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かんせん

乾癬

最終更新日
2021年03月12日
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2021/03/12
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

乾癬(かんせん)とは、皮膚科では炎症性角化症に分類され、皮膚の角化・肥厚(ひこう)とともに炎症が生じる病気です。

患部が赤く盛り上がると同時に、角質が厚く硬くなって表面にポロポロとふけのような鱗屑(りんせつ)がつき、典型的な場合は銀白色のかさぶた状となります。かゆみを伴い、刺激を受けやすいところ、とくに頭部や背部、腰からお尻、肘や膝、下腿(かたい)にできやすく、大きさや形はさまざまで地図状になることもあり、病変と正常との境界がはっきりしているのが特徴といえます。爪に症状が出ることもあります。

日本人の乾癬の患者数は40~50万人と考えられており、白人の1/10ともいわれていますが、近年増加傾向にあります。欧米とは違って、男性の発症頻度は女性の約2倍です。遺伝的背景が明らかな場合は20歳未満でも発症しますが、一般的には20歳代~40歳代に発症することが多く、高齢での発症もまれではありません。重要なことは、乾癬という病気は一度発症すると、たとえ治ったように見える時期があったとしても完治するのは極めて困難で、長期にわたって悪化と軽快を繰り返す慢性の病気だということです。

乾癬の病型は大きく分けて5つあり、もっとも一般的な尋常性乾癬の他に、亜型として関節症性乾癬(保険病名はこうなっていますが、リウマチ科・整形外科との学会合意で乾癬性関節炎と呼ぶことになっています)、膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)、乾癬性紅皮症、滴状乾癬があります。滴状乾癬以外の亜型は一般に重症であり、とくに全身にできるタイプの汎発性膿疱性乾癬と乾癬性紅皮症は、発熱を含む全身症状を伴い、入院加療を考慮すべき状態です。

それぞれの病型は移行することもあれば合併することもあり、突然重症化することもあるので注意が必要です。

原因

乾癬は、皮膚が生まれ変わるまでのターンオーバーの時間が、あたかも粘膜のごとく著しく短縮することで、新しい表皮細胞が次々に増殖して上層へ向かっていき、一番表層にある未成熟な角質が積み重なって剥がれていきます。増殖した表皮は、慢性的に持続する炎症によって刺激を受け続けることで、病変が維持されます。

これらの表皮の異常をもたらすのは、T細胞や樹状細胞、好中球といった免疫細胞であることが分かっています。発症の詳細なメカニズムについてはまだ解明されていませんが、遺伝的要因と環境的要因がおそらく複数関わることで発症すると考えられています。最近は、ある特殊なT細胞(resident memory T細胞)が病変内に棲みつき、それが年余にわたって居座るため、同じ部位に何度も出没することが明らかにされています。

遺伝的(先天的)要因

乾癬は家族内発症も見られることから、発症しやすいいくつかの遺伝子異常が想定されています。すなわち、乾癬の病変部ではT細胞や樹状細胞をはじめとする免疫細胞/炎症細胞が中心となり、それに表皮細胞が呼応する形で、TNF-α、IL-17、IL-23などのサイトカイン(細胞から放出され、細胞と細胞の間の相互作用を媒介するたんぱく質の総称)による炎症ループが形成されていることから、これらのサイトカインそのもの、あるいはそれを誘導する何らかの因子の遺伝子の異常が背景にあると考えられているのです。

環境的(後天的)要因

外傷や紫外線、感染症、薬剤などの付加刺激によって乾癬が誘発され、悪化することはよく知られていますが、その他に重要なのは、生活習慣と関連するメタボリックシンドロームです。肥満、高血圧、高脂血症、高尿酸血症、そして何といっても糖尿病が乾癬と深く関連し、ときには乾癬発症にも引き金を引くことが分かっています。もちろん、これらの生活習慣病もそれぞれ遺伝的背景と関連しているはずですので、完全に後天的な要因とは言い切れない面もあります。また、飲酒や喫煙についても、乾癬そのもの、あるいは乾癬に対する治療の反応性に影響を及ぼすことが分かっています。

自己免疫的要因

乾癬は免疫疾患であり、だとすると自分の体内で何か特定の物質がターゲットになり、それに対する自己抗体が産生される“自己免疫疾患”ではないかという考え方も古くからあるのですが、自己抗体が同定されるまでには至っていません。

症状

乾癬は大きく分けて5つに分類され、それぞれの症状は以下のとおりです。

尋常性乾癬(局面型乾癬)

