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人工関節の材質は?手術後のリハビリは?人工膝関節手術について

人工関節の材質は?手術後のリハビリは?人工膝関節手術について
山本 和良 先生

横須賀市立うわまち病院 副病院長

山本 和良 先生

目次
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この記事の最終更新は2017年02月18日です。

膝の関節に痛みが生じると、立ち上がることや歩くことが困難になり、行動に制限がかかることがあります。関節の痛みが変形によるものであれば、人工膝関節手術(じんこうしつかんせつしじゅつ)を行うことによって痛みが少なくなり、今よりも自由に外出や趣味を楽しむことができるかもしれません。

しかし、手術となると不安も多く、手術をするかどうか迷っている方も多いのではないでしょうか。今回は人工膝関節手術の有効性や気になる材質、手術時間などについて横須賀市立うわまち病院整形外科部長 山本和良先生にお伺いしました。

人工膝関節手術とは、変形性関節症関節リウマチによって膝の関節が変形し、強い痛みが出ている患者さんに行う手術です。この手術の対象となる患者さんは40歳代から90歳代まで年齢層が幅広いという特徴があります。当院では、地域に高齢者が多いということもあり、80歳代前後の患者さんにこの手術を行うことが多いです。

高齢の女性

また、人工膝関節手術が必要になる患者さんのほとんどは女性で、実際に手術を受ける方の大半も女性です。もちろん男性でも変形性関節症や関節リウマチに罹患する可能性はあります。しかし、男性は女性に比べて筋肉量が多く、筋肉が関節をしっかり支えているため、関節が変形しても痛みが出にくいという特徴があります。

変形性関節症や関節リウマチは、多くの場合痛みがなければ手術をする必要はありません。つまり、女性のほうが男性と比べて痛みが出やすいため、女性の手術数が多くなっているともいえます。

変形性膝関節症は手術が必要な場合、人工膝関節手術と骨切り手術(こつきりしゅじゅつ)という2つの方法から患者さんに適した手術をおすすめしています。

  • 人工関節:変形した骨の一部を切り取って、骨の表面を人工物に入れ替える手術
  • 骨切り手術:人工関節を入れずに、自分の骨を切り、形を整えて関節の痛みが出ないようにする手術

変形性膝関節症の場合、骨の変形が強く、ある程度お年を召した患者さんならば人工膝関節を、骨の変形が軽くまだ若い患者さんには、骨切り手術をおすすめする傾向にあります。具体的には、70〜80歳代の患者さんであれば人工膝関節手術のほうが適しており、50〜60歳代の患者さんであればまず骨切り手術を検討します。ただし、70歳代以上の患者さんでも骨の状態が丈夫で変形が少ない患者さんであれば、骨切り手術を検討する場合もあります。

関節リウマチによる膝関節の変形の場合、50〜60歳代と比較的若い患者さんでも人工膝関節手術を余儀なくされる方もいらっしゃいます。これは、関節リウマチの場合、若くても関節に強い変形が見られることもあるからです。

しかし最近はリウマチの治療が進歩しており、飲み薬や注射でリウマチの進行を抑えられる患者さんも増えてきています。そのため、以前と比べれば関節リウマチが原因で人工膝関節手術が必要になる患者さんは減少しています。

当院では、年間70件ほどの膝関節手術を行っており、そのうち20件ほどが骨切り手術、残りの50件ほどは人工膝関節の手術です。これは横須賀市に高齢の市民が多く、骨切り手術よりも人工膝関節手術のほうが適している患者さんが多く受診されるためです。

MN

人工関節の素材には、

  • 金属
  • セラミック
  • ポリエチレン

など、さまざまな材質が使われています。

世界的にみても金属製の人工関節を使用している医療機関が多く、当院でも基本的には金属の人工関節を使用しています。

ただし、ごく少数ですが患者さんの中には金属アレルギーをお持ちの方がいらっしゃいます。このような場合、金属製の人工関節を使用するとアレルギーを引き起こす可能性があるため、セラミック製の人工関節を使用します。

人工膝関節の挿入方法も医療機関によって異なります。

たとえば、骨と人工膝関節のつなぎ目に骨セメントを使用して固定する医療機関もあれば、骨セメントを使用せずに固定する医療機関もあります。当院では骨セメントを使用した人工膝関節手術を行っています。

人工膝関節手術にかかる時間はトータルで3〜4時間ほどです。しかし、ここには麻酔に関わる時間も含まれているため、実際に膝周りを切って人工膝関節を挿入する時間は1〜2時間ほどです。

安全に手術を受けていただくために意識していることは、手術前に患者さんの健康状態をしっかり検査し、万全の状態で治療に臨める環境を作ることです。

特に人工膝関節手術を受ける患者さんはご高齢であることが多いので、関節の痛みとは別に、高血圧糖尿病、心臓病など内科的疾患をお持ちの患者さんが多くいらっしゃいます。手術前に血液検査、心電図などでチェックし、必要があれば内科や循環器科に受診していただきます。

また、血管の病気に罹患していることがまれにあります。その場合は、手術前に脚の血流検査を行い、血液の流れに滞りがないかどうかを確認をします。この検査で血液の流れが悪いと判明した患者さんには、まず血管の治療を行い、その病状が改善してから人工膝関節手術に臨みます。

人工膝関節手術の際には細菌による合併症や感染症を防ぐため、細心の注意を払って手術に臨みます。手術前から何らかの菌を保持している患者さんを手術する際は、ややリスクが上がってしまうのでより一層の配慮が必要です。

当院の人工膝関節手術では、感染や合併症が起きることは滅多にありません。これは、手術室のクリーンルームという特別な部屋で手術を行ったり、手術後の傷のケアとして保護剤を貼り、細菌の侵入を防いでいるためです。今後も常に安全な手術を行えるよう、継続的な努力を行っていきます。

松葉杖

当院の人工膝関節手術の場合、多くの方は術後およそ2〜3週間で退院されています。手術後の入院期間はなるべく早く脚を動かしたり、できる範囲で歩くといったリハビリテーションを行います。あまり期間を空けずに脚を動かしたほうが回復も早く、正常に人工膝関節が機能します。

人工膝関節を入れる際に切った周辺の筋肉や皮膚には痛みが強く現れるので、痛みを和らげる薬を服用しながら、忍耐強くリハビリをしていただきます。多くの場合、術後2~3週間後には周囲の痛みも薬が不要になるほど引いていきますし、一定のスピードで歩けるようになります。

当院では、退院後のアフターフォローも継続的に行うように努めています。人工膝関節手術後の1年間は人工関節が正しく機能しているか、術後の経過は良好かを確認するため、数回診察するようにしています。

その後は患者さんが来られる範囲で1年に1回程度の受診をおすすめしています。私が当院に赴任して14年が経ちますが、14年前に人工膝関節手術を行った患者さんの中には、今もなお1年に1回の診察に毎年いらっしゃる方もいます。もちろん、体の状態などによって来院が難しい場合は、無理に受診をすすめることはありません。その患者さんの置かれている状況に合わせてアフターフォローを行っています。

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