、

●動脈瘤の発生時点からの日が近いほど(特に1週間以内)動脈瘤の修復組織ができていないこと(修復組織が完成して動脈瘤が安全な状態になるには約2ヶ月かかります)

●大きい動脈瘤ほど壁が薄いこと

が検証されます。

無症候のものも含めると脳動脈解離は高い頻度で生じており、臨床と病理所見のデータからはその300-600に1つが破裂してくも膜下出血を生じるという程度です。そして、それを予防する処置は、椎骨動脈を一本閉塞する方法なのですが、その際には穿通枝という椎骨動脈から出る非常に細い動脈が同時に閉塞されてしまい延髄梗塞となって運動失調や嚥下困難を生じる可能性が約5%程度ありますので、治療するかどうかは個々の動脈瘤ごとに、充分検討して決定すべきと考えます。

未破裂の状態で診断された解離性脳動脈瘤の治療データを示します。98例中、1例は破裂してくも膜下出血で亡くなり、それ以外は未破裂のまま終始しています。これは2011年に脳神経外科の世界トップジャーナルであるJournal of Neurosurgery誌に採用された私のデータ(1985-2008年)を元にしています。2ヶ月から20年と比較的長期にわたり経過観察できた98例について、初診時の動脈瘤の形状とその変化、破裂の有無を報告しています。

全体で見ると、98例中破裂した例は1例 (死亡)で、動脈瘤発生(頭痛)をDay 0とすると Day11に破裂を生じています。破裂した例は、動脈瘤の最大径が周囲の椎骨動脈の3倍あり、シリーズ中ほぼ最大の動脈瘤でした。それ以降の破裂例はありません。

逆に、動脈瘤が破裂してくも膜下出血を生じた108例についてのデータを示します。動脈瘤発生時の頭痛(Day 0)から、実際の破裂に至った日は、以下の通りです。

 それ以降の破裂例はありません。

診断時に昏睡状態等で、頭痛があったかどうか不明な方は24例でした。上記のデータでは、破裂例に関して動脈瘤発生時の頭痛がはっきりしていた84例のうち、81例(96.4%)が 3日以内に動脈瘤が破裂しており、最長は11日です。

動脈瘤の自然修復の経過と合わせて考えると、動脈瘤発生時の頭痛(Day 0)からみて Day 4以降に経過した例は安全性が高く、特に約2週間以上経過したものはほとんど破裂の危険がなかったということになります。ちなみに未破裂で発見された解離性動脈瘤では、先行性の頭痛(Day 0)から Day 3 以内に画像診断された例は65.7%であり、残りの34.3%がDay 4以降に診断されていました。

つまり頭痛がきっかけで診断される例の約3分の2は、診断時にはすでに非常に安全な状態になっているということです。このシリーズは世界的にも、過去のほぼ最大例数を含むものだと考えますが、今後はもっと大きい臨床データをまとめていく必要あります。

解離性脳動脈瘤において、頭痛(発生、Day0)からくも膜下出血・脳梗塞を生じるまでの期間  Mizutani T:Natural course of intracranial arterial dissections.J Neurosurg 114:1037-1044,2011より再編成
解離性脳動脈瘤において、頭痛(発生、Day0)からくも膜下出血・脳梗塞を生じるまでの期間
Mizutani TNatural course of intracranial arterial dissections.J Neurosurg 114:1037-1044,2011より再編成

無症候(特別症状がない状態)で偶然に発見されたものは、まずその形やMRIなどの所見から、解離性脳動脈瘤かどうかを慎重に検討する必要があります。ただし、解離性脳動脈瘤か他のタイプの本幹動脈瘤かどうかということは、最終的に判断できない場合もあります。また、無症候の解離性脳動脈瘤は、発生時点がわからないため、発生してから2ヶ月過ぎたものは安全という考えを基本とすると、ほとんどの無症候性のものは安全と言うことができますが、治療方針を決めるうえでも形状の変化を追うことは重要です。ただし、両側椎骨動脈に発生したもので、片方に治療的椎骨動脈閉塞を行った結果、もう片方の無症候性動脈瘤に流れる血流が増加して破裂したという報告もあります。

解離性脳動脈瘤は、その構造上動脈瘤ごと血管を閉塞する必要がある場合がほとんどです。治療の方法は、開頭してクリップで血管を閉塞する手術か、動脈瘤の中をコイルで詰めて塞栓する血管内治療のどちらかを、動脈瘤の特性や健康状態などの条件をよく検討したうえで選択します。

 

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