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関節リウマチを早期発見するために――特徴的な症状と治療の選択肢とは?

関節リウマチを早期発見するために――特徴的な症状と治療の選択肢とは?
松原 司 先生

松原メイフラワー病院 院長

松原 司 先生

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関節リウマチは、免疫反応の異常によって関節に炎症が起こり手足に痛みや腫れといった症状をもたらす病気で、女性に多くみられます。進行すると関節の破壊が進み、日常生活に支障をきたす場合もあります。

そのため、気になる症状があれば早期に診断を受け、早い段階から病気を適切にコントロールすることが重要です。今回は、松原メイフラワー病院 院長の松原 司(まつばら つかさ)先生に、関節リウマチの原因や気を付けるべき症状、治療法についてお話を伺いました。

関節リウマチは、免疫反応*の異常により関節にある滑膜(かつまく)**という組織が増殖することによって炎症が起こり、痛みや腫れなどの症状をもたらす病気です。滑膜に生じた炎症は次第に関節の中の骨や軟骨を侵食し、最終的には関節の疼痛(とうつう)を起こしたり、変形をきたしたりします。また、頻度は少ないものの、肺やそのほかの臓器に症状が現れるケースもあります。

私が院長を務める松原メイフラワー病院は関節リウマチの患者さんを積極的に受け入れており、1か月に700~800人ほど(2022年)が来院されています。

*免疫反応:体外から侵入した細菌やウイルスなどを攻撃し、排除するはたらき。免疫反応に異常があると自分自身の組織を攻撃してしまうため、炎症が起こる。

**滑膜:関節組織の一部で、軟骨を包み、潤滑油のはたらきをする関節液を分泌する。関節は関節液により滑らかに動く。

患者さんの男女比はおよそ1:4で、関節リウマチは女性に多い病気です。30〜50歳代の方に起こりやすいといわれていますが、社会全体の高齢化に伴って近年は発症年齢が上昇傾向にあり、60歳代以降に発症するケースも増えています。高年齢発症の場合には、患者さんの数に男女差はほとんどありません。

関節リウマチの原因は明らかになっていませんが、遺伝的背景が大きなリスク要因であると考えられており、家族内に関節リウマチの方がいる場合、発症頻度が上がるといわれています。

また、喫煙習慣や虫歯、歯周病といった口腔内(こうくうない)の病気も関節リウマチの発症に関与するケースもあるといわれています。この病気の予防には、禁煙とともに口腔内の健康管理も重要といえるでしょう。

発症初期には9割以上の方に関節の症状がみられ、主に手足の指や手首に腫れや痛みが現れます。手については多くの場合、指の第2関節、第3関節に症状が出ます。ただし、高年齢発症の関節リウマチにおいては、膝関節(しつかんせつ)股関節(こかんせつ)といった大きな関節から発症するケースも少なくありません。

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炎症が強い場合は、安静時にも痛みを感じることがあります。また、関節リウマチの特徴的な症状として、朝、起床時の手のこわばりが挙げられます。これは、就寝中に一定時間動かさずにいた手を起床とともに動かそうとするために起こるもので、手袋をはめたまま指を曲げるような、ごわごわとした重い感覚があるでしょう。さらに、腫れがひどくなると赤くなったり熱を帯びたりするのも、関節リウマチの特徴です。

炎症が進行すると、関節の破壊が進みます。軟骨がなくなったり骨が侵食されて変形したりするため、曲げる、伸ばす、歩くといった動作時に痛みが生じ、日常生活に影響を及ぼすケースもあります。

頻度は低いものの、関節以外の場所に症状が現れるケースもあります。たとえば、腱や筋の滑膜に炎症が起こると、腱が壊れて指を伸ばせなくなることもあります。

また、“リウマチ肺”とも呼ばれる間質性肺疾患(肺の中にある、ぶどうの房状の肺胞組織に炎症が起こる)を生じると、空咳(からせき)(痰が絡まない咳)や息切れなどが現れるようになります。このような状態になると、病気のコントロールが難しくなるため注意が必要です。そのほか、全身倦怠感や微熱などの症状が出る場合もあるでしょう。

関節リウマチは、早期に適切な治療を開始すれば、症状のコントロール、病気の進行抑制が可能です。早期発見によって、できる限り早く治療をスタートすることが大切といえます。

