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脳卒中治療の歩み-今後の治療では、どのようなことが期待されているのか
脳卒中には、脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の血管が破れて脳内に出血する脳出血や脳の表面にあるクモ膜下腔に出血するクモ膜下出血などがあり、平成25年における日本人の死因第4位となっています。ただ一命を...
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脳卒中治療の歩み-今後の治療では、どのようなことが期待されているのか

公開日 2015 年 12 月 04 日 | 更新日 2018 年 04 月 12 日

脳卒中治療の歩み-今後の治療では、どのようなことが期待されているのか
田口 明彦 先生

先端医療振興財団 先端医療センター 再生医療研究部 部長

田口 明彦 先生

脳卒中には、脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の血管が破れて脳内に出血する脳出血や脳の表面にあるクモ膜下腔に出血するクモ膜下出血などがあり、平成25年における日本人の死因第4位となっています。ただ一命を取り留めたとしても後遺症が残ることも多く、患者さんやご家族の生活を大きく変えてしまう病気で、現在でも寝たきりの原因の第1位です。そのため脳卒中を起こさないように生活習慣に気をつけ、薬を服用されている方も多いのではないでしょうか。しかし、それでも脳卒中を発症してしまった場合、どのように治療するのでしょうか。公益財団法人 先端医療振興財団 先端医療センター研究所 再生医療研究部 部長を務めておられる田口明彦先生は、脳卒中後の機能回復治療に関する研究のトップランナーでいらっしゃいます。本記事では、脳卒中治療の歩みと歴史についてお話しいただきました。

脳卒中治療の歴史

厚生労働省によると、平成25年1年間の死因別死亡総数のうち、脳血管疾患は11万8,347人で全体の9.3%を占め、死因の上位から4番目という結果になりました。脳血管疾患で亡くなった方のうちの60%、およそ7万人の方が脳梗塞で命を落としています。また一命を取り留めたとしても、後遺症である麻痺が残り、寝たきりになってしまう場合も少なくありません。脳卒中治療のターゲットとして、脳卒中発症予防や超急性期における血栓溶解療法などによる神経細胞死の防止だけでなく、脳卒中になって麻痺が出現した後の神経機能回復促進治療も注目され始めています。

1950年ごろより約30年間、脳卒中は日本人の死因の第1位でした。1960年頃より脳卒中発症の最大のリスク因子である高血圧に対する治療が広くおこなわれるようになり、脳卒中の発症を一定以上抑制することが可能になりました。また、脳梗塞発症直後に閉塞した血管を再開通させ、神経細胞死を防止する血栓溶解薬(t-PA)が2005年に日本でも認可され、さらに2010年にはカテーテルで脳血管を閉塞している血栓を除去する血管内治療も認可されており、脳卒中直後の超急性期において神経細胞死を防ぐ治療法も進歩しています。

ただし、t-PA治療は脳梗塞発症4.5時間以内、また血管内治療は発症8時間以内の患者さんだけが対象であり、またこれらの治療は出血等大きな副作用をひき起こすこともあるため、治療に際しては満たさなければならない条件が多く、全ての脳卒中患者のうち数%の患者さんだけがこれらの治療を受けているのが現状です。そのため、90%以上の脳卒中患者は脳卒中を発症しても血栓溶解薬や血管内治療などの超急性期治療を受けることができず、神経細胞の壊死により多くの患者さんに運動麻痺や失語症などの障害が残っています。降圧剤による脳卒中予防や超急性期治療の進歩にもかかわらず、今なお脳卒中は寝たきり原因の第1位であり、今後は神経細胞が壊死してしまった患者さんの神経機能再生治療が切望されています。

かつては「神経細胞は一度死んだら再生しない」というのが常識であった

ノーベル生理学・医学賞を1906年に受賞したスペインの偉大な神経解剖学者サンティアゴ・ラモン・イ・カハールは、脳に関して「成熟した脳では神経の経路は固定されていて変更不能である。あらゆるものは死ぬことはあっても再生することはない」と断言し、このカハールの呪縛はその後神経再生に関する研究を約1世紀にわたり抑圧してきました。しかし、20世紀の末頃より、成人の脳においても神経幹細胞が存在すること、さらに哺乳動物の中枢神経も機能的な意義を持った再生が可能であることが証明され、脳卒中など中枢神経障害後の機能再生に関する研究開発競争が、世界各国で開始されました。

神経機能再生には血管再生が重要である

神経機能の再生に関しては、神経細胞の元となる神経幹細胞を脳に移植することがまず考えられます。しかし、私たちも実験動物でさまざまな種類の神経幹細胞移植の実験を繰り返し行ってきましたが、ほとんどの移植細胞は生着しないあるいは脳機能の再生に必要な神経細胞としては分化しないため、治療効果が観察されませんでした。さらに海外での脳卒中患者への神経幹細胞移植治療でも否定的な結果が相次いで報告されました。そこで私たちは外からの神経幹細胞移植とは違う方法で神経機能再生を促そうと考えたのです。

その当時知られていたのが、脳卒中後にはたくさんの神経幹細胞が誘導されるということでした。皮膚が傷つくと皮膚の幹細胞が活性化され皮膚の傷が治ります。脳も同様で、脳卒中を起こすと神経幹細胞が活性化されて脳を修復しようとしているのです。しかしその神経幹細胞の99%以上が、脳に生着せずに死んでしまうことも知られていました。そこで、脳の修復に重要な神経幹細胞がせっかく脳内に出ているのだから、それらを活用すればよいと考えたのです。

そこで私たちが取り組んだ課題は、脳卒中により誘導された神経幹細胞を脳に生着させ、しっかりとした神経細胞に分化させる方法です。(分化= 単一なものが進歩・発展するにつれて複雑に分かれていくこと)これを解決する方法が次の記事で述べる血管再生だったのです。(参照「血管再生が神経再生を促進する」

脳卒中の先端治療(田口明彦先生)の連載記事

米国コロンビア大学、国立循環器病研究センターを経て、現在は先端医療振興財団 先端医療センター 再生医療研究部の部長を務める。脳卒中後の機能回復治療に関する研究のトップランナーであり、世界に先駆けた研究に取り組んでいる。「脳梗塞による寝たきりの患者さんを減らしたい」という強い想いのもと、日本のみならず世界における脳卒中治療を大きく牽引している。

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