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強皮症の治療と日常生活での注意点-薬では治らない病気とどう向き合うか
強皮症(きょうひしょう)が進行すると、最終的には肺高血圧症(はいこうけつあつしょう)による心不全で亡くなる方が多いといわれています。肺高血圧症に対して有効な薬剤が出てきている一方で、未だ薬では完...
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強皮症の治療と日常生活での注意点-薬では治らない病気とどう向き合うか

公開日 2016 年 12 月 09 日 | 更新日 2017 年 10 月 17 日

強皮症の治療と日常生活での注意点-薬では治らない病気とどう向き合うか
井畑 淳 先生

国立病院機構横浜医療センターリウマチ科部長

井畑 淳 先生

強皮症(きょうひしょう)が進行すると、最終的には肺高血圧症(はいこうけつあつしょう)による心不全で亡くなる方が多いといわれています。肺高血圧症に対して有効な薬剤が出てきている一方で、未だ薬では完治しない強皮症という病気に対して、生活の質を維持するための日常的な工夫やリハビリテーションも重要です。国立病院機構横浜医療センターリウマチ科部長の井畑淳先生にお話をうかがいました。

強皮症の主な死亡原因「肺高血圧症」とは?

強皮症の死亡原因の中心となっている病態は、肺高血圧症と呼ばれるものです。肺高血圧症とは、主に心臓から肺へ向かう太い血管(肺動脈)内の抵抗が増すことによって圧力が高くなり、心臓に負担がかかって心不全になるという病気です。

強皮症の方が亡くなる場合には、いくつかの病気が重なり合っていると考えられます。したがって、最終的に体のどの部分がもっとも悪くなって死に至るのかという点についてもさまざまな説がありますが、ひとつの流れとして、肺が線維化のために硬くなると心臓から肺へ向かう血管内の抵抗が大きくなり、肺に血液を送り込む心臓の右心室が肥大して心不全になるというケースが多くみられます。

<関連記事⇒『肺高血圧症とは? 通常の高血圧とは全くの別物』>

肺高血圧症にトシリズマブは有効か?

記事1『皮膚が硬くなるのは強皮症の症状?全身の皮膚や内臓が硬くなる「強皮症」という病気』の中でご紹介した生物学的製剤のトシリズマブについては、残念ながら肺高血圧症の予防や治療に有効であるといえるほどの証拠はまだ出ていません。現在のところ、肺の線維化や皮膚の硬化を遅らせることができるかどうかという評価が始まっているという段階です。

強皮症による肺高血圧症の治療には血管拡張薬が有効

肺高血圧症という病態は、血管が硬くなって内腔が狭くなることによって肺に血液をうまく送れない状態が血圧上昇の原因になっているので、その血管を拡げて肺血管抵抗を下げる血管拡張薬が有効です。つまり高血圧の治療と同じように、血管拡張薬が肺の血管を拡げるということです。

高血圧の治療薬は全身の血管に作用する薬ですが、現在は肺の血管を拡げる効果のある薬剤が数種類あり、短期的には治療効果が上がっています。しかし、それが長期でみた場合にどうなるかということは、今後の経過を調べてみなければわかりません。うまくいけば歩ける距離が伸びたり、少し動いても息切れしなくなるなど、長期的に患者さんの予後の改善につながる治療になる可能性があるのではないかと期待されているところです。

肺高血圧症で使われる血管拡張薬の種類と特徴

もともと肺高血圧症に使う薬として開発された薬剤としては、タダラフィル(アドシルカ®)、ボセンタン(トラクリア®)という薬があります。シルデナフィル(レバチオ®)は男性のED(勃起不全)に使われていた薬ですが、肺の血管にもよく効くことがわかり、肺高血圧症への適応が認可された薬です。

この3種類の薬は強皮症による肺高血圧症に対してよく使われている薬でしたが、実は強皮症による指先の潰瘍(かいよう)にも有効であるということから、海外で新たに適応が認められました。最近になってようやくボセンタン(トラクリア®)に日本でも強皮症による指先の潰瘍に対する予防効果が適応追加され、国内でも使われ始めています。

その他にも肺血管の抵抗を改善する薬として、特に循環器内科の医師の間でよく用いられているリオシグアトという薬があります。このリオシグアトはちょうど強皮症に対しても治験が始まったところであり、これからよい結果が出るのではないかと期待されています。

肺高血圧症に対する免疫抑制薬の可能性

肺高血圧症の病態は非常に幅広く、その中にさまざまな分類があります。必ずしも肺の病気が原因となる肺高血圧症の患者さんが主体というわけではなく、むしろ強皮症や全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患をもともと持っている人が肺高血圧症になるケースも多いと考えられています。したがって、免疫が関係するような肺高血圧症には、免疫抑制薬を使うことによってよくなる部分も残っているのではないかという考え方もあるのです。おそらくこれは病態によって異なり、残念ながら強皮症は難しいものの、全身性エリテマトーデスやその他の皮膚筋炎などに関係して起こる肺高血圧症には有効なのではないかといわれています。

強皮症にステロイドは効かない?

