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関節リウマチの特徴と治療――多角的に診療を行い患者さんの苦痛を取り除きたい

関節リウマチの特徴と治療――多角的に診療を行い患者さんの苦痛を取り除きたい
志智 大介 先生

聖隷三方原病院 院長補佐 兼 感染症管理室長 兼 病院総合内科部長 兼 感染症・リウマチ内科部長

志智 大介 先生

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関節に痛みや腫れが現れる関節リウマチ。適切な治療を行わずにいると、関節の変形など重い症状につながることがあるため、早期発見による治療が大切です。聖隷三方原病院 感染症・リウマチ内科の志智 大介(しち だいすけ)先生は「さまざまな角度から患者さんを診るよう努め、複合的な苦痛を取り除きたい」とおっしゃいます。今回は志智先生に、関節リウマチの特徴や、治療、診療で大切にされていることなどについてお話をお伺いしました。

関節リウマチは、免疫の異常によって関節に炎症が起こり、痛みや腫れなどの症状が現れる自己免疫疾患の1つです。本来は細菌やウイルスから体を守るためにはたらく免疫が、誤って自分自身を攻撃するようになるために発症に至ることが分かっています。

特徴的なのは多関節炎という、さまざまな関節が腫れて炎症を起こしている状態です。このような症状が6週間以上続いている場合には関節リウマチの可能性が考えられます。

若い方から高齢者まで幅広い年代で発症しますが、特に多いのは中高年の方です。近年は高齢化の影響もあり、70歳代以上の高齢で発症する例もみられます。

関節リウマチの発症に関与するといわれている環境要因には、喫煙歯周病、感染症などがあります。特に喫煙は免疫異常につながりやすいといわれていることに加えて、生活習慣病などさまざまな病気を引き起こす原因になりますので、禁煙していただいたほうがよいと思います。

関節リウマチの発症初期では、左右両方の手の指や手首に腫れが起こることが多いです。腫れの特徴としては、手の指が紡錘形(中央が膨らんだような形)に膨らんでいたり、手首であれば手の甲側の骨のでっぱりやくぼみがなくなっていたりする状態などが挙げられます。また、朝起きたときに関節を動かしにくい“こわばり”も特徴的な症状の1つです。

適切な治療をせずに進行すると、関節が変形することがあります。ただし、近年では変形する前の段階で診断に至り、治療を始めることが多いので、そこまで進行するケースは少ないかと思います。

関節リウマチでは関節以外にも症状が現れる場合があります。たとえば、炎症によって微熱が続いており、体重の減少や食欲の低下がみられる方もいます。

また、長く関節リウマチにかかっていると皮下結節(しこり)が生じることがあり、これはリウマトイド結節と呼ばれます。

頻度は多くありませんが、間質性肺疾患など肺の症状もみられることがあります。患者さんに自覚症状のないまま経過していることが多く、X線(レントゲン)やCT検査の結果から発見されることがあります。

ほかにも、シェーグレン症候群*などの膠原病(こうげんびょう)を合併する方もいらっしゃいます。

*シェーグレン症候群:関節リウマチと同じ自己免疫疾患でありドライアイドライマウスなどの乾燥症状が現れる病気。

関節リウマチの“朝のこわばり”は特徴的な症状の1つです。就寝など長く同じ姿勢でいた後に、指、膝、肩などを動かすとぎこちない感じが出やすくなります。未治療の方の場合では、こわばりが1時間から半日ほど続く傾向があり、朝食の準備や身支度が困難になって気づくこともあるでしょう。朝起きたときに継続的に動かしづらい状態が続く場合には、関節リウマチの可能性を考え受診をおすすめします。

また、関節リウマチの早期発見につながる検査として、スクイーズテストがあります。これは、MCP関節(第3関節)やPIP関節(第2関節)を握って痛みがないか確認する簡易的な検査です。こうしたものも活用しながら早期発見につなげてほしいと思います。

写真:PIXTA

関節リウマチの診断は、主に問診と診察、および血液検査やX線(レントゲン)検査により行います。血液検査では、リウマトイド因子や抗CCP抗体、CRPなどを調べます。リウマトイド因子と抗CCP抗体は、関節リウマチの場合に陽性になることが多い抗体です。CRPは、炎症が起こっていると血液中に増加するタンパク質です。これらの検査に加えて、診察や問診を通して腫れている関節の場所や、炎症反応などを確認していきます。

特に、関節リウマチの診療では触診を行うことが大切だと考えています。関節リウマチ分類基準*では、腫れている関節の確認が関節リウマチに分類するための重要な要素であることが示されています。このような基準も参考に、実際に関節を触ることで腫れていることを確認し、正確な診断につなげています。

ただし触診をしても分かりづらいケースもありますので、診断に迷う場合にはMRIや関節超音波検査を行い、関節の状態を確認することがあります。

*関節リウマチ分類基準:関節リウマチの診断に利用する目的で作成された分類基準。一般的に、米国リウマチ学会の分類基準(1987年)と米国および欧州リウマチ学会が合同で作成した2010 ACR/EULAR関節リウマチ分類基準が知られている。

関節リウマチの治療には、主に薬物療法、手術、基礎療法、リハビリテーション(以下、リハビリ)があります。

薬物療法

薬物療法では、抗リウマチ薬であるメトトレキサートを使用して治療を始めることが多いです。ただし、胸水がたまっている方、腎機能が悪化している方などには使用することができないため、他の抗リウマチ薬を用いることがあります。また、痛みや炎症を抑えるために、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を使用します。

