これまで、患者さんと医療スタッフが機械を使用せず(徒手的に)行っていたリハビリテーションの場に、サポートする役割を持つロボットが導入されています。リハビリテーションロボットは、運動訓練や日常生活の補助などさまざまな場面で活用されており、高齢化社会の到来に向けてさらなる普及が期待されています。
今回は、脳卒中や脊髄損傷のロボットリハビリテーションについて、秋田大学医学部整形外科教授 島田洋一先生にお伺いしました。
ロボットリハビリテーションは、ロボットを活用するリハビリテーション手段です。さまざまな場面で導入されており、主な用途は4つのカテゴリに分けられます。
脳卒中や脊髄損傷のリハビリテーションでは、「身体機能アシスト」と「リハビリテーショントレーニング」の機能を持つ、患者さんの自立を支援する(自立支援型の)ロボットが活用されています。
脳卒中や脊髄損傷の患者さんに対する自立支援型ロボットを活用したリハビリテーションは、従来の理学療法士*が徒手的*に行うリハビリテーションと比べて2つの特徴があります。
理学療法士…医学的リハビリテーション専門職。基本的な身体機能の回復をサポートする。
徒手的…機械や物理器具を用いないこと。
ロボットリハビリテーションでは多くの訓練をこなすことができます。ロボットは人の力と比べて長時間にわたりアシストを続けることが可能なためです。
そのためロボットリハビリテーションは、症状が現れて間もない急性期*の患者さんだけでなく、発症から6か月以上が経過してリハビリの効果が反映されにくくなった維持期(慢性期)*の方にも効果的な場合があります。
急性期…病状が不安定で緊急性を要する期間。
維持期(慢性期)…病状が安定している時期。
リハビリテーションロボットのもう1つの特徴は多様なアシスト機能です。人の手では段階調節が難しいような細かい動作システムをあらかじめ設定したり、患者さんの状態に合わせて訓練の負荷を調整したりすることで、さまざまなニーズに応えます。
リハビリテーションロボットには下記のような種類があります。
上肢(じょうし:腕や手)を補助するもの
下肢(かし:足)を補助するもの
上肢のトレーニングをするもの
下肢のトレーニングをするもの
装具型のリハビリテーションロボットは、装着したまま起立・歩行ができるという特徴があります。装着することで、身体機能の改善を促したり運動を補助したりします。
据え付け型のリハビリテーションロボットは、室内に据え付けて使用することが特徴です。装具型のリハビリテーションロボットと比べて、床に据え付ける分、安定した練習量を確保することができます。モニターを併用し、自分の様子を確認(フィードバック*)しながら訓練したい場合に適しています。
フィードバック…客観的な事実をそのまま認識すること。
ロボットリハビリテーションの対象となる代表的な疾患は脳卒中(脳の血管がトラブルを起こす疾患)です。その他、筋力低下や麻痺、脊髄損傷などが生じていて日常動作が困難な方のリハビリテーションに活用されています。
リハビリテーションロボットは、1990年代初期に初めて脳卒中の患者さんを対象として導入されました。そのとき使用されたリハビリテーションロボットの訓練効果から、脳卒中の患者さんに対して急性期から慢性期まで効果的であることが証明されました。[注1]
注1:「Technology and Health Care-Volume7,issue 6」1999
日本では高齢化社会の到来に伴い、リハビリ需要が増加しています。高齢層では脳卒中や骨関節疾患などが原因で寝たきりの生活を送っている方が多く、そうした患者さんにとって、運動機能の改善にはリハビリテーションが欠かせません。
しかし高齢者が急増すると、従来の療法士によるリハビリテーションだけでは医療資源*的にニーズに応えることは難しくなります。そこでロボットリハビリテーションは、より一層の活用が期待されています。
医療資源…医療関係者、医療機関など、医療に欠かせない資源。
上肢(手や腕)の機能をアシストするロボットには、食事支援ロボットなどがあります。食事支援ロボットは、食べ物を掴んだり口に運んだりする機能により食事をサポートします。日本人の食生活に合わせて、ご飯やおかずなどさまざまな食品が掴めるように対応しているものもあります。
下肢(脚の部分)の機能をアシストするロボットには、歩行アシストロボットやパワーアシストロボットなどがあります。
歩行アシストロボットは、着用することで歩行機能のアシストや拡張を行います。
医療用の下肢タイプは主に歩行トレーニングを補助します。なかには歩行のリズムや歩き方を確認するためのサポートを行い、よりよい歩行を促すものもあります。
パワーアシストロボットは、スーツ型のものがあります。空気を入れて動かすことで人工筋肉の役割を果たし、重いものを持ち上げる際の体の負担などを軽減します。
上肢のリハビリテーショントレーニングを行うロボットは、脳卒中などにより上肢が麻痺している方を対象としています。たとえば、下記のような機能をもつロボットが登場しています。
など
下肢のリハビリテーショントレーニングを行うロボットは、脳卒中などにより下肢が麻痺している方を対象としています。ロボットのなかには、早歩き、小股大股など歩き方を調整したり、訓練中の心拍数を計測して患者さんにかかる負荷を調節したりすることが可能なものがあります。
また、体を吊り下げるようにして支えるなど、安全にリハビリテーションを行えるように工夫されているものがあります。
秋田大学大学院 整形外科外科学講座 教授
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