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日本リウマチ学会認定のリウマチ専門医からのメッセージ 関節リウマチ治療にかける想い

日本リウマチ学会認定のリウマチ専門医からのメッセージ 関節リウマチ治療にかける想い
菱山 美絵 先生

武蔵小杉リウマチ膠原病内科 院長

菱山 美絵 先生

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女性に多い病気として知られる関節リウマチ。関節リウマチの初期症状である手足の関節のこわばりを産後の体調不良や更年期症状と思い込み治療が遅れると、日常生活に支障をきたしてしまうこともあるため早期発見が重要です。なお、妊娠を希望される場合には計画的な治療が必要になるため、あらかじめどういった治療を行うのか知っておく必要があるでしょう。

今回は、武蔵小杉リウマチ膠原病(こうげんびょう)内科 院長の菱山 美絵(ひしやま みえ)先生に関節リウマチの症状や女性が注意すべき治療のポイントなどについてお話を伺いました。

関節リウマチは、細菌やウイルスなどの異物が体内に入った際にはたらく免疫が、自分の体を攻撃してしまうため、関節滑膜(かつまく)(関節を覆っている組織)に炎症が起こる自己免疫疾患の1つです。関節の腫れ、さらには関節の変形などに進行する関節の痛みやなどが現れる病気として広く知られています。

国内では70~80万人の患者さんがいると考えられており、男女比は1:4と女性に多い病気です。女性の好発年齢は30~50歳代ですが、どの年代の方であっても発症する可能性があり、10~20歳代の若い方も注意が必要です。

関節リウマチを発症する原因は不明とされていますが、リスク因子として近年解ってきたこととしては、喫煙による口腔内環境(こうくうないかんきょう)の悪化、腸内環境などの環境要因が関係しているといわれています。さらにウイルス感染や出産、閉経など身体へのストレスがきっかけとなって発症することもあると考えられています。

現代のリウマチ治療では、若くして発症された方でも妊娠が可能な時代になっております。ただし、関節リウマチの病態が悪く、活動性(病気の勢いや症状の強さ)が高いときには妊娠しづらくなります。そのため、妊娠を希望される患者さんには、早期発見・早期治療が重要であり、計画的かつ適切な治療が必要不可欠です。

年間300~400人ほどの関節リウマチの患者さんが通われています(2023年3月時点)。

【初期症状】
ごく初期には両手の指のこわばりが有名ですが、両足の先から現れることもあります。その場合は、朝ベッドから立ち上がるのが困難になります。一般的には左右対称に現れるといわれていますが、膝や肘など1つの関節のみに症状が出る場合もあるため注意が必要です。特に朝起きて1時間ほどは症状が強く出るのが関節リウマチの特徴です。

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具体的にはこのような症状が起こるようになります。

  • 朝、手がこわばる
  • 倦怠感があり、ベッドから起き上がるのがつらい
  • お皿や包丁などを落としてしまう
  • 雑巾が絞りにくい
  • 顔が洗いにくい
  • 髪をとかしにくい
  • 足がむくんで靴が入らない

これらの症状が2週間以上続くようであれば関節リウマチを疑って、すぐに病院を受診することをおすすめします。

【進行すると現れる症状】
関節の腫れや痛みといった症状が左右対称に出て、症状のある場所が移動していくというのも関節リウマチの特徴の1つです。痛みを放置して症状が進行すると、関節の変形や破壊が起こります。我慢強い方や仕事が忙しく受診できない方などは、指に変形が出て初めて病気に気付くこともあります。

なお、2023年3月現在は、関節の痛みや変形が強い場合には手術が必要になることもあるため、気になる症状がある方は早めに病院を受診することが大切です。

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関節リウマチは膠原病*の1つであるため、関節以外にも全身にさまざまな症状が現れます。代表的な症状に微熱、倦怠感(けんたいかん)(だるさ)、目の痛みや乾き、咳などがあります。微熱や倦怠感が継続する場合は関節リウマチの関節外症状やほかの膠原病の可能性も考えられるため、日本リウマチ学会認定のリウマチ専門医のもとで検査・診断を行う必要があるでしょう。

