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脳卒中によって起こる障害とは―7種の障害はそれぞれどのようなもの?
脳卒中になってしまった患者さんは、「脳卒中とは―3種の脳卒中「脳出血」「脳梗塞」「くも膜下出血」とはどのようなものか」で説明したとおり、脳に障害が起こる場合があります。この障害は、具体的にどのよ...
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脳卒中によって起こる障害とは―7種の障害はそれぞれどのようなもの?

公開日 2015 年 07 月 13 日 | 更新日 2018 年 01 月 04 日

脳卒中によって起こる障害とは―7種の障害はそれぞれどのようなもの?
酒向 正春 先生

医療法人社団健育会 ねりま健育会病院

酒向 正春 先生

脳卒中になってしまった患者さんは、「脳卒中とは―3種の脳卒中「脳出血」「脳梗塞」「くも膜下出血」とはどのようなものか」で説明したとおり、脳に障害が起こる場合があります。この障害は、具体的にどのようなものなのでしょうか。引き続き、医療法人社団健育会 ねりま健育会病院の酒向正春先生にお話をうかがいました。

脳卒中における7つの障害

脳は前頭葉・側頭葉・頭頂葉・後頭葉などの大脳や脳幹、小脳など、場所によってさまざまな機能を持っています。そのため、どの部分で脳卒中が発生するかによって障害の程度や症状が変わってきます。
脳卒中における障害の代表的なものには、大きく分けて以下の7種類があります。

  • 意識障害
  • 麻痺・感覚障害
  • 言語障害
  • 嚥下障害
  • 高次脳機能障害
  • 精神障害
  • 半側空間無視

これらについて、以下に簡単に説明します。

意識障害

大脳や脳幹の広範な部分がダメージを負ってしまった場合は、意識障害が起こります。重度の意識障害が起こることにより、呼吸・循環・消化管・免疫系の状態などもすべてが悪化し、最悪の場合は命にまで危険が及ぶこともあります。

麻痺・感覚障害

大脳の運動野や錐体路の神経線維がある程度以上に冒された場合は、その反対側に麻痺が起こります。脳卒中の場合だと、脳損傷と反対側の片麻痺(片方の手足が麻痺すること)となることがほとんどです。これは上下肢の運動神経が延髄で交差するためで、延髄より上位での脳損傷は対側に片麻痺を生じます。一方、運動神経のすぐ背側に感覚神経が走っているために、片麻痺がある場合は、痺れ・感覚鈍麻などの症状を伴うことが多くみられます。
特に、感覚神経の深部感覚障害では体のバランスがとりにくくなり、重い後遺症を残すことにつながります。

言語障害、嚥下障害

言語障害もよくみかける脳卒中による障害の一つです。具体的には、言葉がうまく出てこなかったり、言葉が理解できなくなる失語症が代表的で左前頭葉や側頭葉の損傷で生じ、呂律が回りにくくなる構音障害は脳幹損傷時にみられます。また、嚥下障害(物がうまく飲み込めない)も、広範な大脳損傷や脳幹損傷でみられる典型的な脳卒中における障害のひとつですが、加齢や廃用でも進行しますので注意が必要です。

高次脳機能障害

また、高次脳機能障害というものも生じ得ます。高次脳機能障害とは、「物事に対して注意ができない」「記憶ができない」「思考ができない」「遂行することができない」「間違っていた場合にそれを修正できない」(間違いを気づかない・間違っていると分からないから修正しない)「学習できない」というように、大脳損傷により脳の高いレベルの機能がうまく働いてくれなくなるというものです。
たとえば、高次脳機能障害の患者さんは、土足で家にあがっても、それが悪いことだと分からなくなっている場合があります。

精神障害

大脳基底核や側頭葉・後頭葉などの損傷で精神障害が生じることもあります。精神障害とひとくちにいっても、鬱・暴力・せん妄(混乱状態)など、様々な形となって現れます。

半側空間無視

また、広範な大脳の損傷で見えているのに見えない・そちら側を気にしない「半側空間無視」という障害も起こります。
半側空間無視とは、どちらかの脳が障害を受けた際、受けた側の脳と反対側の空間を気にしなくなる症状のことです。具体的には、歩いている時など「目に入ったものは認識できるのだけれど、それが目の前にあることが分からなくて(気にしなくて)、ぶつかってしまう」という現象が起こります。たとえば、右の脳が障害を受けた場合は左側の空間を気にしなくなるため、左側にある障害物などを避けることができません。左無視の患者さんは左側に置かれた食事を食べ残してしまいます。

※左脳と右脳では障害を受けたときの症状が異なる

脳卒中における脳損傷が同じように起こっても、左脳と右脳には違った症状が現れてきます。

右脳は、私たちヒトが全体のバランスをとるための役割を果たしています。すなわち、右の脳がやられてしまうと、全体のバランスを取ることができなくなってしまうのです。全体のバランスが取れなくなると、本能的に色々なものごとに固執してしまうようになります。「これはダメですよ」と言ってもそれを止めることができず、衝動を抑制することもできず、学習することもできないため、何度注意しても同じ失敗を繰り返してしまいます。このため、中等度以上の右脳損傷の患者さんの治療は難しいと言えます。これを右半球損傷による劣位半球症候群と呼びます。

それに対して、左脳は計算や言語分野など、非常に高次で、限局的な機能を備えています。それゆえ、左脳が障害を受けてしまうと、言語障害(失語症)や失計算、失書などが起こります。このために、左脳に障害を持った患者さんは重症だと思われがちですが、右脳に障害を受けた患者さんと違い、全体のバランスは保たれています。そのため、左脳損傷の方は右脳損傷の方と対照的に、「学習」ができます。
言語障害は起こってしまうため、言語能力の低下は認められますが、非言語的な学習はできます。ですから、左脳に障害を持っている患者さんの方がリハビリテーションによって回復しやすいといえるでしょう。しかし、大脳が広範に損傷された場合は、左右に関わらず、重度な高次脳機能障害が生じ、回復は容易ではありません。

 

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1987年愛媛大学医学部卒業後、同大学脳神経外科学教室へ入局し、脳卒中治療を専門とする脳神経外科医となる。その後病気の治療のみならず、患者の残存能力を引き出し回復させていくことの重要性を感じ、2004年脳リハビリテーション医に転向。2012年より世田谷記念病院副院長および回復期リハビリテーションセンター長を務め、豊富な経験と深い知見から高い成果をあげている。またライフワークとして「健康医療福祉都市構想」を提言、超高齢化社会を見据え、高齢者や障害者、子育て世代を含めた全ての世代に、街でリハビリテーションに取り組める優しい街づくりに尽力している。2017年3月より医療法人社団健育会 ねりま健育会病院院長を務める。

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