けんびきょうてきたはつけっかんえん

顕微鏡的多発血管炎

最終更新日
2021年05月12日
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2021/05/12
更新しました

概要

顕微鏡的多発血管炎は、腎臓や肺、皮膚や末梢神経(まっしょうしんけい)などに多く存在する小型血管に炎症を起こすことが特徴で、診断が遅れるとこれらの臓器の機能が低下し、致死的な経過を招くこともあります。発熱や倦怠感といった全身症状のほか、障害されている臓器に応じた症状(腎障害や喀血など)が現れます。

ANCA(アンカ)と呼ばれる自己抗体が血液中の成分を攻撃することで炎症を起こすとされていますが、詳しい発症原因は不明で難病にも指定されています。発症頻度に男女の差はなく、70歳代以降の高齢の方に多く見られます。

原因

自分の血液中に含まれる好中球を攻撃する自己抗体(ANCA)が好中球中のタンパク質(ミエロペルオキシダーゼ)に作用することで血管に炎症を起こしています。ANCAが関わる血管炎の1つであるため、血管炎のうちANCA関連血管炎と呼ばれるグループに属します。

このような反応が起こる詳しい原因は分かっていませんが、リウマチなどほかの自己免疫疾患と同様に、何らかの自己免疫の異常が発生していると考えられています。

症状

顕微鏡的多発血管炎でもっともよく見られる症状は発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状と腎臓または肺の急激な機能の低下、神経障害です。

腎障害が起こると、体のむくみや、血尿、タンパク尿、赤血球円柱などの尿検査異常が見られます。肺障害が起こると空咳、息切れ、血痰、喀血などが現れます。神経障害の症状は四肢のしびれや運動障害です。病気の進行が速い場合、これらの症状が数週間~数か月単位の短期間で急速に悪化することもあります。

これらのほかに、あざや皮膚の潰瘍(かいよう)、関節痛、筋肉痛などが見られることもあります。

検査・診断

診断は症状と顕微鏡的多発血管炎で認められるMPO-ANCAと呼ばれる自己抗体の有無や、血液検査や尿検査、胸部X線の結果、異常が見られる組織の病理組織診断などから判断されます。特に、炎症が起きている組織の一部を採取し、顕微鏡で観察する病理組織診断は確定診断のために重要な検査です。

診断の際には厚生省のMPA診断基準(1998年作成)を参考にします。診断基準は、顕微鏡的多発血管炎に特徴的な臓器症状(急速進行性糸球体腎炎、肺胞出血、間質性肺炎、紫斑、皮下出血、消化管出血、多発性単神経炎など)が複数見られ、かつ病理組織診断で小型血管の壊死(えし)や炎症が見られた場合や、MPO-ANCAが陽性の場合に顕微鏡的多発血管炎と確定します。全ての基準を満たさない場合でも、一部に該当してほかの病気が除外できる場合には顕微鏡的多発血管炎が疑われることもあります。

治療

顕微鏡的多発血管炎は急激に病状が悪化し、命に関わることもあるため、早期に確定診断を行い適切な治療を始めることが大切です。治療では血管の炎症を鎮める必要があるため、ステロイド薬や免疫抑制薬による薬物治療が中心となります。

まずは血管の炎症を完全に消失させるために強いステロイド薬や免疫抑制薬を使用し、寛解と呼ばれる状態を目指します(寛解導入療法)。使用する薬は症状の程度によって異なり、症状が重い場合は大量の治療薬を使用したり、リツキシマブと呼ばれる新しい薬を用いたりすることもあります。

寛解が得られた後は寛解を維持するための寛解維持療法に切り替え、薬を減量したり弱い薬に変更したりしながら長期にわたって服薬を続けます。

治療にかかる期間は個々の状態にもよりますが、寛解導入療法は1~6か月程度、寛解維持療法は長期間行われることが一般的です。

治療による症状のコントロールに加え、治療中はステロイド薬と免疫抑制薬のはたらきで感染に弱くなるため、感染症予防と早期の治療が必要になります。

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