ステロイドは火消し的な抗炎症作用が非常に強いので、急な炎症を抑えるという意味ではとてもよい薬です。ですから、強皮症に使ってもよい時期もあるのですが、長い目で見ると副作用として起こる免疫抑制や骨粗しょう症のリスクなどが前面に出てきてしまい、皮膚の硬化自体は止められないといわれています。

ただし、炎症で腫れ上がっているときに使うと、むくみが取れて手の指を握るのが楽になったりすることは確かです。ですから、日本でも強皮症の早期に関しては使ってよい場合もあるのではないかという報告が出ています。実際のところ、強皮症に対して決め手となる治療がなかなかないために、海外でも5割ぐらいはステロイドを使っているようです。

本来はなるべく使わない方がいいのですが、状況によっては使っているというケースが多いとみられます。ただし、漫然と使い続けるのはやはりよくありません。その患者さんが病気の経過の中でどういう時期にあるのかということによって変えるべきなのだろうと考えています。

日常生活で強皮症の患者さんに気をつけていただきたいこと

強皮症でもっとも大事なことは生活指導です。たとえばレイノー現象で指が真っ青になったときには、復温(ふくおん)といって温度をもう一度上げる必要があります。そうしなければ、その部分は血流が滞って酸素が届かない状態がずっと続いてしまいます。強皮症は血管が悪くなる病気ですので、潰瘍や傷ができたときにはその部分を大事にしてあげなければなりません。

強皮症の皮膚は「強」くない

強皮症は「強」いという字を書きますが、硬くなった皮膚はけっして強くありません。むしろ弱くてデリケートです。血流が悪いと傷が治りにくくなるので、まず傷を作らないようにすることが一番大切です。たとえば手袋をして寝ることや、保湿や皮膚の保護のためにこまめに軟膏を塗ることもそうですし、爪の切り方にしても、切ったばかりの爪で傷がついてしまうことがありますから、切った後はていねいにやすりをかけるようにします。また、爪切りでパチンと切ると爪が反り返ってしまうこともあるため、切るよりもむしろ少しずつやすりをかけて削るほうが傷つきにくいというようなアドバイスも、患者さんにとって大事なことです。

強皮症による消化管の症状に対する工夫

食事についても注意が必要です。逆流性食道炎といって、食べたものが胃から戻ってくる病気がありますが、強皮症の方は食道の動きが悪くなるため逆流性食道炎を起こしやすいとされています。その場合は1回の食事の量を減らして胃がいっぱいにならないように工夫するとよいでしょう。その分、食事の回数は増えますが、1回の量を減らして食べたものが胃からなくなった後で次の食事を摂ってもらうようにします。私は1日6食に分けてもいいと考えています。そうするとお腹が張らなくて胸焼けも起こりにくくなります。

また、食事を何時に摂るかということも重要です。たとえば夜の12時に寝るのであれば、2時間前の10時だとギリギリというところです。強皮症の方は消化管の動きもあまりよくありませんから、食べたものがまだ胃に残っている可能性があります。そうすると、もっと早い時間帯に食べるようにしていただいたほうがよいということになります。

強皮症におけるリハビリテーションの重要性

リハビリテーションも大事なことです。私自身、薬による治療も行いますが、リハビリテーションに関するお話をする機会は非常に多いです。硬くなって動かしづらいからといって指を動かさないでいるとますます固まってしまいます。それを頑張って動かしてあげることによって、指が曲がった状態で固まってしまう拘縮(こうしゅく)という状態にならずに済みます。

顔の表情を作っている筋肉を表情筋(ひょうじょうきん)といいますが、こわばった表情筋のリハビリテーションを行うことによって表情が豊かになります。また、呼吸筋や肺のリハビリテーションをすれば呼吸が少し楽にできるようになるなど、肺が線維化で硬くなっていても呼吸管理をする上で有利に運ぶということがあります。

5年後、10年後も生活できる状態の維持を目指して

こういったことをひとつひとつ頑張っていただくと、かなり良い状態が保てる可能性があります。我々医師は、こういうリハビリテーションの方法がありますよという形でお勧めすることはできますが、実際にそれを行うのは患者さんご本人です。自分なりにさまざまなことに取り組んでいくと、普通に生活ができる部分が増え、5年後、10年後もそれなりに生活できる状態を維持することができます。

もちろん、私自身も新しい薬を使って治療に取り組んでいますし、今後いろいろな選択肢が出てくることも期待されていますが、現在のところ強皮症は薬だけ治る病気ではありません。治る病気ではないということは、長期にわたってこの病気と付き合っていくということを意味します。強皮症という病気とどう付き合っていくのかということを考え、自分なりにスタイルを作っていくということがとても重要なのだと考えています。

 

強皮症(井畑淳先生)の連載記事

横浜市立大学医学部を卒業後、横浜市立大学大学院病態免疫制御内科学教室にて研究を行う。生体の免疫に深く関わる感染症・リウマチ・血液内科・呼吸器内科に精通。広範な知見と経験をもとに、膠原病リウマチ内科で診療に携わると同時に、後進の育成にも力を注いでいる。

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