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脳梗塞に対する治療の選択肢-t-PA静注療法と脳血管内治療とは?

脳梗塞に対する治療の選択肢-t-PA静注療法と脳血管内治療とは?
内田 和希 先生

医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 脳神経外科 主任医長

内田 和希 先生

髙田 達郎 先生

医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 脳卒中センターセンター長/脳血管内科主任部長

髙田 達郎 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年06月28日です。

脳卒中の中でももっとも発症数が多いといわれている脳梗塞。脳梗塞とは、脳の血管がつまることで血流が行き渡らなくなり、脳の神経細胞が死滅してしまう病気です。脳梗塞が起こると、時間の経過と共に徐々に脳の組織が死滅していくため、後遺症を残さない、あるいは軽度で抑えるためには、早期の治療が大切になります。

今回は、手稲渓仁会病院で脳卒中の治療に携わっていらっしゃる髙田達郎先生と内田和希先生に、脳梗塞に対する治療の選択肢と、早期治療に対する同病院の取り組みについてお話しいただきました。

脳梗塞とは、脳の血管がつまることで血流が行き渡らなくなり、脳の神経細胞が死滅してしまう病気です。脳の細胞は、完全に死滅してしまうと再生することができないため、脳梗塞を発症すると半身麻痺などの後遺症が現れることがあります。

脳梗塞の後遺症は、障害された脳の場所や大きさによって異なります。脳細胞が死滅し障害された場所が大きくなるほど、後遺症も重くなることが分かっています。脳梗塞が起こると、血管がつまることによって脳に酸素が行き渡らなくなり、脳の組織が死滅する範囲が広がっていきます。そのため、後遺症を残さない、あるいは軽度で抑えるためには、早期の治療が大切になります。

脳梗塞の治療法には、主にt-PA静注療法と脳血管内治療があります。

t-PA静注療法とは、血栓(血の塊)を強力に溶かす効果が期待できる薬を点滴によって全身に投与することで、血栓でつまった血管を再開通させる治療法です。t-PA静注療法は、日本では2005年に保険適用となりました。比較的大きくなっていない血栓を溶かすのに適した治療法と考えられており、発症から4時間半以内の治療が推奨されています。

t-PA静注療法による再開通の様子
t-PA静注療法による再開通の様子

脳血管内治療とは、足の付け根から血栓でつまった血管までカテーテルを挿入し、そのカテーテルで血栓を回収する治療法です。ステントという網状の筒を血栓の中で広げて回収したり、カテーテルで吸引して回収したりする方法があります。

脳血管内治療の例
脳血管内治療の例

なお、脳血管内治療は、t-PA静注療法より適応時間が長く、発症から24時間以内までに行うことが可能です。

t-PA静注療法は、発症からできるだけ早い時間での治療が推奨されています。発症から4時間半を超えると脳が壊死(えし)する範囲が大きくなり、脳出血を起こす危険性が高くなるため、治療の効果が期待できなくなります。そのため、病院に到着してからも1時間以内の治療開始が推奨されています。t-PA静注療法は高い効果が認められており、早期に受けることができれば脳梗塞の改善が期待できます。

点滴

t-PA静注療法は、比較的小さな血栓に対してより有効だと考えられる治療法です。大きな血栓には、t-PA静注療法のみで完全に血栓を溶かすことは難しい場合が多いのが現状です。海外では、より血栓溶解の効果が高いとされる薬も研究されています。

その一方、t-PA静注療法の適応は慎重に判断する必要があります。これまでかかったことのある病気や、患者さんの状態、血液の値などによっては、t-PA静注療法の合併症で重症化する可能性があるため、実施することができないと定められているからです。

t-PA静注療法は高い効果が認められている一方、出血しやすくなる危険性もあります。脳梗塞によってつまった血管の血流が再開すると、もろくなった血管の壁が破れて出血してしまうことがあるのです。脳以外にも、肺などの臓器出血を起こすことがあります。脳出血を起こして重症化すると、命にかかわるケースもあるため注意が必要といえます。

脳血管内治療は、太い血管にできた大きな血栓に対して行われることが多い治療法です。お話ししたt-PA静注療法を行っても血栓のつまりをとることができない場合、カテーテルが届く場所に血栓があれば、脳血管内治療を行うことがあります。

脳血管内治療で使用する医療器具には、さまざまなものがあります。たとえば、血栓を絡め取るものであったり、血栓を吸引したりするものなどがあります。患者さんの血栓の大きさやつまっている場所などを考慮し、患者さんにより適した医療器具を使用しています。

お話ししたt-PA静注療法と脳血管内治療のうち、どちらの治療法を選択するかは、それぞれの患者さんの状態によって異なります。どちらか一方の治療のみを行うこともあれば、両方行うこともあります。その判断の参考としては、発症からの時間、つまった血管の太さ、年齢、出血性素因などがあります。

たとえば、太い血管には大きい血栓がつまるケースが多く、t-PA静注療法では完全に溶かすことが難しいためカテーテルでの治療を追加することが多いです。また、発症から4時間半を経過してしまうと、t-PA静注療法を行うことはできないため、カテーテルでの治療を行います。

一方、高齢者では、動脈硬化で血管が蛇行しており、脳血管内治療が難しい場合もあります。

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