“乾癬”は皮膚病の中でも原因不明とされる疾患の1つであり、いまだになぜ起こるのかが解明されていません。今回は、山王病院皮膚科部長であり、乾癬治療を専門に行っていらっしゃる佐藤 佐由里先生に、乾癬に関する6つの質問にお答えいただきました。
乾癬の皮膚症状は、ほかの皮膚疾患と時に見分けがつきにくいことがあります。そのような場合は“皮膚生検”という、皮膚を少し採取して顕微鏡で確認する病理検査を行います。
かさかさした落屑はつい擦って落とすか、むいてしまいがちですが、擦ったりして機械的な刺激を受けると、“ケブネル現象”という紅斑の症状が悪化する現象が起こり、治りが悪くなります。落屑は治療していくと少なくなって消えていきますので、むかないでそのまま薬を塗るように気を付けましょう。
また、ブラッシングや洗髪時にも注意を怠らないようにしましょう。頭皮は乾癬の皮膚症状の出やすい部位で、なおかつ、外用治療に反応が悪い部位でもあります。ここも強く擦り過ぎると、前述のようなケブネル現象を生じる可能性があります。
まとめると、皮膚への過度な刺激を避けることが重要となってきます。ブラッシングや洗髪を含め、擦ってしまったりむいてしまったり、刺激を与えれば与えるほど症状は悪化していきます。
予防としては、擦れやすい場所に起こりやすいということで、まずは擦れないようにする努力が必要です。
また、近年、メタボリックシンドロームと乾癬は相関することが分かってきました。太ると乾癬は悪化しますので、太りすぎは禁物です。
さらに、乾癬の患者さんは心筋梗塞など心血管系の病気の頻度も高いことが分かってきましたので、乾癬になった患者さんは自分自身の生活習慣を見直すことも大切です。また、“適度な日光浴”で皮疹がよくなる場合が多いのですが、浴び過ぎは厳禁です。悪化させる場合があります。
以上より、規則正しい食事と生活習慣を心がけることが症状を悪化させないための予防といえます。
温泉・漢方などがあります。一部の温泉は乾癬に効くといわれ、北海道には乾癬の患者さんが湯治をする温泉があります。また、ヨーロッパでは、死海での特殊な気候や環境を利用した施設があります。
漢方薬は、漢方の専門医により個々の患者さんに合った薬が選択され、ある程度の補助的な効果があるようです。
乾癬がかゆいときは、病気の勢いが強いときです。外用療法の場合は強い薬剤に替えるか、抗アレルギー剤のようなかゆみを止める内服薬で対応します。このような対処を行ってもよくならない場合は、光線治療や、内服治療あるいは生物製剤などの全身療法を取り入れます。
現在のところ、乾癬を完治させる根本的な治療は見つかっていません。しかし、光線治療、内服治療、生物学的製剤の注射薬などといった治療方法の進歩により、症状がまったくないに近い状態で生活できる患者さんも増えてきました。
“治療のゴール”を完治に設定するのでなく“治療により、乾癬の症状を気にしないで日常生活が送れる”ことに設定することは可能です。現在乾癬の治療は世界中で進歩しており、既存の治療方法でまだ症状が残っている患者さんにも、今後さらによい治療法が必ず出てくるでしょう。
乾癬は、皮疹が目立つため、周囲から「感染する病気ではないか」と誤解されることもあり、「温泉やプールに行けない」「衣服から肌を出せない」など日常生活でも不便があります。そのため、患者さんの精神的・社会的なストレスは大きく、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)が著しく低下します。QOLを回復させるべく、周囲の理解を得ながら、主治医としっかり話し合った上で自分にふさわしい治療法を見つけていくことが非常に重要です。
山王病院 皮膚科部長
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