メトトレキサートだけでは炎症を抑えることが難しい場合は、生物学的製剤やJAK阻害薬を使用することがあります。生物学的製剤は、遺伝子組み換え技術や細胞培養技術を用いて製造された薬で、特定の分子を標的として作用します。投与方法は点滴や皮下注射です。JAK阻害薬は、ヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素のはたらきを阻害することで炎症を抑える飲み薬で、生物学的製剤と同等の効果が期待できるとされています。

生物学的製剤とJAK阻害薬は炎症を抑える作用がある一方で、免疫の機能を抑えてしまうため、感染症のリスクが高まることには注意が必要です。

なお、抗CCP抗体やCRPが非常に高い場合や、腫れている関節が多い場合などは進行が早いことを考慮して、当院ではなるべく早期に生物学的製剤を提案する場合もあります。

手術

手術は、関節の変形が進んでおり、膝や手首の関節が変形して日常生活に支障をきたしている場合や、変形によって動作時に強い痛みが起こっている場合などに選択されることのある治療法です。当院でも、整形外科と連携して人工関節置換術などを実施することがあります。

基礎療法・リハビリテーション

関節リウマチの治療では、生活習慣の改善も重要です。休養のためにしっかりと睡眠時間を確保することや、腫れていて痛む関節があればできるだけ保護するようにとお話ししています。たとえば、手首が痛むならなるべく反対の手で作業をする、手首を使わずに腕全体を動かすといった提案を行います。どうしても手首を使わなければならない場合は、サポーターをつけて関節に力が集中しないよう指導します。

特に炎症が強く、腫れ上がって痛いという段階であれば、安静にすることが大切です。炎症が治ったら機能や筋力の低下を改善するために、リハビリを行うことがあります。

治療中は、症状や薬物療法の副作用などを確認するために定期的な通院が大切です。寛解(症状や検査異常がなくなった状態)や低活動性の状態になれば、治療の間隔をあけたり、飲んでいる薬の量を減らしたりできることが多いので、通院の回数を抑えられるでしょう。当院でも、治療当初は2週間に1回の通院頻度でも、寛解や低活動性の状態になれば2〜3か月に1回などに減らせるケースが多くあります。

治療中に注意してほしいことは、合併症です。たとえば、メトトレキサートを使用している場合に気をつけるべき副作用として薬剤性肺炎があるため、発熱や咳、息苦しさが続く場合は、すぐに受診するよう伝えています。普段かかっている医療機関以外を受診する場合には、受診時に使用している薬を伝えてもらうと原因が早く分かり、適切な治療につながるでしょう。

また、喫煙を続けていると炎症反応が高いまま経過したり、治療効果が出にくくなったりする場合があるので、禁煙に努めてほしいと思います。

診察写真
写真:PIXTA

私はもともと地域医療を志したことをきっかけに、総合診療*に長く携わってきました。このときに培った患者さんを診る多角的な視点は、関節リウマチの診療においても大切なことだと考えています。

関節リウマチの診断の際には、症状や検査の数値だけでなく総合的な判断が必要となります。問診や触診から状態を確認し、関節リウマチと症状が似ているさまざまな病気と鑑別するよう努めています。先にお話ししたように、触診時は一つひとつの関節をきちんと触り、腫れや炎症を確認することを大事にしています。新たに担当した患者さんの中には、関節に触れられるのが初めてだったようで喜んでくれた方もいらっしゃって、逆にこちらが驚いたこともありますが、丁寧な触診は関節リウマチの診療において非常に重要です。

治療では、患者さんが抱える複合的な苦痛を取り除くよう心がけてきました。たとえば、変形性関節症など他の病気を合併していて、関節リウマチの治療だけでは症状が改善しないこともあります。また、関節リウマチによって生活が不自由になっている方もいらっしゃって、社会人であれば仕事、学生だったら授業に行くのが困難になる例もあります。慢性的な痛みがあるために良好な睡眠をとることができないなど、普段の生活に苦労する方は少なくありません。そのような困難や苦労をなるべく取り除けるように、患者さんそれぞれの症状を見極め、訴えに耳を傾けながら治療に取り組んでいます。

*総合診療:特定の病気や臓器だけを専門的に診るのではなく、原因が明らかになっていない健康課題や、複数の医学的な課題、心理的もしくは社会的背景などを含めて患者を診ること。

実際に患者さんの訴えはさまざまです。前回の診療時とは違う場所に痛みが出てきたとおっしゃることはよくありますし、皮膚の症状や抜け毛口内炎など多様な症状を自覚している患者さんもいます。

一人ひとりのお話をじっくりお聞きしたいものの診察時間は限られているので、看護師が前もって患者さんにお話をお伺いしてリウマチ手帳などのメモに残すような取り組みも行っています。患者さんは、緊張や遠慮から医師に言いづらいこともあると思います。また高齢の患者さんなどは診察時に伝えるのを忘れてしまうケースもあるでしょう。当院ではこのように、患者さんの状態やお悩みを把握するためにチームで患者さんを診る工夫を行っています。

診察2
写真:PIXTA

関節リウマチは、継続的に付き合っていく病気なので、治療を続けながら新たな悩みも出てくるでしょう。病気と上手に付き合っていったり、スムーズに治療を進められたりするよう、医師と患者さんが共に協力し合える関係性を作れるとよいと考えています。

お話ししてきたように、関節リウマチの患者さんの悩みは関節症状のみにとどまりません。さまざまなお悩みや苦痛を改善できるように、医師と患者さんが一緒に治療に取り組む姿勢が大切です。また、ご家族や職場の方などの理解と協力を得るためには、周囲の方たちと相談しやすい関係性を築くことも大切だと思います。

提供:大正製薬株式会社

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