概要
汗疹とは、大量の発汗によって生じる皮疹のことです。一般的に、あせもと呼ばれるもので、小さな水疱や丘疹が多発します。
汗は皮膚の中にある汗腺で生成され、細い管(汗管)を通って皮膚の表面に分泌されます。汗疹は何らかの原因で汗管が詰まることで、生成された汗が正常に分泌されず、皮下にたまることが原因となって発症します。
汗管は真皮から皮膚の表層につながる細長い構造をしていますが、汗疹は汗管が閉塞する場所および炎症の有無によって、水晶様汗疹・紅色汗疹・深在性汗疹に分類されます。
汗疹の多くは、汗の分泌を抑え、患部の通気性を良好に保てば自然に治ります。しかし、かゆみを伴う場合が多く、かきむしると細菌感染が生じて痛みや発熱を生じることもあります。
原因
汗疹は、汗管が閉塞して分泌されるべき汗が皮下にたまることで発症します。汗腺には、エクリン汗腺とアポクリン汗腺がありますが、エクリン汗腺は全身に分布して汗を分泌し、体温調節を行うはたらきがあります。
一方、アポクリン汗腺は腋の下や乳頭部、臍囲、外陰部などに分布しており、元来はフェロモンを分泌する役目を担っていたと考えられています。
汗疹はこれら2種類の汗腺のうち、エクリン汗腺から伸びる汗管が閉塞することによって引き起こされます。汗の流出が障害された結果、汗の成分が汗管周囲の組織に染み出して皮疹が生じるのです。
汗管が閉塞する原因としては、高温多湿の環境下で運動をしたり、高熱が出たときなど一気に大量の汗が生成されたりすることが挙げられます。
また、高温多湿の環境下でなくてもギプスや湿布、包帯など通気性が悪く、体の一部が汗をかきやすい状態となることで、その部位に限局した汗疹がみられることも少なくありません。
症状
汗疹は閉塞する汗管の部位によって大きく3つの種類に分けられます。それぞれの特徴は次のとおりです。
水晶様汗疹
角層や角質直下の皮膚表層の汗管が詰まるタイプです。直径数mm程度の小さな水疱を形成しますが、かゆみや赤みを伴わず数日で自然に治ります。
紅色汗疹
皮膚深層の汗管が詰まるタイプの汗疹です。閉塞した汗管周辺には炎症が生じ、汗の成分が周辺組織に染み出すことで直径2mm大程度の丘疹が見られます。
皮下の炎症反応によって赤みと強いかゆみを伴うのが特徴です。汗疹が慢性化すると湿疹に移行したり、かゆみのために皮膚をかくと細菌感染を起こして膿疱を形成したりすることもあります。
深在性汗疹
紅色汗疹を繰り返すことによって皮膚と真皮の境界部付近の汗管が破壊されるために生じるタイプの汗疹です。
真皮内に汗が貯留するため、炎症による発赤は皮膚表面から見えることはありませんが、白い扁平な丘疹が散在します。発汗時に多く現れ、かゆみはありませんが、体温調節機能が低下するため、熱中症を発症するリスクが上昇します。
検査・診断
汗疹は、皮膚病変の見た目や症状、環境因子などを総合的に評価して診断されます。水疱や丘疹が見られるため、湿疹との鑑別(見分けること)が必要となる場合もありますが、汗疹は汗管が閉塞する場所によって特定の皮疹の形状を一様に認めるため、湿疹のように多様な形状の皮疹が混在しないのが特徴です。
また、細菌感染によって広範囲に膿疱を生じる場合には、排膿した膿汁の培養検査を行い、原因菌を特定してそれに適した抗菌薬投与が行われることがあります。
治療
治療方法は、症状の度合いによっても異なりますが、汗をかきやすい環境を避け、こまめに汗を拭くなど皮膚の清潔を保つことで自然とよくなることがほとんどです。
予防
あせもを予防するためには、こまめに汗を拭きとることはもちろん、室内では温度調節をして高温多湿を避けたり、汗をかいたら着替えたりすることなども大切です。
医師の方へ
