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ベーチェット病

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概要

ベーチェット病(Behçet’s disease)とは、次の4大主症状を特徴とする炎症性疾患です。

  • 口腔粘膜のアフタ性潰瘍(口内炎)
  • 外陰部の潰瘍
  • 皮膚症状(結節性紅斑など)
  • 眼症状(ぶどう膜炎)

この4症状のうち、口腔粘膜のアフタ性潰瘍はほとんどの患者さんにみられます。ベーチェット病は慢性の経過をとる病気であり、上記の症状は繰り返し生じる傾向があります。 発症のピークは30歳代で、男女比はほぼ1対1とされます。ただし、ベーチェット病のなかでも重症型は男性に多く、特に若年発症した方に多いといわれています。

原因

2017年11月現在、その原因は不明です。専門家間の推測では、何らかの内因(遺伝素因)に外因(感染病原体やそのほかの環境因子)が重なり、白血球の機能が過剰となり、炎症を引き起こすとも考えられています。

内因(遺伝素因)

内因のなかで一番重要視されているのが、白血球の血液型ともいわれるヒトの組織適合抗原であるヒト白血球抗原(HLA)のなかのHLA-B51というタイプで、健常者に比べその比率がはるかに高いことがわかっています。そのほか、HLA-A26も日本人に多くみられるHLAのタイプといわれています。

また近年、HLA以外にIL-10、IL-23受容体抗体などの疾患感受性遺伝子が同定され、自然免疫系の異常、自己免疫機序の双方が病態に関与すると想定されています。

外因(感染病原体やそのほかの環境因子)

以前より齲歯(うし:むし歯)や扁桃腺炎があるとしばしば病気の悪化がみられることから、虫歯菌を含む細菌やウイルスなどの微生物の関与が想定されてきました。

ベーチェット病の遺伝的素因を持った方に、これらの微生物が侵入すると、異常な免疫反応が炎症を引き起こし、結果としてベーチェット病の発症に至るという考えが有力です。

症状

ベーチェット病の主症状は、口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、皮膚症状、外陰部潰瘍、眼病変の4つです。

口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍

高い割合で、最初に症状として現れます。口唇、頬粘膜、舌、歯肉、口蓋粘膜に円形の境界のはっきりした軽い痛みなどを伴う潰瘍ができます(いわゆる口内炎)。大半は10日以内に傷あとを残さずに治癒しますが、再発を繰り返します。

皮膚症状

主に下腿伸側に赤い発疹ができ、皮下に痛みを伴う硬いしこりのようなものができます(結節性紅斑様皮疹)。また、ニキビに似た皮疹(ざ瘡様皮疹)が、顔面、頚部、背部などにみられます。そのほかにも、かみそり負けや静脈穿刺後の血栓性静脈炎が起こりやすくなります。

外陰部潰瘍

痛みを伴う境界線のはっきりしたアフタ性潰瘍で、男性では陰嚢、陰茎、亀頭に、女性では大小陰唇、腟粘膜に好発します。見た目は口腔内アフタ性潰瘍に似ていますが、深掘れになったり、痕を残したりすることもあります。

眼病変

この病気での重要な症状です。ほとんど両眼が障害されます。前眼部病変として虹彩毛様体炎が起こり、発作性に眼痛、羞明(まぶしく感じる)、霧視(目のかすみ)、瞳孔不整などがみられます。後眼部病変として網膜ぶどう膜炎を起こすと視力低下や視野障害を生じ、発作を繰り返すことで障害が蓄積し、失明に至ることがあります。

副症状

これらの主症状以外に、関節炎、副睾丸炎、血管病変、消化器病変、中枢神経病変といった副症状があります。

関節炎

膝、足首、手首、肘、肩などの四肢の大関節に、一過性に腫脹、疼痛、発赤が出現し、1~2週間で症状が消えます。

副睾丸炎

一過性、再発性の睾丸部の腫脹、圧痛を伴い、男性患者の約1 割弱にみられます。

血管病変

血管の大きさを問わず、動脈、静脈ともに障害されます。深部静脈血栓症がもっとも多く、上大静脈、下大静脈、大腿静脈などに好発します。

消化器病変

腹痛、下痢、下血などが主な症状で、腸管潰瘍が進行すると消化管出血や腸管穿孔を起こし、緊急手術を必要とすることがあります。

中枢神経病変

大きく髄膜炎、脳幹脳炎として発症し急性に進行する急性型と、片麻痺、小脳症状、錐体路症状などの神経症状に加え、認知症などの精神症状をきたす慢性進行型にわかれます。

 

検査・診断

ベーチェット病の診断確定にいたる特定の検査方法はありませんが、以下を参考にします。

  • 皮膚の針反応:滅菌した20~22ゲージの注射針を刺入した皮膚の部位に48時間後に径2mm以上の発赤・腫脹・小膿疱が出現すれば、陽性とみなします。
  • 炎症反応:赤沈値の亢進、血清CRP値の上昇、末梢血白血球の増加、補体価の上昇などがみられますが、非特異的です。
  • 遺伝子検査:HLA-B51の陽性(約60 %)、HLA-A26の陽性(約30 %) 。
  • 免疫グロブリン:血清IgD、IgAの増加が参考になることがあります。
  • 病理所見:皮膚病変や腸管病変に、血管周囲への細胞浸潤、血栓形成を呈します。
  • 画像所見:腸管型に対する消化管内視鏡検査、血管型に対する血管造影、造影CT、MRA、PET-CT、神経型に対する頭部MRI検査などを行います。

治療

まずは、むし歯予防などの口腔内ケア、疲労・ストレスの回避などの生活指導を行います。次に、薬物治療を実施します。

皮膚粘膜症状、関節炎

口腔内アフタ、陰部潰瘍にはステロイド軟膏、疼痛対策としてのリドカインゲル、局所清潔の保持が重要です。また、コルヒチンは結節性紅斑、陰部潰瘍、関節炎に有効とされており、サラゾスルファピリジンや非ステロイド消炎鎮痛剤が関節炎に対して使用されることもあります。

眼症状

前眼部病変には、ステロイド点眼薬および虹彩癒着防止のための散瞳薬、また後眼部病変の発作時にはステロイド局所注射を行います。眼発作の予防にはコルヒチンを第一選択とし、治療抵抗例にはシクロスポリン、アザチオプリン、インフリキシマブが適応となります。

血管病変

動脈病変や肺動脈瘤にはステロイド、シクロフォスファミド大量療法、静脈血栓症にはアザチオプリン、シクロスポリン、シクロフォスファミドが推奨されています。また、インフリキシマブも適応です。抗凝固薬や抗血小板薬を使用することもあります。

腸管病変

副腎皮質ステロイド、メサラジンなどを使用し、難治性の場合はTNF阻害薬(アダリムマブ、インフリキシマブなど)を使用します。消化管出血、腸管穿孔などは緊急手術の適応となります。

中枢神経病変

急性型の髄膜炎、脳幹脳炎にはパルスを含む大量の副腎皮質ステロイドを要します。また、慢性進行型にはメトトレキサートの週一回の投与やTNF阻害薬などが使用されます。

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