はいどうみゃくせいはいこうけつあつしょう

肺動脈性肺高血圧症

血管

目次

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概要

肺動脈性肺高血圧症とは、心臓から肺に血液を供給する動脈の一部が狭くなり肺の血圧が正常よりも高くなる病気を指します。心臓から肺への血液は「肺動脈」と呼ばれる血管で血液が供給されますが、肺動脈性肺高血圧症で細くなっているのは、肺動脈がさらに分岐した先の「小動脈」と呼ばれる血管です。細くなった小動脈に血液を送る必要性が出てくるため心臓には大きな負担がかかり、心不全症状が出現します。 肺血管性肺高血圧症は日本において難病指定を受けており、2013年までの調査結果によると2,587名の患者さんがいると報告されています。肺動脈性肺高血圧症は男女比が1:2.6と女性に多いうえに、平均年齢も42歳と若くして罹患するのが特徴です。 原因はさまざまなものがありますが、なかにはやせ薬で発症した例もあります。 以前までは診断を受けてから平均3年以内に亡くなるといった、とても予後の悪い病気でした。しかし2005 年に「ボセンタン」と呼ばれる内服薬が出現して以降、数多くの治療薬が日本の臨床現場で使用可能となり、予後の改善に大きく貢献しています。

原因

肺動脈性肺高血圧症は、肺動脈の末梢側の動脈である「小動脈」が狭くなるもしくは硬くなることが原因です。肺に血液を供給するのには、「右心室」という部屋が機能する必要があります。一方全身に血液を送り出す心臓の部屋は「左心室」と呼びますが、両者の間には明確な違いがあります。大きな違いのひとつは、血圧です。左心室は全身に血圧を送る必要があるため100mmgH前後の血圧を出すことが可能ですが、右心室はそれほどの圧を出すほどの負荷には耐えることができません。肺動脈性肺高血圧症では、狭くなった肺動脈を通して血液を供給するために、右心室には大きな負担がかかります。しかし、右心室はもともと強い血圧を出すのに慣れていないため、この負担に耐えることができずに心不全症状を認めるようになります。 肺の小動脈が狭くなる原因は、以下のようにいくつか分類することができます。

(1)特発性 特発性肺動脈性肺高血圧症は、肺血管が狭くなる明確な原因を同定できないものを指します。

(2)遺伝性 肺動脈性肺高血圧症は、遺伝子異常にともなって発症するものもあり、全体の10%弱を占めていると推定されます。いくつかの遺伝子異常と病気の関係性が同定されていますが、代表的なものとしてはBMPR2遺伝子異常を挙げることが可能です。

(3)薬物 やせ薬である「フェンフルラミン」と呼ばれるものを代表として、いくつかの薬剤が肺動脈性肺高血圧症を引き起こすことが知られています。

(4)その他 その他、膠原病、HIV、先天性心疾患などが原因となるものもあります。

症状

肺動脈性肺高血圧症では、右心室に負担がかかり、血液がうまく肺に流れなくなってしまいます。また肺は血液に酸素を供給するのに重要な臓器ですが、このたらきも阻害されてしまいます。以上の結果、全身には酸素が不十分な血液が滞ることになり、疲れやすさを感じるようになります。階段を上ったり、歩いたりすると疲れを自覚するのが自覚症状になり得ます。脳にも不十分な血液が供給されることになり、たちくらみやめまいを感じます。血液が全身に溜まることを反映して、足を中心としたむくみを自覚することもあります。 病状が進行すると、運動をしていなくても呼吸困難を自覚するようになります。横になった際に症状が増悪するため、座った姿勢を好むようになりますが、このことを起座呼吸(きざこきゅう)と呼びます。むくみは全身に広がり、さらにしゃがれ声(声帯のむくみ)、ピンク色の痰や咳、喘鳴(これらは肺に血液が滞っている状態を反映します)などをも出現します。慢性的な呼吸困難を覚えるようになるため、精神的なストレスも多くうつを発症することもあります。 しかし、いずれにおいても肺動脈性肺高血圧症に特異的な症状ではなく、特に初期の場合は見過ごされがちです。年齢のせいとは考えずに、早めに受診することが病気の早期発見には重要です。

検査・診断

肺動脈性肺高血圧症の診断は、肺の血圧が異常に高くなっていることからなされますが、このことは必ずしも容易ではありません。たとえば生活習慣病としての高血圧の診断においては腕からの血圧を測ることが可能ですが、肺の血圧を実測することは位置関係からして難しいです。そのため、肺動脈性肺高血圧症においては、まず第一に肺の血圧を「推定」することになり、この目的のためには心臓超音波検査が有用です。心臓超音波検査は、肺動脈性肺高血圧症の早期発見に最も有効です。 肺の血圧が上昇していることが超音波検査で疑われる場合には、実際に肺動脈を測定する「カテーテル検査」が行われます。カテーテル検査は鼠径部の動脈などから針を刺し心臓内にカテーテルを通す検査になるため侵襲性はより高くなりますが、推定ではなく実際の肺血圧を測定することが可能です。 これらの検査に加えて、胸部レントゲン写真、CT、呼吸機能検査、血液検査などを併用しつつ、心不全の程度、不整脈、貧血などの有無を確認します。

治療

肺動脈性肺高血圧症の治療は薬物治療が中心であり、骨幹として一酸化窒素系に作用するPDE5阻害薬・sGC刺激薬、エンドセリン受容体拮抗薬、プロスタサイクリン、の3つの種類が存在します。2005年にエンドセリン受容体拮抗薬である「ボセンタン」と呼ばれる薬が出現して以降、数多くの種類の薬剤が日本でも使用可能となってきており、治療成績の向上に大きく貢献しています。これら薬剤は、病状が進行してから使用するよりも、初期の段階から使用することで高い治療効果が期待できます。 内服薬のみでは症状の抑制ができず病状が進行する場合には、点滴での入院治療も必要となります。最大限の内服薬・点滴薬などの内科的な治療が無効な場合、肺移植が検討されることもあります。

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