概要
強直性脊椎炎とは、脊椎や骨盤の仙腸関節に炎症が引き起こされる病気です。免疫作用が過剰にはたらいて自身の組織などを攻撃してしまう“自己免疫疾患”のひとつであり、男性に起こりやすく、10歳代後半から20歳代で好発し、40歳以降の発症は少ないとされています。
発症すると、炎症が生じた部位に痛みが生じるようになります。症状の現れ方は人によって異なりますが、多くは腰やお尻の痛みから始まり、次第に背中や首、胸、四肢の大きな関節に症状が広がっていくとされています。
進行すると背中を曲げることができなくなり、日常生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。そのほかにも発熱や体重減少、倦怠感などの症状やぶどう膜炎と呼ばれる目の病気を併発することもあります。
原因
強直性脊椎炎のはっきりした発症メカニズムは現在のところ、明確には解明されていません(2020年5月時点)。
一方で、この病気は血液中の細胞である“白血球”の表面に付着している“HLA-B27”と呼ばれるたんぱく質との関連が指摘されています。これら白血球の表面に付着しているたんぱく質の種類は遺伝によってどのようなタイプが現れるか決まっており、強直性脊椎炎も患者と同じ家系の人に発症しやすいことが分かっていることから、遺伝が大きく関与していると考えられています。
そして、これらの生まれながらの要因に、一時的に免疫のはたらきが強くなる感染症などのきっかけが加わった結果、免疫反応の異常が生じて強直性脊椎炎を発症すると考えられています。
症状
強直性脊椎炎の症状の現れ方は人によって大きく異なります。
多くは、腰やお尻などに痛みが生じます。痛みのある部位は日によって変わることも多く、さらに安静にしているときより体を動かすと軽快していくのが大きな特徴です。
また同時に発熱、倦怠感、疲労感、体重減少など全身に及ぶ症状が現れることもあり、痛みなどの症状とともによくなったり悪くなったりを繰り返します。症状がひどいときには日常生活が困難なほどの痛みに襲われることもあります。
さらに進行している人では首や背中の骨の動きが悪くなって前かがみの姿勢になり、体を反らしたり上を見たりすることができなくなるなど日常的な動作にも影響を及ぼすようになります。そして、発症から時間が経過するにつれて脊椎を中心に骨粗しょう症が進行していき、些細な刺激で骨折しやすくなる結果、脊髄を損傷して麻痺を引き起こすこともあります。
そのほか、強直性脊椎炎は目のぶどう膜と呼ばれる部位に炎症を引き起こす“ぶどう膜炎”を発症することがあり、目の痛みや充血などが生じます。また、クローン病や潰瘍性大腸炎など腸に生じる自己免疫疾患を併発することもあります。
検査・診断
強直性脊椎炎が疑われるときは次のような検査が行われます。
画像検査
脊椎や骨盤、手足の関節など痛みや腫れが生じている部位の骨の状態を調べるため、レントゲン、CTやMRIなどの画像検査が行われます。
特にMRI検査は早期段階の炎症も描出しやすいため、早期発見に役立つと考えられています。また、強直性脊椎炎と似たような症状が現れてしばしば誤診される椎間板ヘルニアとの鑑別にも有用です。
血液検査
強直性脊椎炎を発症すると体内で炎症が続く状態となるため、一般的には炎症の程度を調べるための血液検査が行われます。また、そのほかにも血液検査では自己免疫疾患で見られる自己抗体(自分の体を攻撃するたんぱく質)や発症に関与していると考えられている HLA-B27の有無を調べることも可能です。
治療
強直性脊椎炎には現時点で根本的な治療方法はありません(2020年5月時点)。
そのため、治療は骨や関節に生じた炎症を抑えることが主体となり、一般的な消炎鎮痛剤が使用されます。また、関節リウマチに効果的な抗リウマチ薬や免疫抑制剤なども効果があることが最近分かってきています。ただし、これらの薬は免疫力を著しく低下させることがあるため、使用する際には慎重な検討が必要です。
そのほかにも、強直性脊椎炎ではマッサージや温熱療法、漢方薬などさまざまな治療が行われ、症状が改善する方法を探していくことが一般的です。
一方で、この病気はある程度体を動かすことで悪化や進行を抑えることができます。そのため、強い痛みに襲われて体を動かすことが困難な場合を除き、医師や理学療法士の指示に従った運動療法が取り入れられます。
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