医学が進歩した現在でも、治療が困難な病気は少なくありません。その1つに膠原病があります。膠原病とは“全身性自己免疫性疾患”とも呼ばれるもので、本来であれば体を病原体などから守るはずの免疫システムが誤作動を起こして、自分の体を攻撃するようになる病気です。最近ではこれらのはたらきを抑制する医薬品として、“生物学的製剤”や“JAK阻害剤”が用いられるようになってきました。“生物学的製剤”や“JAK阻害剤”とはどのような医薬品なのか、またどのような病気に用いられるのか、川崎医科大学 リウマチ・膠原病学教授の守田 吉孝先生に解説していただきます。
生物学的製剤とは化学的に合成した医薬品ではなく、生物が合成する物質(たんぱく質)を応用して作られた治療薬の総称です。これまでの研究から、関節リウマチでは“サイトカイン”という免疫に関わる物質が通常よりも増えて、関節に炎症を起こしていることが分かりました。
つまり、サイトカインのはたらきやサイトカイン自体を生産する細胞のはたらきを抑えられれば、関節リウマチをはじめとした免疫の誤動作によって起こる病気は、コントロールが可能になります。そこでバイオテクノロジーの進歩により、サイトカイン自体やサイトカインを生産する細胞のはたらきを抑える医薬品が開発されたのです。それが“生物学的製剤”です。
関節リウマチにおいては、8~9割の方で有効性が確認でき、その内の3~4割の方に著効(かなり有効なこと)が認められています。関節リウマチは病気が治ることはないものの、症状が起きない“寛解”という状態を維持できることが分かっています。また、寛解の状態が続けば、生物学的製剤を中止しても寛解を維持することができる方もいます。また、生物学的製剤の投与によって破壊された関節が修復されるケースがあることも分かっています。
JAK阻害剤は生物学的製剤より後に登場した治療薬です。生物学的製剤と同様にサイトカインのはたらきを抑える効果があります。生物学的製剤が皮下注射あるいは点滴で使用されるのに対し、JAK阻害剤は飲み薬であるのが特徴です。また、JAK阻害剤の有効性は、生物学的製剤とほぼ同等であることも分かってきました。
関節リウマチと同様の原因で起こるほかの病気についても、生物学的製剤を使用できることが分かってきました。具体的には、以下のような病気があります。
など
関節リウマチの治療において生物学的製剤・JAK阻害剤はこれまでの抗リウマチ薬に比べ、関節破壊抑制効果が優れていることが知られています。従来の抗リウマチ薬でコントロールができない場合、できるだけ早期に生物学的製剤・JAK阻害剤を使用して、関節の破壊が起きないようにする治療指針が国際的にも支持されています。ただし生物学的製剤・JAK阻害剤は一般的に高価で、患者さんにとって経済的負担が高くなってしまうという課題を残しています。
また生物学的製剤・JAK阻害剤の投与にあたっては、体の免疫に影響を与えるため、感染症が起きやすくなります。そのため、主治医のもとで経過観察を行いながら慎重に投与します。特に重症感染症であるニューモシスチス肺炎や細菌性肺炎、結核などの感染症には注意が必要です。発熱・咳・息苦しさなどの異常を確認したら、医師は直ちに胸部X線などの検査を行うことが望ましいといえます。
また、日本人の患者さんは帯状疱疹にかかる割合が高いといわれています。帯状疱疹は、皮膚の発疹が出る前に、“チクチク、ズキズキ、ヒリヒリ”などの痛みが出るのが特徴です。50歳以上の方にはワクチン接種も可能ですので、医師と相談しましょう。
川崎医科大学附属病院 リウマチ・膠原病科
関連の医療相談が44件あります
リウマチと蜂窩織炎で入院中、家族がコロナ感染
現在リウマチと蜂窩織炎で3週間入院し、3日後退院します。その間家族が2人新型コロナ感染し、私の退院時、感染13日目、14日目となります。抗原検査では陰性となったようですが、若干咳と鼻詰まりがあるそうです。熱は2人とも2、3日で治りました。大丈夫だと思うのですが、私の退院後感染する可能性はありますか?注意することはありますか?教えてください。よろしくお願い致します。
両肩の痛みと指先の痺れ痛みと足の裏の腫れについて
高齢の母が、2ヶ月前両肩が痛くなり、着替のとき痛みがある程度でした。その後寝返りがうてなくなりました。今は両手の指先痺れて痛みが一日中あるようで、痛みがあるときは指先は冷たくなってます。手の甲も腫れてます。年齢的なことや症状からリウマチ性多発筋痛症ではないかと思いましたが、診断は関節リウマチでした。血液検査は、リウマチ因子13、抗CCP抗27、MMP-3は200.でした。CPR10です。ただ、手の関節レントゲンをとってもとても綺麗で異常ありません。関節リウマチという診断は、正しいですか。
左右の人差し指を曲げると痛くて曲がらない。
数ヶ月前から右人差し指が痛くて曲がらなかなり、左も同じ症状で困っています。先日、整形外科に行きました。レントゲンも異常は無く、リウマチ検査も異常無しでした。 原因不明ということでした。 他の膠原病の疑いがあるかもしれないので、生活に支障があるなら、専門医に行くよう言われました。
全身性エリテマトーデスについてのお伺い
10年以上前から関節リウマチの治療をしている母親なのですが、3年前に13万近くあった血小板が半年位で6万くらいになり現在3万位に減ってきました。2018年9月から関節リウマチの薬(リウマトレックス)を止めプレドニゾロンを2㎎から徐々に増やし8㎎まで増やし、血小板の変化を診てもらいましたが変化なく、今年に入りてんかん重積発作で3度救急搬送されました。 検査の結果、MRI、MRA、CT、髄液検査、ウイルス検査、特に問題なし。強いて言うならMRIの画像で脳の表面にベトっとした影があるが解らないとの診断でした。 血小板が減少してしまう症状は外来診察して原因を見つけている間にてんかん重積発作を起こした為原因不明の状態です。 そこでお伺いしたいのが、 全身性エリテマトーデスと言う疾患についてなのですが、現在関節リウマチの治療をしていましたが、自己免疫の変異により全身性エリテマトーデス(中枢神経ループス)を合併する事はあるのでしょうか。 全身性エリテマトーデス(中枢神経ループス)は脳神経への影響がありけいれん、意識障害、精神症状、血小板減少症状が現れ、蝶型紅斑も特徴的だと思うのですが、母親は頬に少し赤みが出てり手のひらが真っ赤になったり、血小板減少し始めてから脱毛、昨年末頃首の痛みや腰の痛みにより寝たきりになる事も多く発熱する事もあり痙攣重積発作も発症しましたが脳卒中や脳外傷、ウイルスも検出されなかったことから全身性エリテマトーデスではないかと予測したのですが可能性はありますでしょうか。 現在は3度目の重積発作後薬による副作用なのか発作の後遺症なのか全身性エリテマトーデスの進行による意識、神経、精神障害なのか解りませんが、寝たきり状態でこちらからの問い掛けにもたまに返答する程度で良く話していた母親ですが今では別人の様に無表情になってしまいました。 今強い抗てんかん薬を投与していますが、もし全身性エリテマトーデスが原因で現在の状況になっているのであれば薬の変更など可能なのでしょうか。 宜しくお願い致します。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「関節リウマチ」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。