インタビュー

人工股関節置換術とその種類、手術の流れ

人工股関節置換術とその種類、手術の流れ
深谷 英世 先生

JR東京総合病院 整形外科 担当部長

深谷 英世 先生

この記事の最終更新は2015年11月14日です。

JR東京総合病院整形外科の股関節チームは、股関節治療・股関節手術に特化したプロ集団として、年間300件以上(平成26年実績)の人工股関節手術を行なっています。人工股関節手術におけるトップランナーである深谷英世(ふかたに・えいせい)先生にお話をうかがいました。

変形性股関節症関節リウマチ大腿骨頚部骨折などによって股関節の変形や痛み、機能障害をきたし、他に治療方法がない場合に人工の股関節(インプラント)に置き替える手術を人工股関節置換術といいます。

主に大腿骨頚部骨折などの場合に、大腿骨頭側のみをインプラント(人工物)に置き換える手術です。大腿骨頭壊死もかつては人工骨頭置換術が主流でしたが、現在では次に説明する人工股関節全置換術(THA)が主流です。また、大腿骨頚部骨折でも比較的若い患者さんではTHAを行なう場合が増えています。

変形性股関節症のほか、大腿骨頭壊死関節リウマチ、一部の大腿骨頚部骨折が適応となります。関節を取り除き、チタン合金などでできたインプラントを骨に埋め込みます。骨盤側のカップにはポリエチレン製のライナーと呼ばれる受け皿を取り付け、大腿骨側のステムにはセラミックや合金でできた骨頭ボールを付けます。
インプラントは改良を重ねて品質が向上しており、従来に比べて摩耗に強く耐用年数の長い製品を使用することができるようになっています。

人工股関節置換術は最終的な方法なので、変形性股関節症と診断されたからといってすぐに手術をするわけではありません。保存的治療でも十分治療が可能な場合もありますし、骨切り術で一生持つ方もいます。
しかし、インプラントの耐用年数と再手術のことを考え、状態が悪いのにいたずらに手術を先延ばしにすることはよくありません。現在はインプラントの耐用年数が伸びているので、患者さんひとりひとりの状態にあわせ、適切な時期に手術をすることが大切です。

  • 入院前検査:採血・採尿・心電図・胸部X線などを行います。
  • 自己血貯血:手術時の出血に備えてご自身の血液400mlを事前に採取・保存しておきます。
  • 手術前の確認:既往歴や持病、現在服用中の薬を確認します。術後感染予防のため、治療中の虫歯や皮膚に潰瘍などがある場合はお申し出下さい。
  • 麻酔:原則として全身麻酔と硬膜外麻酔を行います。
  • 手術時間:手術に要する時間は施設によって異なりますが、私たちの股関節チームでは患者さんの負担を最小限にすべく短時間での手術を心がけています。後方アプローチの場合で30分〜1時間、前方アプローチの場合でも1時間〜2時間程度です。
  • リハビリテーション:手術の2、3日後にはベッドから下りて歩行訓練を開始し、約3週間かけて退院に向けた筋力強化や日常生活動作のトレーニングを行います。

入院中に十分なリハビリテーションを行うため、約3週間の入院期間を目安としています。費用については、加入されている保険の種類により自己負担額が1〜3割となりますが、高額療養費の申請をしていただくことで自己負担限度額の範囲内で治療を受けることができます。詳しくは医療機関の入退院事務を取り扱う窓口でお尋ねいただき、保険の種類に応じて所定の手続きをして下さい。

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