はいようしょうこうぐん

廃用症候群

最終更新日:
2024年10月16日
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2024/10/16
更新しました
2018/12/14
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概要

廃用症候群とは、病気やけがで長期間にわたり過度に安静にすることで活動性が低下し、心身のさまざまな機能が低下した状態です。

廃用症候群の症状は多岐にわたり、筋肉の衰えや関節の拘縮(こうしゅく)(硬くなること)、骨萎縮(骨が脆くなること)、心肺機能の低下のほか、血栓塞栓症や誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)など場合によっては命に関わる病気を引き起こすケースや、認知機能の低下や抑うつなど精神的な症状を引き起こすこともあります。

廃用症候群は主に活動性が低い高齢者にみられますが、病気やけがによって長期間体を動かさない状態が続くと、年齢を問わず誰にでも発症する可能性があります。治療ではリハビリテーションや栄養改善など行います。

原因

廃用症候群の原因は、内的要因と外的要因の大きく2つに分けられます。

内的要因の例としては、骨折などの痛みや脳卒中による麻痺、心不全による息切れ、うつ病による抑うつ状態など、病気やけがによって身体的な活動が制限される状態が挙げられます。一方で外的要因としては、骨折などによるギブス固定、安静の指示、介助者の不在など本人の意思ではない、環境的な理由によって身体活動が制限されることが例に挙げられます。

これらの要因によって身体活動が制限されると、筋力の低下や関節の拘縮が引き起こされます。その結果、さらに活動性が低下してこれらの症状がより悪化する悪循環に陥り、症状が進むと寝たきりとなるケースもあります。

症状

廃用症候群の症状の現れ方には個人差がありますが、具体的には以下のような症状が引き起こされます。

筋力低下、関節拘縮、骨粗鬆症

身体活動が低下するため、筋力の低下、関節拘縮などが生じます。特に寝たきりの状態になると、筋力は1週間で10~15%程度低下し、萎縮が進むとされています。

また、過度な安静は骨の代謝異常を招き骨粗鬆症を発症しやすくなる可能性があります。特に栄養状態が悪い場合や、ステロイド治療を受けている場合などは、骨密度が低下しやすいため骨粗鬆症が進行しやすいと考えられています。

心機能の低下

廃用症候群では心臓の機能が低下するため、持久力が低下して疲れやすさや脱力感を覚えるようになります。また、起立性低血圧めまい、失神などの症状を引き起こすこともあります。

血栓症

長い時間体を動かさずにいると脚の静脈の血流が悪くなり、血栓ができやすくなります。重症な場合では肺塞栓症(はいそくせんしょう)など命に関わる病気を引き起こすケースがあります。

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液などと共に細菌が気管に入ることで発症する肺炎です。発熱や咳、のような痰が出るほか、食欲の低下や喉がゴロゴロ鳴るといった症状が現れます。

特に寝たきりとなった場合は物を飲み込む機能が低下するほか、口腔内(こうくうない)が清潔に保たれにくくなることで口内に細菌が増殖しやすくなります。その結果、食べ物や唾液などが気管に入り込み、細菌が肺に侵入やすくなります。

尿管結石、尿路感染症

寝たきりの状態が続くと、運動不足によって骨からカルシウムが溶け出して尿に多くのカルシウムが出るようになるため、尿管結石を発症しやすくなります。また、バルーンカテーテルを留置中の場合は尿路感染症を発症しやすいため注意が必要です。

便秘

身体活動が減ると大腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が低下するため、便秘になりやすくなります。

精神症状

身体活動の過度な制限は精神症状を引き起こすことがあります。具体的には、周囲の人との社会的な関わりが減ることによって意欲や集中力の低下、抑うつ状態などが生じ、進行すると認知症に至る可能性があるとされています。

また、時間や場所などが分からなくなる“見当識障害”が現れることがあるほか、重症な場合には幻覚や妄想などの症状が現れることもあります。

検査・診断

廃用症候群の診断には特別な検査は行わず、症状や身体活動の状況、既往歴などから総合的に診断を下します。どのような経緯で活動性が低下したのかをさかのぼって聞き取ります。風邪などで寝込んだこと、転倒し骨折をして入院したこと、冬で散歩に出られなくなったことなどがきっかけになることがあります。

一方で、廃用症候群の患者は低栄養のことが多く、何らかの病気を併発していることがあるため、症状に応じて血液検査や画像検査などを行うケースがあります。

治療

リハビリテーションなどを行って身体機能の維持や回復を目指し、現れた症状を和らげるための対症療法を行います。

対症療法の例としては、心不全誤嚥性肺炎に対する薬物療法、低栄養に対する栄養改善を目指した栄養療法などが挙げられます。

予防

廃用症候群を予防するためには、自分のできる範囲で身の回りのことを行うほか、規則正しく生活し、日中しっかり頭と体を動かすといった対策が必要です。安全に移動できるように自宅内の段差をなくす、手すりをつけるなどの環境整備も有効でしょう。

大きな手術やけがが原因の場合は、手術前、および入院後できるだけ早くからリハビリテーションを行い、口から食べ物を摂取して胃腸を動かすことも廃用症候群の予防につながります。安静の必要がある場合でも、ベッドの上で行える運動を取り入れ、食事をしっかり摂取することで筋力低下や関節拘縮を防ぐことができます。寝たきりで体を全く動かさないと廃用症候群が進行していくため、体の向きを数時間おきに変える、手足を動かすリハビリテーションを毎日行うといったケアが必要です。

特に高齢者が廃用症候群となった場合は、心身機能を元の状態に戻すのが困難といわれています。体を動かすほか、リハビリテーションやデイサービスといった体制を整え、外に出て人と接する機会をつくることも重要です。

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