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カテーテル治療の適応拡大とリスク
カテーテル治療のおもな対象は脳卒中ですが、すべての脳卒中の患者さんにカテーテル治療が行われるわけではありません。しかし、神戸市立医療センター中央市民病院の坂井信幸先生は、より多くの脳卒中の患者さ...
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カテーテル治療の適応拡大とリスク

公開日 2016 年 02 月 13 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

カテーテル治療の適応拡大とリスク
坂井 信幸 先生

地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科部長 脳卒中センター長/先端医療センター 脳血管内治療科部長、脳神経領域研究グループディレクター

坂井 信幸 先生

カテーテル治療のおもな対象は脳卒中ですが、すべての脳卒中の患者さんにカテーテル治療が行われるわけではありません。しかし、神戸市立医療センター中央市民病院の坂井信幸先生は、より多くの脳卒中の患者さんがカテーテル治療を受けられるよう、また、より多くの専門医がカテーテル治療を行えるよう、日々チャレンジしています。専門医の育成、治療適応の拡大についてお話をうかがいます。

適応の拡大

急性脳卒中に対してカテーテル治療を行う際には、「発症から6時間~8時間以内である」という決められた条件があります。しかし、その条件の範囲をもっと広げるためにチャレンジが続けられています。たとえば、朝起きたときに脳卒中になっていた場合、発症した時間は「前の晩」としかカウントできないことがあります。このような場合は、画像診断を組み合わせて発症時間を分析するなど、今まで適応できなかった症例でもカテーテル治療が可能になるよう臨床データを積み重ねています。

脳動脈瘤への血管内治療も大きな変貌を遂げつつあります。離脱型コイルを脳動脈瘤内に詰め込んで破れなくするために、入り口を柔らかいステントで支える治療に続いて、今度は目の細かいステント(フローダイバーターと呼ばれます)を留置してコイルを入れずに脳動脈瘤を閉塞させようとする治療が始まりました。これによりこれまで治療ができなかった大きくて不規則な形状の脳動脈瘤もカテーテル治療の対象になってきました。

カテーテル治療の専門医

現在、脳のカテーテル専門医は年間およそ100人誕生しています。さらに、できる限りその技術を均霑化(きんてんか=地域格差なく全国どこでも医療を受けられるようにすること)できるよう、専門医は日々トレーニングを積んでおり、学会や指導的立場の医師がセミナーをあちこちで開催しています。現在では、技術によるリスクの差は以前ほどはないといっても過言ではありません。

また、医療器具が進歩することの利点として、特別なドクターだけでなく、多くのドクターが同じ治療を行えるようになることもあげられます。本来治療には「誰がやるか」という問題がないことが理想です。今後は、カテーテル治療をどのような場合に行うか、どのような患者さんに行うかの選択が重要になっていくでしょう。

カテーテル治療のリスク

以前は、カテーテル治療において一番問題視されていたのが脳出血(治療をしたことによって患部の血管が破れること)のリスクでした。TPA(※)とカテーテル治療を組み合わせることによって実際に脳出血は増えましたが、これは治療の延長上で起こる現象で、診断が正確になった今では激減しました。医療器具が進歩し血管を痛めなくなったためと血栓を溶かす薬を使わなくなったためです。CTやMRIで脳のダメージを事前にチェックし、血栓を機械的に回収するようになったためです。治療法の進歩によりリスクが大幅に軽減されたため、「TPAを使わずにカテーテル治療を試みるべき」、「予後の見込みにかかわらず積極的なカテーテル治療を推奨するべき」という極端な意見もあるほどです。

※TPA…血栓溶解剤。できた血栓を溶かす薬。新鮮な血栓を溶かして血流を再開させることで機能障害を残さずに回復することが期待できるため、脳梗塞などで使用されることが多い。

リスクに対する考え方

治療に伴うリスクは、どんな選択肢をとっても「ゼロ」になることはありません。たとえば、専門医が未破裂脳動脈瘤に経過観察(血圧管理、禁煙指導などを含む)・開頭手術・カテーテル治療のどれかを選択するとき、いずれもリスクはほぼ同等という場合が少なくありません。どの治療法にも、同じ程度のリスクの可能性はあると考えるべきです。それに、もしどれかが格段に優れていてその他が格段に劣っていた場合は、ひとつの治療法だけが採用され発展してきたはずです。つまり、動脈瘤が見つかった場合「経過観察で何も治療しないリスク」と「治療をして合併症が発生するリスク」の2つはいつも同等に存在するということです。

さらにいえば、動脈瘤が見つかったことが患者さんにとって本当によかったかどうかは、実は哲学の問題とさえいえます。見つかったことを悩まなければなりませんし、見つかったがために予防的医療を受けて合併症が起こるかもしれません。知らないほうがよかったかもしれないのです。そもそもその人にとって検査が必要だったのか、そこまで立ち戻って考える必要があるかもしれません。アメリカのガイドラインでは、無症状の患者さんが頚動脈超音波検査を受けて頚動脈狭窄症が見つかって、頚動脈内膜剥離術という外科手術を受けるきっかけになり、脳卒中を予防するメリットより手術で後遺症を背負うデメリットが多く、検査を受けることは勧められないと記載されているほどです。

動脈瘤が「一生破れない」かもしれないと考えれば何もしないことが一番です。しかし、破れる脳動脈瘤は確実に存在します。破れるかもしれないから予防的医療を行うのであり、そのために専門医が必要とされます。医師は、どの治療法ならば一番リスクが低いか、どの治療法ならば一番受け入れやすいかを考慮し、患者さんごとに治療方針を決定します。ですから、動脈瘤が見つかったことを前提にいうならば、「あなたのリスク」に関して、標準的なことをわかりやすく説明してくれる専門家を、できるだけはやく見つけできるだけ早く訪れていただきたいと思います。

 

脳卒中の急性期治療、脳動脈瘤治療のエキスパート。脳血管内治療が始まり当初から難治性の病気にも果敢にチャレンジし、ステント治療を日本で初めて導入するなど脳卒中治療の技術を飛躍的に発展させる。専門技術が分かれてしまいやすい日本において、血管内治療、外科開頭手術の両方を年間300例以上おこなう数少ないドクター。一般向けの脳卒中に関する講演やセカンドオピニオンをおこなうほか、カテーテル専門医の認定や技術指導など後進育成にも力を入れる。

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