皮膚の傷の治癒には3つのステップがあることをご存知でしょうか。実はこれは脳でも同様で、脳梗塞治療では3つのステップに合った効果的な治療を行うことが重要だと考えられています。本記事では、この3つのステップについてこれから脳梗塞治療がどのように進歩していくのか、公益財団法人 先端医療振興財団 先端医療センター研究所 再生医療研究部 部長の田口明彦先生にお話しいただきました。
がんの治療は近年めざましく進歩しています。がんの治療については「建物を壊す」ことをイメージしていただければと思います。建物を壊すという目的だけを考えるのであれば、ショベルカーを用いても、炎で燃やしてもそれは達成されます。それと同様でがん細胞を壊すには薬剤や放射線、あるいは外科的に取り除いてもよく、壊すという目的のためにさまざまな方法が選択できます。しかし脳梗塞後の神経細胞の再生は「建物をたてる」イメージです。建物をたてるためには土台、骨組み、外壁、屋根など、多くのステップを踏むことになります。神経細胞の再生もステップを踏んで行う必要があるのです。
皮膚の傷の治癒と同様に脳の再生には3つのステップがあります。皮膚の傷の治癒を例に挙げてご説明します。
これら3つのプロセスがスムーズに移行されれば傷が治癒します。
繰り返しになりますが、これと同様のステップ(炎症期・増殖期・成熟期)が脳梗塞後の脳にも起こっています。しかし脳梗塞の場合は以下のイラストの点線のように、炎症期は強い反応がおこるものの、増殖期と成熟期があまり活発に行われていないのです。血管再生に重要である増殖期の立ち上がりが弱い(=活発でない)ことで、成熟期も活発に行われません。この増殖期の立ち上がりを高める方法が、私たちが現在研究している造血幹細胞移植なのです。
現在世界各国では、脳卒中後の神経再生の促進に向け、私たちが実施している増殖期における造血幹細胞移植だけでなく、炎症期の免疫細胞のコントロールを目的とした間葉系幹細胞移植、さらには成熟期における神経栄養因子の補充を目的とし骨髄由来幹細胞移植など、幹細胞を用いた臨床試験が行われています。さらに全ての時期での最適な治療を合わせて行えば、脳梗塞後の機能再生を最大限に促進できると考えられており、それに向けた研究開発も進められています。
脳梗塞治療法開発には、今まではなかなかうまく進んできませんでした。しかし、カハールの呪縛をはじめ、多くの問題点も解決されつつあります。脳梗塞後の3つの時期に対して様々な臨床試験も始まっていますので、今後は、脳卒中後の機能再生を促進する新しい治療法がどんどん開発されることが期待されています。
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