概要
ANCA関連血管炎とは、血液検査でANCA(抗好中球細胞質抗体)と呼ばれる抗体が検出されることを特徴とする病気を指します。ANCA関連血管炎には、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)といった3つの病気を含みます。
血管炎では、全身の血管に炎症が起きて血管が狭くなるために臓器への血液の流れが悪くなります。その結果、酸素や栄養分が不足して臓器のはたらきが悪くなり、進行すると臓器に障害が起こるようになります。
原因
ANCA関連血管炎は、ANCAと呼ばれる自己抗体と関連して発症する病気です。血液中には白血球が存在しますが、その中には好中球と呼ばれるタイプの細胞があります。自己抗体が出現することで好中球が活性化され、ANCA関連血管炎の発症に至ります。
ANCAが存在すると、活性化された好中球が特定の血管に対して炎症を引き起こすようになります。本来炎症は、病原体やけがなどに際して引き起こされる生体の防御反応ですが、ANCA関連血管炎ではそうした事態がないにもかかわらず、不要な炎症反応が血管で引き起こされることになります。その結果として、全身の各部位において血管炎が生じるANCA関連血管炎の発症に至ります。
症状
ANCA関連血管炎には、顕微鏡的多発血管炎、肉芽腫性多発血管炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症といった3つの病気が含まれ、共通する症状ならびに各種疾患に特徴的な症状があります。
顕微鏡的多発血管炎では、発熱や体重減少などと共に数週間から数か月の経過で急速に腎臓の機能が低下することが懸念されます。
多発血管炎性肉芽腫症では鼻の根元がへこむ状態である“鞍鼻”と呼ばれる症状、肺に障害が生じることから血痰や息切れなどの症状が出現します。腎臓の血管に炎症が生じることで腎機能障害が引き起こされることもあります。
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症では、喘息やアレルギー性鼻炎に伴って発熱や体重減少が見られることが特徴です。そのほかにも、血痰や息切れ、むくみ、しびれなどが生じることもあります。
検査・診断
ANCA関連血管炎では、特徴的な症状に加えて血液検査でANCAを検出します。自己抗体の検出は、ANCA関連血管炎の診断に際して重要な項目となります。
そのほかにも、臓器障害を評価するための血液検査、尿検査、画像検査、生検なども組み合わせます。以上のように自覚症状、身体所見、各種検査項目を含めたうえでANCA関連血管炎の確定診断を行います。
治療
ANCA関連血管炎は自己免疫の異常を基盤として発症する病気であるため、自己免疫異常を是正することを目的とした治療が行われます。具体的には、ステロイドや免疫抑制薬、大量ガンマグロブリン療法、リツキシマブなどの治療方法が選択されます。
さまざまな治療選択肢のあるANCA関連血管炎ですが、症状の程度や妊娠状況の有無、臓器障害の程度などを総合的に加味したうえで、どの治療方法が適切かを最終決定します。
ANCA関連血管炎では、診断から治療にかけて高い専門性が要求される病気です。そのため、病気が疑われる際には診療に長けた医療機関での治療を受けることが大切です。
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