関節の症状とともにこれらの症状が現れるのが一般的ですが、関節の痛みに気を取られて微熱や倦怠感などに気付いていない方もいらっしゃいます。そういった場合でも、関節リウマチの治療を開始したことで、だるさや疲れが軽減され、体がすっきりしたという患者さんもいらっしゃいます。

逆に関節の腫れには気付いていないけれどなんとなく微熱がある、重だるいという症状を訴える関節リウマチの患者さんもいます。関節に炎症があるのは火が燃えているのと同じ状態ですから、その火が消えない限り微熱やだるさが続くことになると理解いただくとよいでしょう。

*膠原病:全身の臓器や皮膚に炎症が現れる自己免疫疾患の総称。関節リウマチは膠原病の中でも最大の患者数を有する。

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更年期による関節の痛みは、基本的には関節リウマチによる関節症状とは異なります。ただし、更年期の関節痛の中に関節リウマチが隠れている場合もあります。そのため、関節症状がある場合は、血液検査とX線検査を行い、鑑別を行うことが重要です。関節リウマチではなくとも、漢方やホルモン剤の補充療法などで、快適な更年期ライフを送ることができるでしょう。更年期の関節症状でお悩みの方は、内科医や婦人科医にご相談ください。

関節リウマチ治療の基本は薬物治療です。使用する主な治療薬について以下でお話しします。

メトトレキサートという抗リウマチ薬(免疫の異常を改善することにより炎症や症状を和らげる薬)が第一選択薬となります。メトトレキサートは、全世界で関節リウマチの第一選択薬とされ、副作用なども詳細に研究されているため、安全に使用できるとされている薬剤です。なおかつ、週に1~2日薬を内服するという手軽さもあるため、長期使用により寛解(症状や進行をきちんと抑える)までの治療に向いているといえるでしょう。治療効果をみながらメトトレキサートに加えて、サラゾスルファピリジンやタクロリムスという抗リウマチ薬を組み合わせて治療を行うこともあります。

なお、痛みがある場合にはNSAIDs(エヌセイズ)(非ステロイド性抗炎症薬)を使います。それでも痛みが改善しない場合には、ステロイド剤を短期間使用することもありますが、可能な限り使用を控えて治療していきます。

また当院でメトトレキサートを使用する場合には、副作用が起こらないように定期的な検査(血液検査、X線検査)を行い、メトトレキサートを内服した48時間後に葉酸の内服をしていただきます。

メトトレキサートをはじめとする抗リウマチ薬を内服し始めてから、3か月経過しても症状の改善がみられない場合、現代では生物学的製剤という炎症の原因となるサイトカインのはたらきを抑える治療薬の使用が可能です。生物学的製剤は点滴や注射で一定の間隔を空けて投与する薬です。

生物学的製剤や内服のJAK阻害薬は高い治療効果が期待できる一方、経済的負担が大きいため患者さんとよく相談しながら治療を進めていきますが、治療初期2年間のなるべく早期に症状の進行を抑えることにより、将来的な身体障碍や関節の変形が起こる確率が減少します。治療初期2年間に生物学的製剤などで治療をしたとしても、トータルの人生で考えた場合、治療費が安く済むという試算がすでに出ています。また、いずれの薬剤も複数の種類があるため、全身の関節の状態を触診とX線で確認するとともに、全身の症状を詳しくお聞きしたうえで患者さんに適切な治療薬を選択することが大切であると考えて治療を行っています。

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関節リウマチの治療薬である免疫抑制薬を使用していると、感染症にかかりやすくなることがあります。ただし、抗がん剤のように過剰な免疫抑制を起こす薬剤ではないので、基本的な感染対策(手洗い・うがい・マスクなど)をしていれば大丈夫です。かぜをひいた場合には、主治医にすぐに相談をしてください。

関節リウマチの患者さんにとって、禁煙は必要不可欠です。喫煙を続けていると口腔内の環境が悪くなり、間質性肺疾患や感染症などにもかかりやすくなりますので、喫煙している関節リウマチの患者さんは禁煙治療を行いましょう。お酒は適度であれば飲んでも構いませんが、メトトレキサートを内服した日は飲酒をしてはいけません。