頭部(髪の毛の生え際も含む)に最初に症状が出ることが多く、他に肘や膝、背部から腰臀部、下腿などの物理的な刺激を受けやすい部位にできやすいという特徴があります。中には、陰部、鼠径部(そけいぶ)や腋窩(えきか)などの間擦部、手掌や足底など体の一部だけにできる場合もあります。

最初は小さな赤いブツブツ(丘疹)や斑(紅斑)から始まりますが、徐々に隆起してごわごわと硬くなり(角化)、表面にふけ状のもの(鱗屑)が付着し、ポロポロと剥がれ落ちる(落屑)ようになります。個々の発疹(ほっしん)が融合して広がって地図状(局面)を呈することもあり、大きな局面になると銀白色のかさぶた状ともなりますが、無理に剥がそうとしても取れず、出血したりします。また、爪に変化が生じることも多く(爪乾癬)、症状は剥離、混濁、変形などさまざまです。

かゆみは、悪化時に伴うことが多いですが、症状が固定されてしまうとまったくない場合もあります。かゆくて掻いたり、また擦れたりけがをしたりしたところに広がりやすい、という特徴もあります(ケブネル現象)。

尋常性乾癬 典型局面(画像提供:大槻マミ太郎先生)
 
尋常性乾癬 後頭髪際〜頚部(画像提供:大槻マミ太郎先生)
尋常性乾癬 胸腹部(画像提供:大槻マミ太郎先生)

関節症性乾癬(乾癬性関節炎)

皮膚症状に加えて関節症状を伴うものです。関節リウマチのように、手指に関節炎として初発することが多いですが、脊椎を含め全身のどの関節にも生じる可能性があります。症状はこわばりや腫脹(しゅちょう)、疼痛などさまざまですが、進行すると不可逆的な変形をきたしてしまいます。ただ、乾癬の場合は関節リウマチとは異なり、関節そのものというより腱や靱帯などの付着部の炎症から始まることが分かっています。

中には、皮膚症状が頭部や陰部などの隠れた部位に限局し、訴えがほとんど関節症状のみという場合もあるので、注意が必要です。乾癬性関節炎の診断とその関節の評価にあたっては、リウマチ科や整形外科など他科との連携が極めて重要です。

関節症性乾癬(乾癬性関節炎)手指の末梢関節と爪(画像提供:大槻マミ太郎先生)

膿疱性乾癬

尋常性乾癬の発症後に続発することもありますが、乾癬の既往がなくても突然膿疱で発症することもあります。

限局する場合もありますが、(うみ)を含んだ小さなブツブツ(膿疱)が全身に多発すると、高熱や全身倦怠感が生じます。紅皮症を伴って全身管理が必要になる例もあり、その場合は入院加療が必要です。なお、全身にできるタイプ(汎発性膿疱性乾癬)は国の難病に指定されています。

乾癬性紅皮症

全身に紅斑が広がり、皮膚全体が真っ赤になって痛々しい状態となり、多量の鱗屑が剥がれ落ちます(落屑)。多くは尋常性乾癬に続発しますが、膿疱性乾癬と並んで乾癬の重症の亜型であり、発熱や悪寒、倦怠感などを伴うことも多く、入院が望ましい状態です。

滴状乾癬

比較的若年者に多く見られ、扁桃炎などの溶連菌感染などがきっかけとなって生じるタイプです。小型のブツブツ(丘疹)が全身にできますが、あまり融合せず、多くの場合は急性の経過をたどって治癒します。しかし、再発を繰り返すうちに融合して局面を形成し、局面型(尋常性)乾癬に移行することもあります。

検査・診断

乾癬は好発部位(症状がよく出る場所)に極めて特徴的な皮疹を形成するため、診断は多くの場合、視診と問診をもとに行われます。

ただし、乾癬は症状が出る部位によって、ほかの皮膚の病気と区別がつきにくい場合があります。ほかの皮膚疾患との鑑別(見わけること)が必要な場合、そして膿疱ができる場合や全身が紅皮症を呈する場合には、皮疹の一部を採取して顕微鏡で確認する病理検査(皮膚生検といいます)を行います。

