概要
住血吸虫症とは、住血吸虫と呼ばれる寄生虫に感染することで発症する病気です。中間宿主である淡水産の巻貝から放出した幼虫が、水中で皮膚から侵入することで感染します。そのため住血吸虫症の流行地は、その巻貝の生息域に一致して分布しています。
なお、住血吸虫症を引き起こす虫は5種類で、現れる症状もそれぞれ異なります。しかし、多くは幼虫が侵入した皮膚にかゆみや発疹などが現れ、感染後2~12週間ほどで発熱、筋肉痛、倦怠感、吐き気、腹痛、リンパ節の腫れなどの症状が現れます。また、虫卵が残存していると炎症を引き起こして、さまざまな臓器にダメージを与えることもあります。
治療は住血吸虫に対する駆虫薬の内服を行います。
原因
住血吸虫症は、寄生虫の一種である住血吸虫に感染することによって引き起こされます。
ヒトへの感染は中間宿主である淡水産の巻貝から放出したセルカリアと呼ばれる幼虫が水中で皮膚から侵入することで感染します。住血吸虫には多くの種類がありますが、住血吸虫症を引き起こすのは、ビルハルツ住血吸虫・マンソン住血吸虫・日本住血吸虫・メコン住血吸虫・インターカラタム住血吸虫の5種のみとされています。
また、いずれのタイプの住血吸虫もヒトに寄生すると体内で産卵し、尿や便と共に排出されます。流行地は中間宿主である淡水産の巻貝の生息域に一致して分布しており、特に開発途上国を中心に流行がみられています。
症状
住血吸虫は幼虫が皮膚を突き破ってヒトに感染します。感染すると侵入部位にはかゆみや発疹が生じますが、このように住血吸虫によって引き起こされる皮膚炎を“セルカリア皮膚炎”と呼びます。
感染した幼虫は皮膚から血管の中に入り込み、肝臓に到達して成長し、さらに血流に乗ってほかの臓器に移動します。行きつく臓器は虫によって異なり、マンソン住血吸虫と日本住血吸虫は腸管の静脈に寄生し、感染から4週間ほど経過すると発熱、下痢などの症状を引き起こします。
また、虫卵が肝臓に運ばれると肝臓に炎症を引き起こし、感染から時間が経過すると肝臓の腫れや腹水などが生じるようになります。さらに、腸管では粘膜に障害が起こったり、ポリープが形成されたりすることで慢性的な腹痛、下痢、血便などが引き起こされます。なお、日本住血吸虫は脳の血管が虫卵で詰まり、けいれんや麻痺などの神経症状を引き起こすケースも報告されています。
一方、ビルハルツ住血吸虫は肝臓から膀胱に行きついて寄生するのが特徴です。膀胱の壁に多くの卵が産み付けられるため炎症が生じ、血尿や頻尿などを引き起こすばかりでなく、膀胱がんのリスクを高めることも知られています。
検査・診断
住血吸虫症が疑われる場合は、以下のような検査が行われます。
便検査、尿検査
住血吸虫症の診断には、便や尿の中に虫卵が含まれているか否か確認する必要があります。しかし、感染してから時間が経過していない場合は虫卵が排出されないこともあるため、便検査や尿検査で虫卵を検出できない場合は腸管や膀胱の組織を採取して顕微鏡で詳しく調べる検査を行うことがあります。
血液検査
住血吸虫は肝臓や腸管、膀胱などの臓器に炎症を引き起こすことが知られています。そのため、肝機能の状態や炎症、貧血の有無などを確認する目的で血液検査を行うことがあります。
画像検査
この病気では肝臓の腫れなどが生じることがあるため、その状態を把握するためにCT、MRI、超音波などによる画像検査を行うことがあります。
治療
住血吸虫症は、駆虫薬であるプラジカンテルの内服治療が行われます。組織内に残った虫卵が検出される陳旧性住血吸虫症*の場合は、通常治療は行いません。
*陳旧性住血吸虫症:成虫を駆除した後にまれに卵が残ることがあり、時間を経て発症した虫垂炎や大腸がんの組織内から検出されること
予防
住血吸虫は淡水中に生存するため、流行地域では淡水に入ったり触れたりしないことが予防につながります。
また、淡水に触れる場合はゴム手袋やゴム長靴などを装着することがすすめられています。
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