副作用や感染症に適切に対応するには、日本リウマチ学会認定のリウマチ専門医を受診いただくのがよいでしょう。

早期治療や薬物治療の進歩によって寛解が可能になってきている関節リウマチですが、長期間罹患している患者さんの場合は手術が必要になるケースもあります。特に放置してしまうと怖いのが首関節(頚椎(けいつい))です。治療が遅れると命に関わるため、なるべく早期に手術を行う必要があります。

そのほか、薬がなかなか効かなかったり、治療せずにいたりしたことで関節の変形や破壊が進んでしまっている方などは関節の置換術や固定術といった手術を行うこともあります。なお、基礎療法(病気を理解し、生活習慣の改善・工夫すること)やリハビリテーションを行うことも大切です。

関節リウマチの患者さんが妊娠を希望される場合は、計画的に治療を行う必要があります。関節リウマチの症状が強く出ている状態では妊娠しづらい傾向があるため、まずは寛解を目指します。

以下では、妊娠を希望されている関節リウマチの患者さんや妊娠中に行う治療についてお話しします。

先方提供

メトトレキサートは関節リウマチ治療に非常に有効とされる薬剤ですが、妊娠希望の女性は事前に服用を中止する必要があります。それは、胎児に影響を及ぼすことが明らかになっているからです。

ただし、メトトレキサート服用中に予期せず妊娠をしたからといって堕胎を考えるのは早計といえるでしょう。妊娠が分かったらただちにメトトレキサートの服用を中止し、主治医に相談するようにお話をしています。

関節リウマチ患者さんの妊娠は主治医と二人三脚で進めることが必要不可欠です。当院では患者さんのお話を聞いて、よりよい治療を探していきます。

妊娠中でも使用できる薬剤として抗TNFα製剤という生物学的製剤が挙げられます。抗TNFα製剤はメトトレキサートを併用しない場合でも効果があり、妊娠中も使用することが可能です。生物学的製剤は経済的負担が大きいので使用するのが難しいという方には、シクロスポリンやタクロリムスなどの抗リウマチ薬を使用という選択肢もあります。どうしても抗TNFα製剤や抗リウマチ薬の使用が難しい場合には、ステロイド剤を短期間使用することもあります。

また、帝王切開になる可能性などを鑑みて、どの薬を使用するか、出産前に薬の使用をいつ中止するかなどを膠原病内科の主治医と産婦人科の主治医とが相談し、病診連携を取った妊娠・出産が安全でしょう。

全ての方ではありませんが、妊娠すると関節リウマチはやや軽快する傾向があります。出産後の経過には個人差があり、再燃する方もいるため、患者さん一人ひとりの症状に合わせて治療を進めております。

聖マリアンナ医科大学卒業後、がんの研究をはじめ、さまざまなことを勉強したいと思い、都立駒込病院で全科目の初期研修を行いました。指導医の先生方が惜しみなく知識を教えてくださる恵まれた環境でした。初期研修の中で膠原病診療の難しさ、患者さんと密接な関係を築き困難な治療をしていく過程で専門とすることを決めたのです。

私が研修医をしていた時期は、今のように治療薬の種類が多くない時代でした。そのような状況下でも「なんとか患者さんを救いたい」という一心で研究に熱心に夜中まで取り組んでいらっしゃった猪熊先生*、河野先生**のお姿は、私の診療スタイルのルーツになっていると思います。

*猪熊 茂子(いのくま しげこ)先生:現 千葉中央メディカルセンターアレルギー疾患リウマチ科部長
**河野 肇(こうの はじめ)先生:現 帝京大学医学部内科学講座教授

研修医時代に、生物学的製剤によって関節リウマチの治療にパラダイムシフト(それまでの考え方が劇的に変化すること)が起こるのを目の当たりにしました。日本で生物学的製剤の使用が始まったのは2005年からですから、もちろん当時は国内では手に入りません。しかし、関節リウマチ診療を専門的に行っている病院で研修していたため、それ以前から個人輸入したり海外のドクターと連絡を取ったりして生物学的製剤を入手している患者さんが都立駒込病院や後期研修を行った東京都立大塚病院に通院しておりました。そういった患者さんを間近で見ていたことで、生物学的製剤の使い方について深く理解することができたと感じています。

