概要
人工関節置換術とは、膝や肩などの関節を金属などでできた人工の関節に置き換えて、関節機能を回復させる手術のことです。本来の関節が何らかの原因で障害されて痛みが強い場合に、その痛みを取り除いて本来の関節機能を回復させることを目的としています。痛みを取る効果が高い手術方法です。
いずれも病気やけがによって関節が変形したり、傷ついたりした場合に適応されます。術後はリハビリテーション(リハビリ)を行います。はじめは歩行や動作がスムーズに行えるように訓練する必要があるものの、痛みを取り除く効果が高く、手術前に比べても歩行や動作が痛みなく行いやすくなり、生活の質を大きく向上させることが期待できます。
目的・効果
関節が傷つくと日常の動作の中で痛みを感じるようになり、快適な生活を送ることが難しくなります。人工関節置換術は痛みを取り除く効果が高い治療です。関節の痛みを取り除くことで日常の動作がスムーズになり、生活の質を向上させることが期待できます。
種類
人工関節置換術は損傷した関節を人工関節に置き換える治療の総称です。現在日本では、股関節、膝関節、足関節、肩関節、肘関節、手関節、手指関節が使用できます。
いずれも、傷ついた関節部分をインプラントと呼ばれる人工関節部品に置き換えます。手術後はリハビリを行い、入浴、階段の上り下り、トイレなどの日常的な動作ができるように訓練を行います。
人工膝関節置換術
傷ついた膝関節を人工関節に置き換える手術です。損傷の程度が軽い場合は、膝の内側の骨だけを削って置き換える“単顆人工膝関節置換術”が行われることもあります。
人工股関節置換術
傷ついた股関節を人工関節に置き換える手術です。多くの場合で術後早期から歩行することができ、脚長補正も可能です。
人工肩関節置換術
傷ついた肩関節を人工関節に置き換える手術です。
人工肘関節置換術
傷ついた肘関節を人工関節に置き換える手術です。
リスク
合併症
人工関節置換術の代表的な合併症は、以下のものがあります。
感染
人工関節の手術で、細菌感染が起こることがあります。また、人工関節を取り付けた部位の周辺は血流が乏しくなるため、感染を起こすと治りにくくなります。
ゆるみ・破損・摩耗
人工関節の使用に伴って、部品のゆるみ・破損・摩耗などが起こることがあります。場合によっては、新しい人工関節への付け替えや、部品の交換が必要になることもあります。人工関節の使用方法や体格などにも影響されますが、術後10年で9割以上は問題ないことが多いとされています。
深部静脈血栓症・肺塞栓症
人工膝関節置換術や人工股関節置換術といった下肢の人工関節置換術を行う場合、下肢を長時間動かさないことで血栓ができ、下肢がむくんだり、血栓が肺へ到達して肺の血管を塞いでしまったりすることがあります。
適応
人工関節置換術は、変形性関節症や関節リウマチなどの病気や、けがで関節が破損し、痛みがあるときに行われます。
人工関節は一度手術をしても経年使用に伴うゆるみや摩耗のリスクがあるため、手術を行う際は病気の状態に加えて、年齢や日常の活動量、体型(肥満の有無)などを考慮する場合があります。
治療の経過
一般的な入院期間
入院期間は手術の部位や手術前の症状、術式、リハビリの進み具合などによって異なりますが、2週間~4週間程度であることが一般的です。
治療~退院までの流れ
手術を受ける前日~数日前に入院し、X線検査や心電図、血液検査、エコー検査などの術前検査を行います。ほかに、手術を受ける前の注意事項などがあれば医師から事前に説明があります。
手術は全身麻酔または部分麻酔で行われ、個人差があるものの1~4時間程度で終わることが多いでしょう。
手術後は経過を観察しながら、日常生活に戻るためのリハビリテーションを開始します。
入院でのリハビリ期間を経て、経過が良好であれば退院して外来でのリハビリを継続します。
治療後の経過
治療(退院)後の経過
手術自体は数時間で終了しますが、数週間程度入院してリハビリを行います。入院でのリハビリの期間は人によって異なりますが、2~4週間程度であることが一般的です。
入院でのリハビリが終了した後は退院して外来でのリハビリを継続し、1か月~数か月かけてゆっくりと日常の生活に戻していきます。
手術前の活動度によっても術後の回復の早さは変わってきます。
治療(退院)後に気を付けること
日常生活を送れるようになるまでは、治療後数か月程度の長い期間が必要になることもあります。退院後も外来でのリハビリを確実に受けることが大切です。
また、人工関節はしばらく経過してから不具合が発生することがあるため、リハビリ終了後も定期的に検診を受けて異常がないか確認します。
日常生活での注意点
治療後は、人工関節に負担がかからない生活を送ることで人工関節を長持ちさせることができます。
たとえば、人工膝関節や人工股間節といった下肢の人工関節であれば、正座やあぐらといった人工関節に負担がかかる姿勢は避ける、体重の付加を減らすために適切な体重を維持する、人工肘関節や人工肩関節などの上肢の人工関節であれば、重いものを持たない、急な動作は避けるなどの工夫が必要です。
費用の目安
費用は治療内容や医療機関、年齢などによっても異なりますが、そのうちの1~3割が患者さんの自己負担額となります。保険適用であってもひと月の窓口負担が高額となった場合は、高額療養費制度を利用することが可能です。ただし、年齢や所得などによって上限額がそれぞれ異なります。たとえば、69歳以下で年収約370万円~770万円の人であれば実際の自己負担額は1か月当たり約8~10万円となります。
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