私たちの日常生活のさまざまな動作は、関節によって支えられています。
関節リウマチは、人体を守る免疫システムに異常が生じ、関節の滑膜を攻撃するようになって炎症や痛みを生じる病気です。ここでは、“関節リウマチの原因”“どのくらいの患者さんがいるのか”“治る病気なのか”について、国立病院機構 横浜医療センター 膠原病・リウマチ内科 部長の井畑 淳先生に詳細を解説していただきます。
関節リウマチは、人体を守る免疫機能が誤作動を起こして、2つの骨を覆っている“滑膜”という組織を攻撃するようになることが分かっています(自己免疫疾患といいます)。医師の間では、花粉症や気管支喘息のようなアレルギー疾患とは別の病気と考えられています。
研究が進んだ今も、病気を引き起こす全ての原因は分かっていません。ただし関節リウマチは、出産や喫煙、感染症などといった要因が重なって起こると考えられています。近年では、特定の遺伝子を持っている方に喫煙の習慣が身につくと関節リウマチになりやすくなることが分かってきました。また、う歯(虫歯)を起こす菌がつくるシトルリン化ペプチドという物質も、リウマチを引き起こす原因になることが分かっています。
関節リウマチ患者さんの家系調査のデータでは、患者さんの3親等以内は発症率が高く、30%以上にまで上ることが分かっています。また、一卵性双生児の片方が関節リウマチを発症した場合、その兄弟の発症率は10%~30%程度になるという報告があります(二卵性双生児では10%未満)。
このことから、病気そのものが遺伝するわけではないものの、遺伝的な要素が病気に関連する部分があることは間違いありません。しかし、遺伝的な要素がなくても関節リウマチを発症することがあるため、遺伝的要素だけで病気になるかどうかがが決まるわけではなく、生活習慣などさまざまな要素が組み合わさって病気になるかどうかが左右されているといえるでしょう。
特に、子どもがいる世代・これから子どもを作る世代の方は、遺伝の要素を気にする方も多いようです。前述のとおり、発症の可能性が高まることは否定できないものの、必ずしも発症するとは限らないことを理解することが大事だといえます。
関節リウマチの患者さんが何人いるのかについて正確には分かっていません。しかしながら、統計によって推測することはできます。
国・地域によって多少異なりますが、関節リウマチになる人の割合は、およそ人口の0.5%~1%程度です。日本には、70万人~100万人の患者さんがいると考えられており、年齢別にみると、30歳代から50歳代に病気を起こす率がもっとも高いことが分かっています。
関節リウマチは、男性よりも女性で発症しやすいことが分かっています(女性の発症率は、男性の4倍程度といわれています)。これは単に女性のほうが遺伝的に発症しやすいのではなく、出産や、閉経などによるホルモンバランスの変化、そして生理的変化が発症の引き金になるケースがあるためではないかと考えられています。ただし、科学的な根拠はなく正確な原因も分かっていません。
関節リウマチの症状については後述しますが、主な症状は関節痛・関節の腫れ・朝のこわばりなどです。発症した後積極的な治療を行わない場合、症状も急速に進行し、2年以内に関節が破壊されて治りにくい障害が出現することが分かっています。そのため早期発見・治療が非常に重要です。
繰り返しますが、研究が進んだ今も、関節リウマチの詳細な原因は分かっていません。そのため、かつては治らない難病とされていましたが、現在は抗リウマチ薬の進歩によって、早期に治療を開始すれば、関節の痛みや炎症がない状態(寛解)を維持することが可能になってきました。
国立病院機構横浜医療センター 臨床研究部長/膠原病・リウマチ内科部長
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