あせもの詳細や論文等の医師向け情報を、Medical Note Expertにて調べることができます。
「あせも」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「あせも」に関連する記事
- あせもの原因と治し方とは?〜自分でできる対策と皮膚科での治療、受診の目安について〜金沢医科大学皮膚科 准教授西部 明子 先生
- 医師が考えるあせも予防に大切な3つの注意点~すでにあせもが生じている場合の対策とは?~稲田堤ひふ科クリニック関東 裕美 先生
- 子どもに対するあせも対策とは〜市販薬を使用してもよいの?日常生活の注意点は?〜山王病院 皮膚科部長佐藤 佐由里 先生
- あせもに使われる薬の種類と使い方とは?~正しい方法で使用しないと悪化する恐れも~山梨大学医学部皮膚科学講座 教授川村 龍吉 先生
- あせも(汗疹)の予防方法と治療方法〜皮膚の清潔・乾燥を保つことが大切〜蒲郡市民病院 皮膚科 部長久保 良二 先生
関連の医療相談が10件あります
生理の症状について
生理予定日前から倦怠感と左下腹部痛があり、2日遅れて生理がきたのですが、倦怠感、めまい、浮動感、動悸、息切れなどがあり、少し動くと全身汗だらけになります。腹痛は少しです。 まだ出血は少量なのですがすでに貧血なのでしょうか? 一年以内の検査で貧血はなく、フェリチンが少し低いと言われました。 それとも自律神経の(低血圧?)問題でしょうか? 仕事で集中する作業や、行き帰りの運転があるのですが不安です…。
母の突然のひどい物忘れ
母(58歳)が,ここ数年間,特定の状況でひどい物忘れを起こすことがあります。問題ないものなのか,それとも病気の可能性があるかを知りたいです。 物忘れは,多くの人と会話したりするなどとても忙しいときに発生するようです。 物忘れが始まると,今日や前日の日付や,大きな出来事(仕事に行ったことなど)を忘れてしまい,明日の予定も分からなくなります。職場の同僚の顔や名前を思い出せなくなったこともありました。ただし私の顔は覚えています。 私に何度も確認を取りますが,確認した内容を忘れてまた確認するのを繰り返します。本人は記憶が飛んでいる自覚があるようで,認知症を発症したのではないかと焦りだし,泣きます。宥めても聞き入れず,また確認を始めます。 この状況が数時間続き,やがて記憶が戻ります。 (これを書いている現在も物忘れを起こしています。現在6時間続いています) これは病気の可能性があるでしょうか?それとも,ストレスが引き起こした単なる一過性の物忘れでしょうか?
産後の生理
産後の生理が始まりました。 おっぱいが出なくて、ミルクということもあり、 早くて…2ヶ月で再開しました。 そこで質問なのですが💦 始まったと思っていて、一回終わったのに、また一週間後の今、ちょろっと出血がありました。 まだ不安定なのでしょうか?? 教えてください。゚(゚´ω`゚)゚。
子供の熱が下がらない
日曜日から37.5~38.0度くらいの子供の熱が下がらずに心配です。 こんなにも熱が下がらないのが初めてで、どう過ごしたらいいか不安です。 病院ではRSとコロナの検査をしましたが、陰性でした。 今年の4月から保育園に通い、毎週末に風邪を引き、熱が出ます。 イヤイヤ期でもあり、服を着るのも、水分取るのも嫌がります。 やれることとしたら、寒くないようにする、体力を使わせないようにする、水分をどうにかとらせるくらいなんですかね。 多少汗かいても暖かい格好させるべきなのかも迷います。どのくらいかが適温なのかもいつも分かりません。 あと、こんなにも毎週熱を出すのはよくあることなのでしょうか?
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。