インタビュー

生物学的製剤・JAK阻害剤を用いた関節リウマチ治療

生物学的製剤・JAK阻害剤を用いた関節リウマチ治療
守田 吉孝 先生

川崎医科大学附属病院 リウマチ・膠原病科

守田 吉孝 先生

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関節リウマチを患っている患者さんは、日本で約80万人もいるといわれています。近年、日本で保険適用が認められ、数多くの効果を示している生物学的製剤・JAK(ジャック)阻害剤に注目が集まっています。生物学的製剤・JAK阻害剤とはいったいどういった薬なのでしょうか? また、生物学的製剤・JAK阻害剤を利用するにあたって私たちが気をつけるべきことには何があるのでしょうか? 川崎医科大学 リウマチ・膠原病学教授 守田(もりた) 吉孝(よしたか)先生にお話を伺いました。

※本記事は、守田 吉孝先生ご監修「小冊子:関節リウマチの薬物治療ハンドブック(2019年作成、ファイザー株式会社発行)」を基にしています。

生物学的製剤とは、最先端技術によって作られた医薬品で、日本では2003年から関節リウマチに対して使われ始めました。生物学的製剤には、この薬が作用する相手という観点で分けると、炎症性サイトカイン(免疫細胞同士の情報伝達などに利用される)に作用するものとT細胞(免疫細胞の司令塔としてのはたらきをもつ)に作用するものの2つの種類があります。これらは、関節炎や軟骨・骨の破壊に関係しているので、どちらに作用するにしても、生物学的製剤は、関節の破壊を抑制する効果が優れているといわれています。

JAK阻害剤は2013年から使用され始めた医薬品です。この薬は注射剤である生物学的製剤とは異なり、飲み薬ですが、関節リウマチの炎症に関わる複数のサイトカインとT細胞の過剰な反応を同時に抑えられることが特徴です。新しいお薬なので、長期的な安全性についての検討が課題ですが、有効性はとても高いです。

関節リウマチは、さまざまな要因が元で、体の免疫システムが自分の体の正常な部分(関節リウマチでは、特に関節)に反応してしまい、攻撃してしまう病気です(免疫システムはたとえば菌やウイルスなど自分の体以外のものに反応し、体をそれらから守るはたらきがあります)。関節が攻撃されてしまう結果、関節に炎症が起き、軟骨や骨が破壊されます。また関節以外の場所にも攻撃する可能性もあり、肺、心臓、目などが標的となることもあります。その結果、全身のだるさ、発熱、関節の痛み、関節の変形、目の違和感・充血などが見られることもあります。

では、免疫システムはどのようにして、私たちの体を異物から守ってくれているのでしょうか? 免疫システムには多くの種類の細胞があり、それらが関わり合うことで異物(ウイルスや細菌など)を攻撃、それらから私たちの体を守っています。この細胞たちの関わり合い(=情報の伝達)にサイトカインが使われます。また、免疫システムの司令塔としての役割をT細胞は担っています。

関節リウマチでは、T細胞が誤って自分の体に反応してしまい、自分の体を攻撃するように司令するようになってしまいます。多くの免疫細胞にはたらきかける結果、サイトカインも多量に分泌され、免疫細胞が自分の体を攻撃してしまうことで発症します。

生物学的製剤やJAK阻害剤は、司令塔であるT細胞が自分の体に反応することを防いだり、分泌されたサイトカインがはたらかないようにしたりすることで、関節リウマチの進行や症状を抑えます。

関節リウマチ病態と分子標的薬
関節リウマチ病態と分子標的薬
出典:守田吉孝先生監修「小冊子:関節リウマチの薬物治療ハンドブック(2019年作成、ファイザー株式会社発行)」

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