脳梗塞は発症の仕組みによっていくつかの病型(タイプ)に分けられます。それぞれのタイプごとに治療方法が異なり、薬物治療で使われる薬の種類も変わってきます。東海大学医学部付属病院神経内科領域主任教授・診療科長であり、東海大学総合医科学研究所の所長を務めておられる瀧澤俊也先生にタイプごとの脳梗塞の治療についてお話をうかがいました。
脳塞栓症は脳の外から流れてきた血栓が脳の血管に詰まって起こります。心原性脳塞栓症の主な原因は、不整脈(心房細動)・心筋症・心臓弁膜症・洞不全症候群といった心臓の病気です。心房細動とは心臓の拍動が不規則になる不整脈の一種ですが、男女ともに加齢とともに増加しています。脳梗塞の患者さんでは、70歳以上の4人に1人が心房細動を合併しており、心房細動がある人は脳梗塞の再発率も高くなります。
心原性脳塞栓症(左房内血栓)の原因となる血栓は、静脈にできる血栓と同様に血流のうっ滞したところでゆっくりとできるので、フィブリンという成分が主体となった血栓を形成します。このような血栓に対する治療としては抗凝固薬が有用です。しかしワルファリンカリウムによる従来の抗凝固療法には以下のさまざまな制限があり、使用の煩雑さを伴います。これは医療関係者のみならず、患者さんやその家族にとっても負担となる場合があります。
NOACsと呼ばれる新しい経口抗凝固薬はワルファリンカリウムとは異なるしくみで血液の凝固を阻害します。血液の凝固にはさまざまな因子が関係していますが、なかでも第VII因子は頭蓋内の止血にかかわっています。血管が破れたところでは、血管外に存在するTF(組織因子)に第VII因子が結合することで凝固反応が起こって出血が止まります。
この第VII因子の役割を踏まえると、直接トロンビン阻害薬や第Ⅹa因子阻害薬であるNOACsは第VII因子を抑制しないため、頭蓋内出血リスクが低いと考えられます。一方、ワルファリンカリウムは第VII因子を抑制するため、頭蓋内出血リスクはNOACよりも高いと考えられます。つまり、頭蓋内では第VII因子に対する作用の違いが出血リスクの差につながるといえます。
ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞は、脳の血管が動脈硬化で狭くなって起こります。動脈硬化の原因は高血圧・喫煙・糖尿病・脂質異常症などです。頸動脈エコー(超音波検査)によって血管の狭窄(きょうさく・狭くなること)のようすを調べることができます。また、MRI(磁気共鳴画像)で血管のプラークそのものを映し出すこともできるようになりました。動脈硬化による血栓は、狭くなった動脈の血流がはやいところでできるため、活性化凝固因子の濃度が血流によって低くなります。このため静脈でできるようなフィブリン主体の血栓ではなく、血小板主体の血栓が形成されます。したがって、治療としては抗血小板薬が有用です。
高血圧・脳梗塞・心筋梗塞・血管狭窄・睡眠時無呼吸症候群・脂質異常症・糖尿病・炎症などによって血小板が活性化するため、この活性化を抑制することが治療の鍵となります。そのためにはチクロピジンやアスピリンなど、それぞれ違う働きによって血小板の活性化を抑制する薬を組み合わせて使います。
抗血小板薬による薬物治療で十分に改善しない場合は、外科治療も行なわれます。頚動脈内皮剥離術(CEA)という手術によってプラークを除去する方法と、血管内にステントを置いて狭窄部分を広げるステント留置術(CAS)があります。頸動脈のステント留置術は私たち神経内科のほかにも脳神経外科、循環器内科でもそれぞれ治療が可能です。
神奈川リハビリテーション病院 脳神経センター長、東海大学 医学部内科学系神経内科学 所属主任教授、東海大学総合医科学研究所 所長
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