概要
手白癬とは、手のひら、指、指の間といった手の部位の毛がない部分に生じる白癬(白癬菌による感染症)のことです。手に生じた白癬でも、爪に生じたものは爪白癬、毛がある部に生えるものは体部白癬として区別されます。
白癬は全身のさまざまな部位に発生しますが、足白癬(水虫)や爪白癬(爪水虫)が多くを占めており、手白癬は比較的まれな病気です。皮膚が柔らかく湿度が高い指の間から生じることが多く、症状に応じて指(趾)間型、小水疱型(汗疱型)、角化型の3つに分けられることもあります。
原因
手白癬は、白癬菌(皮膚糸状菌)と呼ばれる真菌(カビ)の一種が感染することによって起こります。
白癬菌にはさまざまなものがありますが、10種類ほどがヒトの白癬の原因となることが知られており、トリコフィトン・ルブルムやトリコフィトン・インタージギターレと呼ばれる菌種が原因となることが多いといわれています。
白癬菌は湿度が高く皮膚が柔らかい部分から皮膚の角層と呼ばれる部位に侵入することが知られており、指の間で発症して徐々に指先や手のひらに広がっていくことが多いです。また、爪に感染が広がることで爪白癬を合併することもあります。
症状
手白癬は症状に応じて3種類に分けられ、そのほとんどは角化型です。それぞれ以下のような特徴があります。
指(趾)間型
赤みがかった湿疹(紅斑)や患部のジュクジュク、カサカサなどが指の間にみられます。患部は指の間から指の腹や手のひらに広がり、小水疱型に移行します。指間型は指間カンジダ症との鑑別が困難です。
小水疱型(汗疱型)
指(趾)間型から患部が広がった状態で、かゆみを伴う水ぶくれのような発疹が生じます。あせものような皮膚のカサカサができることもあります。
角化型
強い炎症はなく、手のひら全体の皮膚が硬くなる症状(過角化)を主な症状とするタイプです。特にしわの部分に角化と鱗屑(皮膚の表層にある角質層がはがれた状態)が目立ちます。通常、かゆみはほとんどみられません。
検査・診断
手白癬の診断では、KOH直接鏡検と呼ばれる検査が用いられます。
この検査では、白癬菌が存在すると考えられる皮膚をメスやハサミなどで表面の角質を採取し、試薬(KOH)で処理をして白癬菌を見やすくしたうえで顕微鏡によって観察します。手白癬が発生し得る場所から採取したサンプルから白癬菌が観察されれば、手白癬と診断されます。
治療
手白癬の治療は抗真菌薬の外用薬が中心となり、イミダゾール系などの抗真菌薬が用いられます。
通常、1日1回塗布することで効果が期待でき、指(趾)間型では2か月以上、小水疱型(汗疱型)では3か月以上、角化型では6か月以上の使用が治療期間の目安となります。外用薬の塗布は目に見える患部の範囲よりも広い範囲に行うようにし、症状が改善してからもしばらくの間塗布を継続することが治癒するために重要となります。
角化型の手白癬や、接触皮膚炎などの合併がみられる場合は抗真菌薬の内服治療が行われることもあります。また、爪白癬を合併している場合は、内服薬による治療が第一選択となります。
白癬菌は湿度が高い部分で繁殖しやすいため、治療中は白癬菌が感染しやすい部位が蒸れないようにすることが大切です。また、患部に刺激が加わると角化(皮膚が硬くなること)がみられるため、過度な刺激が加わらないように注意します。
予防
白癬菌は、皮膚に付着してから最低でも24時間(ただし、足に傷口などがある場合は12時間)付着したままになっていなければ感染しないとされています。そのため、白癬菌に触れたとしても皮膚を十分に洗っていれば、感染を防ぐことができます。同居人に白癬菌に感染している方がいる場合はもちろん、白癬菌に感染した動物などと接触した場合などには、皮膚を清潔にして感染を防ぐようにしましょう。
また、皮膚に傷がつくと白癬菌に感染しやすくなります。軽石でこするなどのちょっとした傷でも感染リスクが高くなるため、白癬菌への接触リスクが高い場合には注意するようにしましょう。また、自分がすでに白癬菌に感染している場合は患部の清潔と乾燥を心がけるとともに、タオルなどの共有を避けて周りの人に感染を広げないようにしましょう。
白癬菌は部屋の埃などに含まれることもあるため、室内をこまめに掃除することも大切です。
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