きょさいぼうせいどうみゃくえん

巨細胞性動脈炎

血管

目次

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概要

側頭部に存在する動脈を中心に炎症が生じるため、以前は「側頭動脈炎」と名付けられていましたが、側頭動脈以外にも体内で一番太い動脈である大動脈およびその分岐した動脈にも炎症をきたすこともあり、現在では、「巨細胞性動脈炎」と名称が変更されています。

巨細胞性動脈炎は、全身のだるさや食欲低下、体重減少、発熱といった非特異的な症状が生じることがあります。治療では、動脈の炎症を抑えることを目的としてステロイドを中心とした過剰な免疫応答を抑える免疫抑制療法を用います。最悪の場合、目を栄養している動脈が障害され、失明に至ることがあります。

原因

巨細胞性動脈炎の原因は、明らかになっていません。遺伝病ではありませんが、遺伝的な体質とウイルス感染などの環境要因が影響して、自己の免疫反応が自分自身の動脈へ炎症を惹起させ、動脈の障害をきたすものと考えられています。

症状

巨細胞性動脈炎では、1.全身のだるさや食欲低下、体重減少、発熱といった全身の炎症に伴う症状と、2.動脈に炎症が生じ、血液の流れが悪くなることにより生じる症状に分けられます。

側頭部の動脈に炎症を起こすと、これに関連してこめかみの血管が腫れる、頭が痛い、食べ物を噛んでいると顎がだるくなる、痛くなるといった症状が生じます。

さらに、視力を形成するのに重要な目の動脈が障害を受けてしまうと、目の痛みやものが見えにくいといった症状が出現することがあり、最悪の場合失明に至る可能性もあります。

同様に、脳、心臓、手足を栄養している動脈に炎症を来し、半身麻痺や呂律障害などの脳梗塞に関連した症状、胸痛などの心筋梗塞に関連した症状、手足が冷たい・疲れやすいといった血管内の血液の流れが悪くなる症状が出現することもあります。

大動脈に炎症が生じると動脈が拡張し、大動脈瘤を併発することもあります。

また、巨細胞性動脈炎の方の3割くらいに、肩・腰・ふとももの筋肉が痛くなるリウマチ性多発筋痛症を併発すると言われております。

検査・診断

巨細胞性動脈炎は、症状が出現した時の年齢(50歳以上であること)や頭痛をはじめとした上記のような症状などから疑われます。検査としては、血液検査、動脈の画像検査や病理検査が行われることがあります。

血液検査では、赤血球沈降速度やC反応性蛋白による炎症反応を評価します。

画像検査として、超音波検査、CT、MRIなどで全身の太い動脈の状態を評価します。また、2018年4月からFDG-PETという全身の太い血管の炎症の有無を包括的に評価できる検査も保険適用となりました。

病理検査は、こめかみより側頭動脈の一部を採取して、動脈にこの病気でみられる特有の組織変化を顕微鏡で観察する検査です。

治療

巨細胞性動脈炎では、炎症を抑えるためにステロイドを用いた治療を行います。失明の恐れがある場合には、ステロイドパルスと呼ばれるステロイドを点滴で大量に投与する方法を用いることもあります。

また、ステロイド単剤治療で効果不十分であったり、ステロイド減量で再燃を繰り返す場合には、免疫抑制薬を併用します。2017年8月には、炎症に関連したIL-6というタンパクを選択的に抑えるトシリズマブという新しいお薬も使用できるようになりました。

その他、失明や脳梗塞を予防するためにアスピリンの使用も検討されます。

巨細胞性動脈炎は、ときに失明の危険性を伴います。これまでに感じたことがない頭痛、顎を動かしたときの疲れやすさ、ものが二重に見える、といった症状は、巨細胞性動脈炎を早期発見するためのポイントとなる症状です。これら症状がみられる際には、医療機関を受診することをおすすめします。

また、診断後3〜5年以上経て大動脈瘤が形成され、大動脈解離を起こすこともあります。この場合には死に至る危険性もありますので、定期的に経過を観察することも重要です。