インタビュー

解離性脳動脈瘤とは

解離性脳動脈瘤とは
水谷 徹 先生

昭和大学 医学部脳神経外科学講座 教授

水谷 徹 先生

この記事の最終更新は2016年08月11日です。

脳ドックの発展により「脳動脈瘤」という言葉をよく耳にするようになりました。一般的に「ドックで動脈瘤が見つかった」という場合、コブ状の動脈瘤(嚢状動脈瘤)を指します。しかし、動脈瘤には血管そのものが膨らんでしまう「解離性脳動脈瘤」という動脈瘤もあります。昭和大学医学部脳神経外科学講座教授の水谷徹先生に解離性脳動脈瘤についてお話をうかがいます。

動脈瘤にはいくつか種類があります。ひとつは血管にコブができる嚢状動脈瘤で、もうひとつは血管自体が膨らんだ瘤になる本幹動脈瘤です。

脳の正常な動脈は内側から内弾性板、中膜、外膜という3層の構造になっています。中でも正常の内弾性板は、血圧600mmHgまでの圧に耐えることができる、動脈壁の一番強い構造です。また、必要に応じて内膜が一番内側に形成されます。基本的に内膜は血管に損傷が加わったときに、それを修復する組織であり、通常の動脈にはほとんど見られません。

内弾性板が大きく断裂し、この部分をエントリーとして「中膜」の中に血液が侵入する病態を「脳動脈解離」といいます。

そのうち瘤化するものが「解離性脳動脈瘤」です。脳動脈解離(解離性脳動脈瘤)の発生時には頭痛を生じることが特徴的です。解離性脳動脈瘤は、破裂するとくも膜下出血を引き起こします。また、動脈解離の部位からの分枝動脈の閉塞や、遠位部(動脈解離が起きた場所から離れた場所)に解離部位に生じた血栓が流れて動脈がつまって脳梗塞になることがあります。

解離性脳動脈瘤は、80~90パーセントが椎骨動脈に発生します。そのほか、脳底動脈、内頚動脈、前大脳動脈、後下小脳動脈、後大脳動脈、中大脳動脈などほとんどの主幹動脈に発生します。そして、これらの主幹動脈はくも膜下腔に存在するため、この解離性脳動脈瘤が破裂するとくも膜下出血を引き起こします。

解離性脳動脈瘤は、男性にやや多いのが特徴です。若い20代から高齢の60代まで発症年齢は幅広く、40代がもっとも多い年代です。くも膜下出血の原因としてみると、解離性脳動脈瘤は約3パーセントの割合を占め、年間30万人に1~2人の割合です。しかし、解離性脳動脈瘤は気づかないうちに自然組織治癒してしまうこともあるため、どれくらいの人に解離性脳動脈瘤が発生しているか正確にはわかっていません。

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