関節リウマチの初期症状としては、先ほどお話しした朝の手のこわばりといった症状がポイントになるでしょう。目覚めたときに手が重いと感じたら、関節リウマチの疑いがあります。また、痛みが現れる前の症状として、しびれを訴える患者さんも少なくありません。ジンジンする感じがした後に痛くなる、あるいは指先が少ししびれるとおっしゃる方もいますので、このような症状が出たら早めに受診してください。

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最初に受診される場合、関節に痛みが出て異変に気付くケースがほとんどであるため、整形外科を受診される方が多いようです。また、内科でもリウマチを専門に診療している医療施設であれば、適切な診断を受けられるでしょう。

関節リウマチが疑われる場合には、血液検査で抗CCP抗体*やリウマトイド因子(RF)の有無をチェックするなど複数の指標から診断します。また、変形性関節症(加齢などにより軟骨がすり減って痛みが生じ、関節の変形に至る病気)など類似する病気との鑑別**も行います。

*抗CCP抗体:関節リウマチに特異性の高い抗体。関節症状があり、抗CCP抗体が陽性の場合、関節リウマチの可能性が高いといえる。

**鑑別:症状がほかの病気から生じたものでないことを確認し、病気を絞り込む診断。

薬物療法

症状が目立って強いという例を除き、多くの場合、初期段階では抗リウマチ薬のDMARDsのうち従来型(csDMARD)の薬を使って免疫異常を抑制し、関節の炎症や病気の活動性を抑える治療を選択します。

病気の活動性が高くコントロールが難しい場合には、メトトレキサートという抗リウマチ薬を使用します。メトトレキサートは現在、関節リウマチのアンカードラッグ(中心的役割を担う薬)であり、高い骨破壊進行抑制効果が報告されています。メトトレキサートを一定期間使用しても病気を十分にコントロールできない場合には、生物学的製剤*やJAK阻害薬**による治療を試みます。基本的に、治療においては1~3か月ごとに病気の活動性を評価し、3か月で効果がみられない場合には別の治療法を検討することとされています。

上述のような治療により、多くの患者さんが寛解***、またはほとんど症状がないといえる状態まで回復されます。特に生物学的製剤やJAK阻害薬は有効性が高く、ひと昔前までは痛みの抑制が治療の目的だったのですが、現在は寛解が明確な目標になっています。寛解の状態をいかに維持していくかが、長期にわたる治療のポイントなのです。また、長期間同じ薬を使用し続けると効果が弱くなる場合があり、その際には寛解を維持するため薬の変更を検討します。近年は薬の選択肢が増えており、長期にわたって病気をコントロールしやすくなったといえます。

*生物学的製剤:バイオテクノロジー技術によって生み出された医薬品で、高価ながら高い有効性が期待できる。特に関節破壊抑制効果に優れているとされる。

**JAK阻害薬:関節の炎症を起こす要因となる炎症性サイトカインによる刺激を細胞内に伝達するJAK(Janus kinase)という酵素のはたらきを抑える薬。

***寛解:病気の症状などが抑えられている状態。

リハビリテーション

関節リウマチの治療では、薬物療法と併せてリハビリテーション(以下、リハビリ)の実施も大切です。関節リウマチになると、痛みや腫れなどの症状によって関節を動かしづらくなります。そのため、関節の可動域(動かせる範囲)が狭くなってしまったり、筋力が低下してしまったりすることがあるのです。このような状態を可能な限り防ぐために、運動を行うことが有効といわれています。

また、装具療法といって、関節の変形を予防したり痛みを抑えたりするために装具を使用することもあります。たとえば、手首を固定するために装具をつけるケースがあるでしょう。

手術

お話ししたように、近年は薬が進歩したため、早期から薬物療法による治療を行うことで寛解を目指すことができます。ただし、関節が破壊され変形が進んだ場合には、手術を行う例もあります。

手術には、主に以下のような種類があります。

  • 人工関節置換術……破壊された関節を人工の関節に置き換える手術法
  • 関節形成術……関節のアライメント(位置関係)を変えることによって、除痛を行う手術法
  • 関節固定術……不安定な関節を固定する手術法