後期研修を終え、これからどう進んでいこうか考えたときには、さらに関節リウマチや膠原病の診療について研鑽を積めるよう聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センターに入ることになりました。そこでは、西岡先生*および山田先生**に関節リウマチをはじめさまざまな膠原病、線維筋痛症などの類縁疾患について教えを受け、さらに充実したリウマチ臨床を行うことができました。

その後、聖マリアンナ医科大学東横病院で診療ができるように素晴らしい環境に恵まれました。聖マリアンナ医科大学東横病院は武蔵小杉周辺の患者さんの出産から救急までを診てきた、聖マリアンナ医科大学の最初の病院です。東横病院に入職したときからずっと拝見している患者さんたちに多くのことを教えていただいたからこそ、武蔵小杉という地にご恩返しをすべく開業を決めました。振り返ってみるとどの時代においても、きら星のような先生方が惜しみなく知識を共有してくださいました。そのような素晴らしい環境で多くを学ぶことができたからこそ、一人ひとりの患者さんに向き合い、適した治療の提供を心がける今があるのだと思います。

*西岡 久寿樹(にしおか くすき)先生:聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター元センター長、霞が関アーバンクリニック元院長
**山田 秀裕(やまだ ひでひろ)先生:現 聖隷横浜病院 膠原病・リウマチセンター長、膠原病・リウマチ内科部長

膠原病内科は、ちょっとした体の不調や痛みで相談する最初の門戸と考えています。さらに、関節リウマチは“早期発見・早期治療”が大切です。患者さんの症状に照らし合わせて、できるだけ早期に診断をつけ治療を開始することが重要になってきます。

また、早い段階で関節リウマチがどのような病気なのかを理解していただけるよう患者教育を行うことも大切であると考えています。ただ医師にすすめられたからという理由でその薬を服用するのではなく、患者さん自身が病気や薬のことを学び、よく理解したうえで薬を服用することが、関節リウマチとうまく付き合っていくためには重要といえるでしょう。

これまでの研究成果によって、さまざまな関節リウマチの治療薬が開発されました。特に近年は新たな生物学的製剤などの開発・承認なども積極的に行われています。しかし、どのような場合にどの生物学的製剤を使うとより効果的なのか、生物学的製剤の中でも抗TNFα製剤、IL-6阻害薬、T細胞選択的共刺激調節薬のどれを最初に使用したら効果があるのかに関してはまだ研究が進んでいない状況です。そのため、これからはより高い効果が期待できる治療薬の使い方について研究が進む時代になることが予想されます(2023年3月時点)。

関節リウマチは腫れや痛みを取り除き、通常の生活や寛解を目指すことができる病気になってきています。ですから、関節リウマチだからといって日常生活でやりたいことなどを諦める必要はありません。1人で悩まず、なるべく早くリウマチを専門に診療している医師に相談することを最優先していただきたいと思います。

関節リウマチの患者さんが妊娠を希望する場合には、胎児に影響を与える可能性が低い抗TNFα製剤という生物学的製剤や、治療経過と胎児への影響を考慮したうえで妊娠中でも内服できる抗リウマチ薬などに治療薬に変更する必要があります。やむを得ない場合には少量のステロイド剤を使用しますが、たとえ使用する場合でも短期間ですぐに中止することが重要です。妊娠を希望される方は、こういった妊娠に関する治療薬の変更、使用法について知識のある医師の診療を受けていただきたいと思います。

更年期の女性に手足のこわばりや痛みがみられる場合、関節リウマチだけでなく、甲状腺疾患変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)などの可能性も考えられます。これらの症状は更年期の関節痛である場合もありますが、そのほかの病気の可能性もあるため「更年期だから仕方ない」と諦めず、気になる症状がある方は日本リウマチ学会認定のリウマチ専門医を受診ください。

提供:大正製薬株式会社
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