脳卒中のリハビリテーションにおいては、急性期の治療直後から早期にリハビリテーションを開始することが重要です。しかし、多くの患者さんはその後もさらに継続的な治療とリハビリテーションが必要となります。牧田総合病院は脳卒中の患者さんに対する急性期の治療だけでなく、その後のリハビリテーションや再発予防まで含めたトータルケア・システムで注目を集めています。牧田総合病院の理事長であり脳神経外科部長の荒井好範先生に、蒲田分院で行っている回復期リハビリテーションのお話を中心にうかがいました。
牧田総合病院では、蒲田にある分院で回復期リハビリテーションを行っています。脳卒中で大森の本院に運ばれた患者さんは、早ければ2週間前後で蒲田分院に移っていただくことができます。患者さんの状態によって1~3ヶ月、回復期リハビリテーション病棟でじっくりとリハビリテーションに取り組んでいきます。
医師は大森本院と蒲田分院を行き来していますし、リハビリテーションのスタッフも情報を共有化しています。回復期リハビリテーション病棟で3ヶ月ほどリハビリテーションを行なった後、患者さんが在宅で外来に通っていただくようにセッティングしていきます。これらが一連の流れの中で行なえるということが大切です。
蒲田分院では外来でのリハビリテーションは行っていないため、外来でのリハビリテーションでは、患者さんに大森の本院へ来ていただいています。また、訪問リハビリテーションや訪問診療も実施していますので、外来でのリハビリテーションに通院できないほど後遺症が重い方は、訪問リハビリテーションのチームに引き継いでいきます。
たとえば、訪問診療を行なう在宅療養支援病院「牧田総合病院 蒲田分院 訪問診療室」では、神経内科の医師が看護師と一緒にご自宅にうかがい、そこで血圧コントロールなどを行ないます。また、訪問看護をおこなう「牧田訪問看護ステーション(大森本院)」では訪問リハビリテーションを受けることが可能です。
このほか、蒲田分院のデイケア部門である通所リハビリテーション施設「牧田デイケアリハビリセンター」もあります。もう少し継続してリハビリをしたいという方は「牧田デイケアリハビリセンター」に通ってデイケアを受けていただくか、大森本院の外来のリハビリテーションを受けていただくことになります。
多くの患者さんには、継続した治療とリハビリテーションが必要となります。それはなぜかというと、やはり後遺症のためにひとりで生活できない、あるいはある程度はひとりでできても補助が必要になるという状況があるからです。ご家族だけでは介助しきれない場合もありますし、患者さんの置かれている状況は人それぞれですので、どのような形であれば家で生活できるかという、それぞれの方に応じたサポートが必要となります。
たとえばがんなどであれば、手術を行いある程度元気になればサポートがなくても生活できるかもしれませんが、脳卒中の場合は多くの方に後遺症が残ります。そのため、ハンディキャップを持った方がいかに社会で生活していくかということを、病院が中心となってフォローしていくということが求められます。
介護保険のサービスを受けるにも申請が必要ですし、退院したからといって何もかも自力でやっていただくというのは難しいでしょう。そういったサポートも病院が主導で行い、患者さんが自宅に戻るときにはしっかりとバックアップのプランを立てて、いわゆる在宅設定をしてさしあげるということが大切です。
急性期病院の役割は本来、急性期の治療だけなのですが、そこで終わってしまうと患者さんがその後どうされているかということがわかりません。我々の医療はそこで終わるのではなく、その後もサポートしていくという「トータルケア・システム」です。地域に根づくためには急性期にとどまらない治療の継続が求められますし、介護との融合も必要となります。我々はそういうスタンスで地域医療に取り組み、それが牧田総合病院を中心としたグループ全体の基本方針として貫かれています。
脳卒中は高齢になるほどリスクが高くなるとされています。しかしその内訳をみると、脳梗塞を発症する方が高齢者中心であるのに対して、脳出血は30代、40代の方が発症する例も珍しくありません。
脳の血管に何らかの障害が起こり、ある日突然に発症する脳卒中。手足の麻痺症状や筋肉の硬直などの後遺症に直面し、「もう自分は職場に戻れないのではないか」と悩んでしまう就業中の患者さんも多数おられます。
最近ではカテーテル治療などが発達し、もし脳卒中を発症してもすぐに亡くなってしまうことが少なくなりました。しかしその代わりに、後遺症に苦しむ患者さんも少なくありません。
社会医療法人財団仁医会 牧田総合病院 理事長
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