概要
薬剤性肺炎とは、薬剤の投与中に薬剤が原因となり、その薬剤本来の効能以外の予期せぬ有害な反応が生じて起こる肺炎のことを指します。通常は投与開始後2~3週間から2~3か月で発症するものが多いですが、投与開始後数年を経て発症するものもあります。薬剤性肺炎の正確な発症頻度は定かではありませんが、近年の調査では2011年以降に1,850例の薬剤性間質性肺炎が全国から報告され、その報告数が増加してきている傾向にあります。
原因
全ての薬剤に薬剤性肺炎を引き起こす可能性があり、また医師が処方した薬剤だけではなく、市販薬や漢方薬、サプリメントや健康食品などでも発症する可能性があります。代表的な原因薬剤として、分子標的薬を含む抗悪性腫瘍薬(抗がん剤)や生物学的製剤を含む抗リウマチ薬が多く報告されていますが、一般的な抗生物質(抗菌薬や抗真菌薬)、消炎鎮痛薬なども少なからず報告されています。
またリスク因子としては高齢(60歳以上)であることや、もともと間質性肺炎などの肺病変を有していること、低肺機能であることなどが知られています。
症状
軽度であれば特に自覚症状はなく、胸部X線などで発見されることもありますが、代表的な自覚症状としては息切れや呼吸困難、乾性咳嗽(痰を伴わない咳)、血痰、発熱、倦怠感(体のだるさ)などがあげられ、皮疹、口腔内粘膜疹などを伴うことがあります。重症の場合には呼吸不全に至ることもあり、他覚的な所見としては経皮的動脈血酸素飽和度が低下することや胸部聴診で乾性ラ音を聴取することがあります。
検査・診断
薬剤性肺炎の診断は症状や身体所見、薬剤摂取歴や既往歴、血液検査所見や画像所見などを総合して行います。前述のように全ての薬剤に薬剤性肺炎を起こす可能性があり、投与中のみならず投与終了後でも発症する可能性があることを念頭に置かなければなりません。診断のためにまずは、薬剤摂取歴に関する問診が非常に重要になります。疑われる薬剤の摂取歴(どんな薬剤をいつから使用しているか)を明確にすることが大切です。上記のような症状のため病院を受診する際は、お薬手帳を持参することで処方薬などの確認がすぐに行えます。
治療
薬剤性肺炎の治療としてまず行わなければならないことは被疑薬(原因として疑われる薬剤)を速やかに中止することです。軽症の場合は中止するだけで改善することもありますが、もともとの病気に対して必要な薬剤であった場合は、ほかの種類の薬剤に変更する必要があります。原因となった薬剤は原則再度使用するべきではありません。しかし、どうしても使用しなければならない場合は薬剤によっては再度使用することもありますが、薬剤性肺炎が再燃することもあり注意が必要です。
中等症以上もしくは被疑薬の中止のみでは改善しない場合はステロイドを用いることが一般的です。重症になるとステロイドを大量に用いるステロイドパルス療法を行い、その後ステロイドの内服治療(後療法)に移行することが多いです。アレルギー性機序では比較的ステロイドへの反応性は良好といわれますが、細胞障害性機序では障害が強くステロイド抵抗性となることもあります。また低酸素血症を伴っている場合は酸素吸入も必要です。
医師の方へ
薬剤性肺炎の詳細や論文等の医師向け情報を、Medical Note Expertにて調べることができます。
「薬剤性肺炎」を登録すると、新着の情報をお知らせします
関連の医療相談が10件あります
お腹が緩く、黒い便が出た
1週間前からお腹の調子が悪く 血が出てた時があり、内科を受診 しかし若いきら痔の可能性として座薬だけで様子を見てと その後4日過ぎましたがお腹不調があり 下痢。 お腹がスッキリせずガスも出ずらい。 黒い便が今日夕方に出た。
健康診断の血液検査結果(肝機能)について
今年8月に実施した健康診断の血液検査で、 ・γgtp →43 ・AST→22 ・ALT→28 という結果でした。 尚、2019年9月に受けた健康診断では、 ・γgtp →38 ・AST→19 ・ALT→18 という結果でした。 気になっているのは、γgtp が高めということです。 健康診断を受ける医療機関によって基準値が異なり、昨年は基準値が30以下で軽度上昇のため経過観察、今年受けたところは基準値が50以下で正常範囲内とのことでした。 今の数値だと、再検査を受けなくても大丈夫でしょうか? また、飲酒は全くしないため、何が原因でγgtp が高くなっていると考えられるでしょうか? これらの数値に関連する病歴としては、3年前に胆石が見つかり胆嚢を摘出していますが、こちらは関係ありますか?(胆嚢摘出後の2018年のγgtp は23でした。) また、今年の4月頃から鉄・ビタミンB・ビタミンCのサプリメントを摂取しています。 よろしくお願いします。
食事後胸の辺りが詰まる感じがした
本日夕食を取って立ち上がった後で、左胸の辺りが詰まる感じがしました。すぐによくなりましたが、普段から錠剤タイプの薬を服用した際に、喉仏の下の辺りに詰まる時があります。甲状腺の疾患があるので、それも関係しているのかなとも思っていましたが…。 今回の現象が何だったのか気になり心配です。心臓が悪いのか、胃や食道とかが悪いのか…。何が考えられるでしょうか?
息苦しさが4ヶ月続いているが、間質性肺炎の可能性があるかどうか。
今年の四月頃から、動悸・息苦しさが続いており、レントゲンや血液検査などやりましたが原因がわからず、今月末にホルター心電図をつける予定です。 ただ早い動悸ではなく、強く感じる動悸なので、ホルター心電図で何を調べるのかよくわかりません。(これは医師に確認します。) 最近になって間質性肺炎というものを知り、不安になりました。6月に息苦しさ・動悸が特に酷くなり、夜間救急でレントゲンを撮りましたが、診察は呼吸器内科の医師ではありませんでした。 見落としがあったのでは?と最近不安になりました。 初期の場合、レントゲンで肺炎が確認できないことはありますか? また、熱や空咳などは初めから無く、強い動悸・息苦しさのみです。この症状で、間質性肺炎の可能性は考えられるでしょうか? ※「コロナ自粛で体力が無くなったからではないか?」と友人に言われましたが、体調不良が始まった当時はまだ自粛はほぼしておらず、ジムに行ったり普通に生活してました。 ホルター心電図をやったのに、結局何もわからないとなるのが怖いです。 回答よろしくお願い致します。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。