いずれの手術でも関節破壊による痛みなどの症状の改善が期待できるでしょう。なお、術後は薬物療法やリハビリなど、必要に応じてほかの治療法を併用するケースがあります。

治療薬を決定するには、病気の活動性を判断し、コントロールできているかどうかを見極める必要があります。また、肝臓や腎臓の機能障害といった副作用が出たり、アレルギー反応により皮膚に湿疹が出たりすることもあるため、全身の状態をチェックしながら治療を進める必要があります。そのため、適切な治療を継続するには定期的な通院が欠かせません。

さらに、妊娠・出産を希望される女性の患者さんの治療においては、胎盤に移行しにくい薬を選択するといった配慮が求められます。

薬物療法では、自己注射による治療も選択可能な場合があります。これにより受診頻度を減らせるケースもありますが、副作用を早期発見し、適切に薬の用量や種類を調整できるよう3か月に1回程度の定期通院は必要でしょう。当院では2か月に1回程度の受診をお願いしています。また、患者さんには薬の継続服用の重要性を丁寧にご説明し、飲み忘れには十分注意するようお伝えしています。

なお、仕事をされている方の場合、全身倦怠感が強ければフルタイムでの就業は難しく、また関節に過度の負担がかかる仕事を続けると炎症が強くなる可能性があります。病気をどの程度コントロールできているかを見極め、基本的には体に大きな負担がかかる仕事は避けるようお話ししています。

当院では、遠方にお住まいで毎回当院に通院するのが難しいという患者さんには、毎月の診療は地元のかかりつけの医院で受けていただき、3か月~半年に1回程度、当院で詳しくチェックするといった取り組みも行っています。

病状に変化があった場合など、受診を希望される患者さんがいらっしゃればできる限り受け入れ、責任をもって治療するよう心がけながら地域の病院や医院との連携を図っています。

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当院は、治験にも積極的に協力しています。治験とは、製薬会社が新薬製造の過程で医療施設に依頼して行う臨床試験のことです。

治験では、開発中の新薬の効果を詳細な検査を通して確認していくため、薬の特性を早期に把握できます。治験に積極的に協力していれば、その薬が広く一般に使えるようになった際に、薬の特性に基づいた効果的な治療をいち早く患者さんに提供できると考えているのです。

医師になり、整形外科の道に進んだ当初、恩師がリウマチを専門にしていたことから、リウマチの基礎的な研究に取り組んだ経験があります。その経験を臨床に生かすべく研鑽を積むうちにリウマチへの興味・関心が高まり、現在までライフワークとして続けてきました。

治療では患者さんの症状の見極めが重要ですが、それだけでなく、治療に関する患者さんのニーズを十分汲み取る必要があります。たとえば、関節リウマチの薬には高価なものもありますから、治療費の負担が大きいと感じる患者さんがいらっしゃるかもしれません。しかし、そういったことは医師には言いづらいこともあるようで、看護師や薬剤師にぽろっと話されるケースもあるわけです。そのような患者さんのご意向も医師にしっかり伝わるような体制を整えておかなければなりません。医師、看護師、薬剤師といった医療者がチームを組み、情報共有をしながら連携し、患者さん一人ひとりに合った治療の選択肢を検討する必要があると考えています。

約20年前に生物学的製剤が登場し、それまで病気のコントロールが難しかった患者さんがこの薬により症状が改善し、喜ばれる姿を目にしてきました。たとえば、症状が改善したことで仕事のパフォーマンスが向上し、「これでまともに仕事ができる」と話してくださった方もいます。そのようなときには、治療法の進歩が患者さんに与えるインパクトの大きさを実感します。

関節リウマチは難治性の病気で、つらい痛みを伴うこともあるため大きな不安を感じられるかもしれません。しかし、現在は治療法が進歩してきており、治療の選択肢もあります。適切な治療を継続すれば、ほとんどの症例で発症前に近い状態で日常生活、社会生活を送れるようになるといえるでしょう。

昔の関節リウマチのイメージとはまったく異なる治療効果が期待できるようになっているのです。ですから、関節リウマチと診断されたからといって悲観せず、病気に向き合い、前向きに治療を続けていただきたいと思います。

提供:大正製薬株式会社
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