記事1『人工関節の材質は? 手術後のリハビリは? 人工膝関節手術についてでは、人工膝関節手術を実際に受ける年齢層や、手術時間、退院後のアフターフォローなどについてお話しいただきました。
記事2では、人工膝関節の費用や、その重さや術後の耐久年数などについて、引き続き横須賀市立うわまち病院整形外科部長の山本和良先生にお伺いしました。
実際の人工膝関節の模型を患者さんに見せると、その大きさや重さに圧倒され、驚く方もいらっしゃいます。
人工膝関節手術を受ける患者さんの中でもっとも多い質問は「人工膝関節は、自分の骨や関節と比べて重いのか」という質問です。人工膝関節と人の骨や関節の重さはそこまで大きく変わるわけではありませんが、それでもやや人工膝関節のほうが重いといえます。
たとえるならば、革靴を履いたときとスリッパを履いたときの脚に感じる重み程度の差です。ですから、「日常生活で自覚するほど大きな差ではありません」と伝えています。
人工膝関節手術の手術費用は、症状やその方の保険種別によって大きく異なるため、個人差があります。
通常の保険診療で3割負担の場合は、入院・手術、食事療養費など含め、55万円ほどです。しかし、当院では患者さんに「限度額適用認定証」の利用をお願いしていますので、70歳未満の場合は約10万円、70歳以上の場合には約5万円程度で行えることもあります。詳しくはうわまち病院の医事課にご相談ください。
人工膝関節は人工物なので、酷使していれば寿命が来て緩みが生じます。緩みがひどくなれば再置換手術といって、古い人工膝関節を抜き取り、新しい人工膝関節を挿入する必要が出てきます。しかし近年は人工膝関節そのものの性能も上がり、再置換手術が必要になることは、私の経験ではほとんどなくなりました。
確かに、人工膝関節は患部に過度な力が加わる動作(ジャンプをしたり、強く足をひねるなど)に少し弱く、これらを激しく継続的に行えば、緩みが出る可能性はあります。しかし、記事1で述べたように人工膝関節の手術を受ける患者さんのほとんどが70〜80歳代のご高齢の方ですので、新しく挿入した人工膝関節に大きな衝撃や負担が及ぶほどの激しい運動をすることはほとんどありません。
また若い患者さんに対しても、無理な運動を控えていただくよう指導するので、人工物が緩むほど無理をされる方はほとんどいらっしゃいません。そのため、実際には再置換手術が必要になる患者さんはほとんどいません。
人工膝関節の緩みとは、自分の骨と人工膝関節とのつなぎ目の部分が緩んできてしまったり、挿入した人工膝関節自体が傾いてきてしまったりすることです。このような人工膝関節の緩みはひどくなれば自分で気が付くこともあります。
しかし、ほんのわずかな緩みでは自覚症状がなく、ご本人が気付くことはほとんどありません。ですから、定期的な検診で専門家が人工膝関節の状態を確認することが必要です。
私は、膝が痛い方が必ずこの手術を受けなければならないとは思わないので、手術への抵抗が強い患者さんに、無理に手術をすすめることはしません。やりたいこと、行きたいところなど今後の人生にビジョンがあり、それが今ある膝の痛みがあっては実現できない方は、目的意識を持って自ら人工膝関節手術を希望されます。ですから、私は手術を迷っている患者さんに「どこか行きたいところ、やりたいことはないですか?」と尋ねるようにしています。
変形性関節症や関節リウマチの患者さんで、クリニックに通って治療を続けていても膝の変形が強く、膝の痛みが改善されない方は、おそらく人工膝関節手術の適応になります。しかしながら、人工膝関節手術を希望されるかどうかは患者さん次第です。現実に手術をすべきかどうか、迷っている患者さんも多くいらっしゃいます。
私は患者さんに人工膝関節手術を提案する際、「第二の人生を創る手術」とお伝えしています。人工膝関節手術が必要になる患者さんのほとんどが70〜80歳代で、現在の日本の平均寿命は80代後半といわれています。患者さんが残りの人生をどのように過ごしたいかが、人工膝関節手術をするかどうかの決断に大きく関わってきます。
人工膝関節手術を行う場合は、手術や術後のリハビリで1か月前後は痛みを覚えることもありますが、その後は飛躍的に歩きやすくなり、行動の幅も広がります。
実際患者さんの声を聞いていると、「手術をしてまでどうにかしたいわけではない」という方もいらっしゃいますし、「このまま死を待つだけなのは嫌だから手術をしてもっと元気になりたい」と考える方もいらっしゃいます。後者のように、膝の痛みを治して活動的な余生を送りたいという考えをお持ちの方の中には、なんと90歳を超えてから手術を希望される患者さんもいらっしゃいます。
手術で膝の痛みから解放された患者さんには、せっかく痛みに耐えて手術をしたのだから、ぜひやりたいことをやって楽しく生きていただきたいと私は願っています。
横須賀市立うわまち病院 副病院長
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