インタビュー

医療と介護の融合、地域包括ケアシステムの実現

医療と介護の融合、地域包括ケアシステムの実現
荒井 好範 先生

社会医療法人財団仁医会 牧田総合病院 理事長

荒井 好範 先生

この記事の最終更新は2016年04月05日です。

国が提唱する地域包括ケアシステムを推進するため、牧田総合病院では同一法人内に急性期病院と介護・福祉部門を包含しているという強みを生かし、医療と介護の融合を目指しています。またそれと同時に、周辺の介護施設との連携を密にすることで、より地域に密着した医療を提供しています。社会医療法人財団仁医会 牧田総合病院の基本理念であるトータルケア・システムについて、理事長であり脳神経外科部長の荒井好範先生にお話をうかがいました。

医療と介護の間には、いまだに一定の距離があります。介護の側も医療に対しては一歩引いてしまっているところもあり、医療の側も介護のことを十分理解できているとはいえません。

我々はそのような状態を解消するため、医療と介護が一緒になっていくのが「地域包括ケアシステム」なのではないかと考えます。予防的側面からみれば、本来はその輪の中に、病院に通っていない元気なときから入っていただくということが望ましいでしょう。そして具体的に医療と介護の融合を推進するには、やはり我々のような急性期病院がある程度主体的に関わっていくべきであると考えたのです。

もちろんそれは決して容易なことではありません。それぞれが別の法人であれば理念も考え方も当然異なります。しかし我々は社会医療法人財団仁医会というひとつの法人の中で、牧田総合病院を中心に介護分野を融合できるという強みがあります。

牧田総合病院の大森本院と同じ敷地内には、大田区からの委託業務として運営している地域包括支援センター「さわやかサポート入新井」があります。認知症の患者さんが本院に来られると、帰りにこの「さわやかサポート入新井」に立ち寄ってすぐに介護保険の申請をしていただくことができます。その際、こちらから担当者に電話で連絡を入れておくことでスムースに手続きができます。

我々のトータルケア・システムはこういった小さなことの集まりを実践しています。ちょっとしたことの積み重ねが、地域包括ケアシステムにおける我々の役割ではないかと考えています。(※関連リンク:大田区地域包括支援センター「さわやかサポート入新井」

地域包括ケアシステムの推進には、行政の担当者とのパイプを太くしていくことも重要ですし、ケアマネージャー同士の交流も必要です。顔見知りで気心が知れた関係であれば、患者さんの情報を密にやり取りすることもできますから、やはり介護分野の業種の人たちとも良好な関係を築いていくことが大切であると考えています。病院は敷居を高くしてはいけないというのが我々のモットーです。

有料老人ホーム・特別養護老人ホーム・介護老人保健施設など、周辺の施設との連携も非常に重要です。単に提携病院という名前だけの関係ではなく、入所者の具合が悪くなったら必ず受けるという関係が大切です。

名ばかりの提携病院がいくつもあったとしても、実際には認知症の患者さんは引き受けてもらえないなど、施設側では現状、本当に困っています。ですから、我々はブラックリストならぬホワイトリストというものを作って、その施設からの患者さんは必ず受け入れるようにしています。

施設との提携には病院側にもメリットがあります。たとえば独居の患者さんが急に具合が悪くなって病院に運ばれてきた場合、いったん良くなられても誰もいない家に戻っていただくのはなかなか難しい面があります。しかし、介護施設であれば、ある程度ADL(日常生活動作)が低下していてもそこで生活していただくことができます。

施設では今、「看取り」の問題に直面しています。すべて頑張って治療するだけが医療ではありません。今後は病院としても、看取りの終末期医療にどう関わっていくかという点が大切であると考えます。

当院が提携している施設の場合、その施設のスタッフの方に来ていただき、ソーシャルワーカー・主治医・ナースと一緒に話し合いをします。患者さんやご家族の要望をお聞きしたうえで、今後どうするかということを決めていきます。

やはりそれは施設と密につながっていなければできないことです。面識のない人同士ではそういったデリケートな核心の部分について話をすることは難しいでしょう。そういう話がきちんとできる密な関係を作っていくということが地域に根ざした医療には必要なのです。

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