概要
爪水虫は、正式には爪白癬と呼ばれる感染症です。人の皮膚の角質を栄養として生きるカビ(真菌)である白癬菌が原因になり、感染した爪は白く濁ります。時に爪は分厚くなり、進行するとぼろぼろになります。特に糖尿病の患者さんの場合は、爪白癬をきっかけに細菌感染症が起こることがあるため、しっかりと治療することが重要です。
原因
爪白癬の原因は、白癬菌というカビ(真菌)の一種です。白癬菌が爪に入り込んで感染し、増殖することで爪白癬が起こります。白癬菌はさまざまな部位の皮膚に感染することがあります。爪白癬は、もともと足に感染していた白癬菌(足白癬)が爪に入り込むことにより生じるとされています。また、手の白癬から手の爪白癬が起こることもあります。
感染経路
白癬菌の感染は、人や動物の皮膚など、白癬菌が付着したものに直接触れることで起こりますが、爪白癬は、特に次のような場面での感染が考えられます。
- 同居人・家族に治療を受けていない白癬患者がいる
- 治療していない足白癬の病巣がある
- ほかの爪のトラブルや血液の循環が悪いために爪が伸びない
- 運動などで爪に傷がついた など
発症しやすい人
次の条件に当てはまる方は、足白癬・手白癬に感染しやすく、これが長い間治療されていない場合は爪白癬も発症しやすい傾向があります。
- 足の指が太く、指同士が接触しやすい
- 長時間にわたり靴(ブーツ、安全靴、長靴を含む)を履く
- 体温が高く汗をかきやすいため靴の中の湿度が高い
- 糖尿病による手足の血行不良・感覚障害がある(皮膚症状に気付きにくく、菌に対する抵抗力も弱るため)
- 足底・踵、手のひら(特に一方だけ)が乾燥してカサカサしている
症状
白癬菌が爪に入り込んで増殖すると、その部分が白色や黄色に濁って見えるようになります。爪白癬が進行すると、爪の厚みが増し、ぼろぼろになって崩壊していきます。通常、痛みやかゆみなどの自覚症状はありません。爪が分厚くなると靴などに押されて痛みが出ることがあります。
爪は手より足の方が頻度も高く変形も強くなります。足、あるいは手の爪全てが一斉に同じ程度に変形する場合はまず爪白癬ではありません。
足白癬や爪白癬によって生じた小さな傷がきっかけで、蜂窩織炎などの重い細菌感染症をきたすことがあります。蜂窩織炎を起こすと、入院が必要になることもあります。特に糖尿病の患者さんは蜂窩織炎を起こしやすく、進行も早く、糖尿病性壊疽の原因にもなりますので注意が必要です。
検査・診断
爪白癬の可能性がある場合、顕微鏡検査が行われます。白く濁った爪を削り、あるいは穴を開けて角質を採取し、水酸化カリウム(KOH)という液体で溶かして観察します。この検査で白癬菌を確認できれば爪白癬と診断できます。白癬菌の詳しい種類を特定するために、真菌の培養検査や遺伝子検査が行われることもあります。
治療
基本的には、白癬菌に有効な抗真菌薬を内服します。最近では新たに爪白癬用の外用薬も開発されていますが、内服抗真菌薬のほうが効果は高いことが知られています。いずれの内服薬もまれに肝機能障害などの副作用が起こることがあるため、血液検査を受けながら3~6か月にわたり内服治療を行います。内服ができない場合は、外用薬を1日1回6か月以上外用することで、特に軽症例では改善する例が知られています。
治療を開始すると白癬菌に感染していない新しいきれいな爪が生えてきます。
予防
爪白癬は足白癬から波及することが知られていますので、菌が爪に侵入するまでに足白癬を治療することが大切です。足白癬の予防は、白癬菌が足に長期間付着しないよう、自分のほかにも不特定多数の人が裸足で過ごすプールや公衆浴場へ出入りした際は、足の裏を洗う、乾いたタオルで拭うなどして菌を除去しておきます。足が蒸れると白癬菌が増殖しやすいため、乾燥を心がけてください。通気性がよい靴や靴下を選ぶのもよいでしょう。しかしもっとも大切なのは、家族に足白癬や爪白癬の方がいる場合その人たちが菌の供給源になるため、同居している家族の足白癬や爪白癬を治療してもらうことです。これが足白癬、ひいては爪白癬の適切な予防になります。
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