乾癬性関節炎を合併する場合は、リウマチの検査を行って陰性を確認することも重要です。まれではありますが、乾癬に関節リウマチを合併することもなくはありません。

また、内科的にみると高血圧糖尿病、また心筋梗塞(しんきんこうそく)脳血管障害などの心血管系イベントのリスクが高いため、診察時は血圧測定、そして定期的にHbA1cや脂質などを含む血液検査を行うことも大切です。慢性腎臓病が併存していることも少なからずあるので、腎機能や尿酸値のチェックも必要です。健診で異常を指摘されているのにその状態が放置されている場合も多いことから、メタボリックシンドロームも念頭においてチェックを洗い直さなくてはなりません。

なお、乾癬に使用される薬剤に関連して副作用を生じることもありますので、副作用の有無を適宜検索するための定期的なモニタリング検査も必要です。

治療

乾癬治療の選択肢(画像提供:大槻マミ太郎先生)

一般的には、活性型ビタミンD3やステロイドの外用薬(塗り薬)が使用されます。一般に病変が広範囲で重症の場合には、外用薬では効果不十分なので、免疫抑制薬をはじめとする内服治療が行われます。ステロイドはその外用薬が広く使用されますが、内服薬(飲み薬)としては使い方によって膿疱性乾癬を誘発することがあるので、推奨されていません。

また、外用や内服治療のほかに、光線療法(紫外線治療)が行われることもあります。あたかもレーザー治療のように局所的に照射する方法と、全身に照射する方法があり、後者の場合は内服療法と同様、全身治療ということになります。

近年では重症例に対して積極的に生物学的製剤が用いられるようになり、注射療法の時代ともなりましたが、新たな内服薬も次々に開発されており、全身治療の選択肢がどんどん増えている状況です。また、透析センターのような設備を利用することになりますが、顆粒球除去療法という、乾癬を悪化させる白血球の一部を吸着物質の中を通すことで血液中から除去する治療も、膿疱性乾癬や乾癬性関節炎に承認されています。

外用療法・内服療法

乾癬の初期治療は外用が基本であり、まず外用薬から開始します。ステロイド外用薬と活性型ビタミンD3外用薬が二本柱となっています。両者が1剤の中に組み合わされた配合外用薬というのも発売されており、便利な選択肢といえます。

外用薬が使いにくい場合、外用薬を使っても効果が乏しい場合、とくに皮疹が全身に広がるような重症の場合は内服治療の適応となり、内服薬としてはビタミンA誘導体、シクロスポリンやメトトレキサートなどの免疫抑制薬、PDE(phosphodiesterase)阻害薬などがあります。

他の内服薬として、かゆみに対しては抗ヒスタミン薬、乾癬性関節炎の痛みには消炎鎮痛薬なども用いられます。

紫外線療法

紫外線療法の線源としては、長波長のUVAと短波長のUVBがあります。311 nm付近の紫外線(ナローバンドUVB*)が乾癬にとくに有効で、治療時間も短く簡便なので、頻繁に用いられています。

また、下腿など難治の部位には、ターゲット型のエキシマライトなどによる局所照射を集中的に行うことで、全身への総照射量を抑えつつ、外用治療に抵抗する部位の乾癬を改善させることが可能です。

*ナローバンドUVB:波長が311 nm付近の極めて狭い範囲の紫外線

注射療法(生物学的製剤)

重症の乾癬、そして生活に支障をきたすような乾癬性関節炎を合併する場合は、生物学的製剤を使用することを検討します。生物学的製剤の治療効果はとても高く、ほとんどの患者さんにおいて効果を期待することができます。最初に承認された薬剤は、重症感染症をはじめとして、頻度は少ないながらも重篤な副作用の懸念がありましたが、最近承認されている薬剤は安全性の高いものが多く、進化してきました。ただ、コストは他の治療よりずっと高いので、年収によって区分されている高額療養費制度、加入している保険組合による付加給付、その他各種の医療費助成などをうまく利用して、患者負担を最小限に抑えつつ最大の効果を引き出すことを目指すべきでしょう。

患者会

さまざまな疾患領域で患者会活動があり、一人あるいは家族で悩む患者に対して、医師よりも(相談医はいますが)患者側から寄り添って、情報提供や相談支援を行っていますが、乾癬でもその活動が非常に活発です。地域の患者会が全国都道府県の過半数で存在し、そしてそれらを束ねる全国の日本乾癬患者連合会が組織されており、これ以外にも乾癬の疾患啓発普及を目的として設立された法人組織(INSPIRE JAPAN WPD 乾癬啓発普及協会)というのもあって、市民公開講座や国際乾癬デー(10月29日)のイベント活動なども精力的に行われています。

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